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“三位一体”の在韓米軍司令官と奇妙な韓米同盟(上)

登録:2015-09-05 11:07 修正:2015-09-05 21:12
4月、カーティス・スカポロティ韓米連合司令官(軍服を着た人物)が韓国訪問で烏山空軍基地に到着したアシュトン・カーター米国防長官(左)と話しながら歩いている。韓米連合司令官は国連司令部と在韓米軍の司令官を兼ねる=共同取材団//ハンギョレ新聞社

■ 地雷爆発事件と指揮体系

 筆者が大学で危機管理論を講義する際、我が国(韓国)の危機管理と戦争遂行体制の複雑な実態を説明すると、ほとんどの学生が驚く。韓国の安保運営体制の複雑さに驚き、そんな非効率な体制を全く改善せずに最高のシステムであるかのように崇拝する風潮に二度驚く。韓国政府が独自にできることと、米国と協力しなければならないことの境界線が曖昧になり、韓国安保の責任者が誰なのか分からなくなってしまう。

 複雑なのは私たちだけではない。韓国に駐留する米軍の内部に入り込むと、韓米連合司令官が直接指揮する部隊と、米軍太平洋司令部の指揮を受けるが連合司令官に配属される米第7空軍のような部隊にさらに分けられる。さらに韓米連合司令官が国連軍司令官の資格で日本にある国連司令部の後方8基地を統制するという説明まで付け加えると、軍事指揮ラインでの国境の概念まで曖昧になる。職業軍人である学生たちはさらに驚く。自身が身を置く我が国の安保体制を完ぺきだと考え、現在の韓米同盟さえ維持されれば国家安保は自ずとなされると信じてきた。ところが実際の韓国の戦争遂行体制には、いったいいくつの政府が関わっているというのか。このように複雑でコミュニケーションが容易ではない体制で、万が一にも失敗すれば、それがどれほど致命的にことなのか思い知り身震いする。これらのことをうまく説明できると自信を持っていた筆者も、8月危機での韓米間の危機管理形態を理解するため頭を抱えてしまった。いくつかの事例を見ていこう。

■ 三つの帽子をかぶるスカポロティ

 韓国にいるカーティス・スカポロティ米陸軍大将は昨年から今年にかけ、米国の高高度防衛ミサイル(THAAD)を韓国に配備したいと繰り返し述べた。発言は韓国政府と何の事前協議もなしに独断にされたものだった。発言で波乱が生じると、その後始末に韓国政府が苦悩することになる。これは、韓国政府の統制を受けない米軍の将軍、すなわち在韓米軍司令官の資格でされたものだった。そして今年8月10日、スカポロティ大将は北朝鮮に地雷事件を扱うための将軍級会談を提案した。彼は大統領府と国防部に、地雷事件に対する国連軍司令部の調査が終る前までは、マスコミに韓国政府の立場が発表されないよう要請した。このため地雷事件が起きた8月4日から10日まで韓国の危機管理が麻痺した。これは国連軍司令官の資格でしたものだった。8月25日、板門店(パンムンジョム)で合意文が締結された後、北朝鮮を先制攻撃する内容がある韓米連合軍司令部「作戦計画5015」が韓国国防部によりマスコミにリークされた。するとスカポロティ大将は誰がリークしたのか「調査して欲しい」と国防部に要請した。これは連合作戦計画樹立の責任者である連合司令官の資格でされたものだった。

 また、彼は平沢(ピョンテク)の米軍基地建設と烏山(オサン)、大邱(テグ)などに散在する米軍の駐留条件を保障するため韓国政府と防衛費分担金交渉もする。これは在韓米軍将校の資格でするものだ。与えられた資格があまりに多く、この米陸軍大将は、ある時は外交官になり、ある時は軍人になり、ある時は事業家になる帽子を使い分けている。そして、ある時は私たち(韓国)の大統領と国防部長官の指揮を受ける部下としての連合司令官の位置に限定されるが、ある時は私たちの大統領と国防長官に国際法と国連司令部規範遵守を要求する超国家的存在である国連司令官に急変する。韓国軍が非武装地帯で北朝鮮に断固たる措置を取ろうするものなら、国連司令部は交戦規則を違反したか我が軍を調査する上司となる。

 ところが、その国連司令部交戦規則は、1994年に平時作戦統制権を私たちが米国から返還されているので、私たちの合同参謀本部の権限と責任が明記されていなければならない。にもかかわらずそれ以前に定めた交戦規則を適用しているので、合同参謀議長が平時防衛でどこまで責任があるのかも明確でない。このため2010年11月の延坪島(ヨンピョンド)砲撃戦当時、ハン・ミング合同参謀議長が当時のウォルター・シャープ国連軍司令官に「戦闘機で北朝鮮を懲らしめてもかまわないか」と尋ねると、ウォルター・シャープは即座に「それをなぜ私に尋ねるのか」「韓国政府が自衛権行使次元で自らの判断で決めるべきだ」と語った後 翌日には、これをあえて文書で作成して国防部長官宛てに送った。国連司令官としてのウォルターシャープは、韓国政府の問い合わせに責任ある返答をする義務がある。国連司令部交戦規則では、航空作戦の場合、米第7空軍は司令官が統制するようになっているためだ。太平洋司令部配下の一介野戦司令官に過ぎない在韓米軍司令官の立場からすれば、このような国連司令官としての責任を無視し、戦争が起きるかも知れない戦闘機出動といった重大な決定を、本国の大統領、国防長官、合同参謀議長との協議なしに勝手に決めることではさらにない。ここまでくると、いったい私たちの領土にいる米陸軍大将は何をする位置にあるのか一層分かりにくくなる。このため2010年当時、私たちの合同参謀は深刻な混乱を経ることになった。合同参謀の将軍までが航空機出撃を「米軍に問い合わせなくてはならない」「違う」に二分され、要領を得なかった。論争が長引くと国防部報道官は「航空機出撃が国連司令部交戦規則によるべきなのか、自衛権次元で我が政府が決めるものなのか国際法学者に研究を与えることにした」と発表した。

 さらにあきれるのは、韓米連合司令官の有事での作戦統制権限が国連司令部の委任によって行使される点だ。韓国の国連司令部は1970年代に共産圏と西側がそれぞれ解体決議案を総会に提出し、両案とも通過した。国連司令部が解体される展望が有力になると、韓米が1978年に現在の連合司令部を創設した。これにより事実上ほぼ有名無実化した象徴的位置に過ぎない国連司令部が、その後もなくならずに残り、突然、南北間の重要な瞬間に再び登場して朝鮮半島危機を管理する。

 今回、スカポロティ大将は国連司令官の資格で北朝鮮に将軍級対話を提案したが、北朝鮮の電信通知文受付拒否でメンツをつぶした。それも一度ではない。最近のマスコミで明らかにされた中には、南北間で砲撃戦が起きた8月20日にも国連司令部の電信通知文が北朝鮮に送られたが、またもや拒絶されていた。北朝鮮はこれまで共存できないとしてきた朴槿恵(パク・クネ)政権を対話相手に選んで板門店で25日に合意文を作り、国連司令部は対話の主導権を韓国政府に完全に渡してしまった。今まで北朝鮮は「停戦協定白紙化」を宣言して米国と平和協定を談判するというのが主要な目標だったが、であるなら対話相手は韓国政府でなく停戦協定の主体である国連司令部でなければならなかった。ところが結果が逆になると、米国大使館と在韓米軍は連日対策会議に追われたと伝わる。この北朝鮮の予想できなかった動きは、今回の8月戦争危機にあって最大のミステリーだ。

 国連司令官としてメンツをつぶしたスカポロティ大将は、韓国国防部が連日軍事機密をマスコミに公開し、合意文以後の政局を主導するのにブレーキをかけ始めた。今回は国連司令官でない連合司令官の資格で行動した。韓国で対北朝鮮情報監視態勢ウォチコンと防衛準備態勢デフコンを宣言する権限は連合司令官にある。ウォチコンを二段階も格上げして米国の情報資産を増強、投じたことは、連合司令官の措置だった。これを通じて北朝鮮潜水艦が基地から消えたのを捕らえて追跡し、北朝鮮ミサイル部隊が前方に移動するのを監視できることになる。このようにウォチコンを格上げするには高価な情報資産運営と多額の費用がかかる。そうして収集された情報を韓国国防部がマスコミに無分別にリークしたかと思えば、連合司令部作戦計画まで国防部がマスコミに流したことに対し、危機管理責任者としての連合司令官は、事態を座視できないと考えた。これが連合司令官が国防部に「作戦計画5015が漏洩した経緯を調査して欲しい」と求めた背景だ。(続く)

キム・ジョンデ「ディフェンス21プラス」編集長

韓国語原文入力:2015-09-04 18:58

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