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ソウルを襲ったMERSの恐怖...患者が立ち寄った場所に“直撃弾”

登録:2015-06-05 23:58 修正:2015-06-06 06:34
 防疫網に穴「第2の平沢になる」と動揺広がる
ソウル江南区開浦洞のあるアパートのバスケットボール場で、5日午後、休校と塾の休講で時間があまった小学生たちが、マスクを着用したままバスケットボールをしている=イ・ジョンア記者//ハンギョレ新聞社

 中東呼吸器症候群(MERS)に感染した医師が、大勢の人が参加した室内イベントに出席して、ソウル江南(カンナム)一帯を2日間も歩き回った事実が明らかになったことで、医師の“動線”を中心にMERS不安のパニックが急速に広がっている。特に、この医師にMERSを感染させたと思われる14番目の確定患者が、京畿・平沢(ピョンテク)からソウル・瑞草(ソチョ)区良才(ヤンジェ)洞の南部ターミナルまで市外バスに乗って移動した事実がわかり、家の外には出歩かない“自発的な自己隔離現象”まで現れている。

 5日、MERS感染医師が居住している場所として知られた江南区細谷(セゴク)洞アパート団地で会った住民パク氏(45)は、「マスクと手の洗浄剤を買いに薬局に行くところだ。MERSは他人事だと思っていたが、同じ団地の人が感染したという話を聞いて恐ろしくなった」とし「マスコミはなぜ病院の名前を教えてくれないのか」と話した。マスクをしてアパートを出た主婦は「今日午前インターネットを見て分かった。保育園に行った息子を今迎えにいくところだが、しばらく保育園は休ませるつもりだ。毎日感染者が増えているのに、政府は一体何をしているのか」と不安げに話した。別の主婦は「おむつがなくなって仕方なく出てきた。スーパーに配達注文が殺到して配達も難しいと言われた。子供を育てているのに、家の外に出るのは、なかなか気が進まない」と話した。

 MERS感染医師が先月30日、夕食をしたソウル松坡(ソンパ)区文井(ムン ジョン)洞の複合ショッピングモールのガーデン・ファイブもMERS不安で騒めいていた。医師が食事をしたレストランは、「店舗の衛生管理のために当日休業をする」という内容の伝言板を掲げたまま完全に営業を中止していた。このレストランがあるOデパートの関係者は、「内部の消毒作業を行うために今日から休業すると聞いている。状況を見て再開場するかどうかを決める」と説明した。

 街・地下鉄・バス停でもマスク姿増え
 恐怖に震える江南の母親たち
 「当分保育園を休ませるつもり」

 ガーデン・ファイブ入居企業ため息
 「政府の遅れた対応のせいで私たちが被害」
 再開発総会開かれた場所、建物全体消毒

 一部住民「症状なくても自己隔離」
 ソウル市・江南区の週末イベント全部キャンセル

 映画を見にガーデン・ファイブに来たという市民は「何も知らずに来たが、インターネットを見てやっと分かった。今彼女に他の場所に来るように言おうとしていたところ」だと急いで席を立った。家族と一緒にガーデン・ファイブを訪れたチョン氏(53)は、「久しぶりに家族同士で昼食を食べに来たのに、台無しになった。宅配フードも不安で、早く買い物を終えて帰宅するつもりだ」と話した。

 ガーデン・ファイブに入居した企業は、ただでさえ商売にならないのに禍が重なったと嘆いた。ある飲食店の店主は、「賃貸料は高いのにお客さんが来てくれなくて心配したが、本当に大変だ。その医師も自分の体に異常があったら、家にじっとしているべきだったのではないか」と不満をもらした。コーヒーショップ社長のイ氏は、「政府の未熟な対応で、結局被害を受けるのは私たちのような庶民だ。休日の明日はお客さんがもっと減るのではないか」と心配した。入居企業の従業員であるユン氏(32)は、「元々ガーデン・ファイブはお客さんがいなくて閑古鳥が鳴くほどだったが、MERSのせいでもう閑古鳥も来ないだろう」と残念がった。

 MERS感染医師がアパートの再開発組合総会に出席するため訪れた良才洞エルタワーは5日朝から建物全体を消毒したが、押し寄せる予約キャンセルの電話に困り果てていた。エルタワー周辺のバス停でマスクを着用したままバスを待っていたある市民は「今からでも政府が情報を公開し、市民が自ら対処するようにしなければならない」と訴えた。

 この医師が病院に隔離される前の先月31日、自宅近くのファーストフード店に訪れたという事実が知られ、細谷洞内のファーストフード店など外食産業も“流れ弾”の被害を受けた。あるファーストフード店のキム室長は「午前から本社から電話がかかって来て大騒ぎになった。その医師が、ここに頻繁に来るのかどうか、私たちにわかるはずがない」と、対応に悩んでいる様子だった。他のファーストフード店の店員も、「午前に本社から連絡がきたので、私たちの店ではないと言った。まだ商圏が完全に出来上がっていないため、売り上げもよくないのに、心配だ」と話す。

 14番目のMERS確定患者とMERS感染医師の動線が重なる江南区逸院(イルウォン)洞のサムスン・ソウル病院周辺の住民たちの中には、何の症状もないのに“自己隔離”に入る人もいた。逸院洞住民のイ氏(59)は、「何の症状もないが、不安で怖かったので、自ら自己隔離することにした。周辺の知人の中にも自らを『半監禁』した場合が多い。私たちぐらいの年齢の人がMERSに一番弱いというではないか」と語る。

 一部の市民は不安な気持ちで夏の休暇を早めたり、予定された日程をキャンセルした。大企業に通うファン氏(41)は、「不安で元々8月初めに予定していた休暇を来週に繰り上げた。MERSから安全だとされる地域で家族と一緒に過ごす計画だ」とした。会社員チェ氏(37)は、「不安だったのか、小学校1年生の娘が『行くのをやめよう』と言っているので、週末に予定された済州島旅行をキャンセルした。家の中に籠るつもりだ」と話した。

 MERS拡散に伴い、ソウル市は7日、世宗路と江辺北路一帯で開く予定だった「ハイソウル自転車大行進」イベントと、同日光化門広場で開くことにした「希望の分かち合い市場」をキャンセルした。江南区またも館内で開催される予定だったすべてのイベントをキャンセルした。

オ・スンフン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-06-05 19:51

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/694533.html  訳H.J

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