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在韓外国人の訴訟を支援する“ネパール人天使”

登録:2015-05-03 21:50 修正:2015-05-04 06:39
 6カ国語堪能なオモン氏、ソウル行政裁判所勤務
 ビザ書類準備・訴訟など外国人との相談業務
 「自分も以前に同じ困難を体験したから」
チトゥロカ・オモン氏 =ソウル行政裁判所提供//ハンギョレ新聞社

 1日午後、ソウル・良才(ヤンジェ)洞のソウル行政裁判所総合請願室に入ったある外国人が周囲をきょろきょろ見回した。ネパール国籍のチトゥロカ・オモン氏(50)が彼に近付き声を掛けた。助けを要請しようとしていたバングラデシュ人は「ビザを延長したいがどんな書類を準備すればいいのか?」と尋ねた。 オモン氏は必要な書類を英語で説明した。

 外国人の訴訟業務を援助するオモン氏は、ソウル行政裁判所に採用された職員だ。 ネパールで生まれた彼は、韓国語、パキスタン語、インド語、日本語、英語の6カ国語に精通している。 ソウルのある大型病院で外国人患者のための通訳アルバイトをしていた彼は、面接の提案を受けて昨年5月にこちらに職場を移した。

 彼は1986年、ソウル・アジア競技大会の時に韓国を初めて訪れたという。ネパールの卓球代表選手の資格でだった。 そんな彼が韓国と再び縁を結ぶことになったのは、1991年に日本留学に行き韓国女性に会い結婚したためだ。 1996年から20年韓国に暮らしている彼は「当時、語学院に通ったが出入国管理事務所にビザ延長の書類を準備して行くと、いつも何度も差し戻された。 ところが同じ書類を持って行ったアメリカや日本の友人は何も問題がなかった。 妻の助けがなければおそらく無理だったろう」と話した。 今は援助する側になった外国人の境遇が他人事ではなかったということだ。

 先月20日から10日間にソウル行政裁判所の外国人専用窓口を訪れた人は142人に達する。 一日平均14人の外国人と相談して援助したわけだ。 国籍別にはパキスタン人が66人で最も多く、カメルーン(19人),ナイジェリア(17人)の順だった。 これらの外国人のうち90%以上は難民訴訟と関連した問い合わせだという。 ソウル行政裁判所に受け付けられる難民事件は、2013年の171件から2014年には409件に急増した。 今年は4月29日までに既に256件が受け付けられて、このまま行けば年末には800件ほどに達すると見られる。

 オモン氏にとって最も残念なことは、言葉が通じないために訴訟をあきらめたり、裁判期日がわからずに法廷に出てこないケースだ。 彼は「最近ではコートジボワール人が来たが言葉が通じなかった。 その時は手ぶり身振りでも重要なことは必ず伝えようとする。 裁判期日に二度来なければ訴えの取下げになるから、事件番号だけは必ず覚えているようにという」と話した。

 そんな彼のことを忘れずにいて感謝の挨拶を伝えて来る人もいるという。 彼は「最も記憶に残る人は7~8カ月前に訪ねてきたパキスタン人だ。 料理が上手で、家族と遊びに来るように言われたが、その気持ちが本当にうれしかった。 1年の契約職として仕事をしているが、このことで気持ちが満たされたように感じた」と話した。

 この頃のオモン氏の最大の心配は故国の地震の便りだ。「三番目の兄の家にヒビが入ったが、他の家族は大丈夫だという。 遠くにいて何もして上げられない」。5男3女の末っ子である彼は、苦痛を味わっている家族と隣人たちが心配で夜もまともに眠れないと話した。

ソ・ヨンジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/689588.html 韓国語原文入力:2015-05-03 19:42
訳J.S(1542字)

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