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[ニュース分析]政労使合意に揺れる韓国労働界、IMF危機「整理解雇」再現を憂慮

登録:2015-09-14 23:52 修正:2015-09-15 06:12
 労働者の90%が無労組・非正社員
 労組がなければいつクビにされてもおかしくない
14日午後、ソウル汝矣島の韓国労総大会議室で開かれた韓国労総中央執行委員会で、組合員が最近の政労使大妥協に対する反対の立場を明らかにする示威を行っている =キム・テヒョン記者//ハンギョレ新聞社

「一般解雇・就業規則緩和」合意の波紋
未組織労働者1800万人「雇用不安」
解雇要件“緩和”の表現はないと言っても
政府・会社側「業務不振者」を挙げ
施行原則も“合意”ではなく“協議”に
政府が一方的に推進しても阻む方法はなし

 結局、一般解雇要件と就業規則不利益変更要件を緩和する道が開かれた。政府は期間制労働者の使用期間延長などを内容とする非正規雇用対策もごり押しする態勢だ。労働者の90%に達する労働組合に組織されていない労働者1800万人の雇用安定に暴風雨は避けられなくなった。

 13日夜、政労使委員会代表者が暫定合意した文書には、「勤労契約締結および解約の基準と手続きを法と判例により明確にする」、「賃金ピーク制の導入をはじめとする賃金体系改編と関連して、団体協約および就業規則改定のための要件と手続きを明確にしこれを遵守する」という内容が記されている。 この間労働界が最も強力に反対してきた就業規則と一般解雇要件に関連した項目だ。

 もちろん合意文の草案は「明確にする」としているだけで「緩和」という表現は入っていない。 しかし、今まで政府と使用者側は一般解雇と関連して「低成果者」とか「業務不振者」を論じてきた。 手続きと要件が強化されるはずはない。 就業規則関連内容も、政府がすでに賃金ピーク制と職務成果中心の賃金体系に改編する過程で、過半数労組や労働者の同意がなくとも変わった就業規則の効力を認めるという内容を発表している。

 合意文はこれを意識したように「政府は一方的に施行することなく労使と十分な協議を経る」とした。 「合意」ではなく「協議」だ。 協議を繰り返しても意見がまとまらなければ政府が一方的に推進しても阻む方法がない。 この間「正社員過保護論」を提起した後、暴れ馬のように政労使議論をごり押ししてきた政府の態度を見れば、より一層憂慮される。 イ・ギクォン雇用労働部長官は14日午前、政府世宗(セジョン)庁舎で行った記者懇談会で、「政労使がこれ以上協議することがないというほど協議する」と述べた。

政府が提示した政労使大妥協の期限である10日午前、政府ソウル庁舎労使政委大会議室で4人の代表者会議が開かれた。パク・ビョンウォン韓国経営者総協会会長、キム・テファン労使政委員長、キム・ドンマン韓国労総委員長、イ・ギクォン雇用労働部長官が座っている //ハンギョレ新聞社

 就業規則と一般解雇要件の緩和が政策として具現されれば、結局雇用不安の暴風雨の前に立つのは無労組事業場の労働者と非正規雇用労働者だ。 労組がある事業場では、ほとんどが就業規則よりはるかに拘束力の強い団体協約を持っているため、就業規則が変わっても団体協約の保護を受けることができるためだ。 労組の抵抗で使用者が就業規則を好き勝手に変えることは難しい。 労組がない事業場で解雇されれば、会社と対等な位置で問題を提起する勢力がなく、解雇者自らが地方労働委員会に不当解雇救済申請を出し、会社側と苦しい法的闘争を行う以外に道はない。

 韓国の労組組織率は経済協力開発機構(OECD)加盟国中で最も低い10.3%だ。 10人に9人は労組の傘の外にいる。非正規雇用労働者の組織率は2%に過ぎない。 要するに会社と対等に交渉できる労働者はごく少数だ。

 就業規則・一般解雇要件の緩和に非正規雇用総合対策まで考慮すれば、今回の合意は「労働柔軟性強化対策」とも呼べる。 政府が強調する労働柔軟性は、労働者から見れば不安定労働の拡大だ。 期間制・派遣労働者の使用期間を2年から4年に延長することと関連して、合意文は「雇用安定および規制合理化」という副題をつけて「当事者を参加させ共同実態調査、専門家意見取りまとめなどを集中的に行い、代案を用意して合意事項は定期国会法案議決時に反映することにする」とした。イ・ギクォン長官は14日の懇談会の時、「非正規雇用は柔軟化次元では認めるものの、(企業の)人件費節約のための乱用は防がなければならない」と述べた。

 労働界では国際通貨基金(IMF)事態の時、企業が集団的に労働者を解雇できる整理解雇制と派遣労働を与えられ、雇用の安定に大きな傷跡を残した「1998年の悪夢」が、17年ぶりに個別労働者の雇用安定性を揺さぶる方式で再現されるのではないかと憂慮される。イ・ビョンフン中央大教授は「就業規則と一般解雇の緩和は、合意文に入れること自体が産業現場と労働市場に投じるメッセージが大きい。無労組事業場では「社会的合意になった」として押しつけることが憂慮される」として「労働市場全般を変えた1998年の再燃が予想される」と語った。

 労働市場構造改編の議論は今後国会と政労使委、街頭で多様な形態で展開される展望だ。 勤労基準法など立法事項を巡り、国会で野党と与党が正面対立し、当初から議論から抜け出た民主労総は場外闘争に乗り出すと予想される。 政労使委は関連日程を推進する計画だが、韓国労総の声が委員会で力を得ることは難しそうだ。

チョン・チョンフィ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/708821.html 韓国語原文入力:2015-09-14 19:45
訳J.S(2368字)

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