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KTX元乗務員10年の闘い…「残ったのは借金だけだが諦めない」

登録:2015-07-27 23:10 修正:2015-07-28 09:04
ソウル駅前に再び立ったムン・ウンヒョ氏

 2010年母親に抱かれて1審勝訴の喜びをともにした8カ月の赤ん坊は、6歳の子供になって母親の脇に立った。 22日、ソウル龍山区のソウル駅前で開かれた「KTX乗務員直接雇用及び市民安全の外注化中断要求3000人宣言」の記者会見に母親について出てきた子供は、10人余のKTX元乗務員の“おばちゃん”たちと一緒に小さなプラカードを手に持った。

「破棄差し戻し裁判の良心的判決を要求する」

元KTX乗務員ムン・ウンヒョ氏(右端)が22日午前、ソウル駅前で開かれた「KTX乗務員直接雇用及び市民安全の外注化中断要求3000人宣言」の記者会見中に、3歳の娘に飲み物を与えている =イ・ジョンヨン先任記者//ハンギョレ新聞社

 子供はしきりに「暑い」とむずかった。 夢に描いたKTX乗務員になって全国の鉄路を駆けたけれども、「直接雇用正社員化」を掲げて闘わなければならなかったソウル駅前に再び立つことになった母親の心を、知ってか知らずでか…。 元KTX乗務員のムン・ウンヒョ氏(34)は「10年を越える闘いを虚しく終わらせるわけにはいかない」と思い、京畿道南楊州(ナムヤンジュ)市から子供を連れてソウル駅前に駆け付けてきた。 24日に破棄差し戻し審の初公判を控えた同僚32人の心もムン氏と違わないはず。

 大法院(最高裁)が2月26日、「韓国鉄道公社(コレイル)の正社員」であることを認めた勤労者地位確認訴訟の原審を破棄して事件をソウル高裁に差し戻した後、ムン氏と仲間たちの長い“悪夢”がまた始まった。 ムン氏が生涯最初で最後の職場に復帰する道は、それだけ遠のいた。 ムン氏は2006年5月15日の解雇後、二人の子供を生んだ上に、履歴書に現われる「ストライキ3年」の空白を説明する方法が見つからず、主婦として過ごしてきた。 彼女は1審勝訴とともに賃金支払い仮処分申請が受け入れられて2008年11月から2012年11月まで4年間毎月受取ってきた給料8640万ウォンも返さなければならない。 KTXの元乗務員34人がこれまで受取ったけれども返さなければならなくなった金は全部で29億3760万ウォンだ。

1審勝訴の喜びをともにした赤ん坊
もう6歳になり母親やおばちゃんたちと並んで
24日から破棄差し戻し審の闘い
4年分の給与8千万ウォンも返さねばならない

「終わるまでは終わったんじゃないことを…
1%の希望でも残っているならば」

KTX乗務員の勤労者地位確認訴訟日誌 //ハンギョレ新聞社

「最高裁の判決後、人々の間でお金、離婚、破産のような言葉が行き交いました」

 「会社側は最初、KTXがなくならない限り、お婆さんになるまで勤めることができると太鼓判を押しました。 “お婆さん乗務員”の夢をあきらめないで闘いながら待ったけれども、復職の夢ははっきりしないまま、その大金はどうやって返したらいいのか…」 。ムン氏の口からため息のように言葉が漏れた。

 終りの見えない絶望のトンネルを脱しようと生を放棄した仲間がいる。 大法院の破棄差し戻し判決後の3月16日、あるKTX元乗務員が3歳の娘を残して命を絶った。 34人で始めた勤労者地位確認訴訟の当事者は33人に減った。

 ムン氏は「終わるまでは終わったのではない」という言葉を信じたいと話した。 まだ破棄差し戻し審と大法院判決が残っているからだ。 「みんな破棄差し戻し審で覆される可能性は低いと言い、私もそれを知らないわけじゃありません。でも、1%の希望でも残っているなら、座りこんでじっといるわけにはいかないじゃないですか」

 大法院の2月26日の判決が、それまで育児と再就職に追われていたKTXの元乗務員たちを一堂に集まらせた。彼女達は3月から一人デモ、宣伝戦、ロウソク集会を続けている。ムン氏も夫に二人の子供を預けてソウル駅前の一人デモを続けて来た。

 「非正規雇用撤廃闘争」、「直接雇用を闘い取ろう」。 ムン氏は25歳だった2006年3月1日からこんなスローガンを叫んで非正規雇用解雇労働者として街頭を駆け巡った。 20代の女性労働者たちがハンスト、占拠、「高空籠城」などあらゆる方法で叫んでも鉄道公社が微動だにしないので、最後に訪ねた所が裁判所だった。 2008年11月に最初の訴訟を提起した後、1審と2審で勝訴したが、大法院は彼女たちが「鉄道公社の正社員ではない」として下級審に差し戻した。 24日の破棄差し戻し審初公判を控えたムン氏が噛みしめるように言った。 「鉄道公社が正社員転換を約束し、鉄道公社の指示を受けて正社員である列車チーム長とともに顧客安全業務を担当したので、鉄道公社の職員だと信じていました。 私たちが切実な思いで闘った理由を、労働者の立場から一度考えてみてください」

キム・ミンギョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/701375.html 韓国語原文入力:2015-07-23 10:32
訳A.K(2221字)

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