本文に移動

「リッパート大使襲撃」キム・ギジョン氏の保安法違反捜査、「北賛美・同調」に主力

登録:2015-03-08 23:28 修正:2015-03-09 07:47
マーク・リッパート駐韓米国大使を凶器で攻撃して傷を負わせたキム・ギジョン氏が6日午後、ソウル瑞草洞中央地裁に拘束令状実質審査を受けるために入っている。シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 
 押収物利敵表現物であることが判明しても
 研究目的などで所持した場合は処罰難しく
 過去「金正日の焼香所」推進の経緯
 7回訪朝など行跡も調べる見込み

 マーク·リッパート駐韓米国大使を凶器で襲撃したキム・ギジョン氏(55)の犯行動機と背後を捜査している警察が、国家保安法違反の疑いを立証することに注力している。朴槿恵(パク・クネ)大統領と与党が背後を明らかにするように迫っている状況で、一旦保安法違反の疑いを足がかりにしようとするものと思われる。

 警察は6日、確保したキム氏関連押収物品219点のうち「利敵性が疑われる」書籍など30件について8日、専門家鑑定を依頼したと明らかにした。依頼対象には金正日(キム・ジョンイル)国防委員長が書いた『映画芸術論』など北朝鮮冊子、利敵団体の判決を受けた祖国統一汎民族連合(汎民連)南側本部が発行した『民族の進路』、主体思想関連の記述がある『政治思想講座』が含まれている。警察は北朝鮮関連の修・博士級専門家で構成された大学の研究機関等に鑑定を依頼したと説明した。

 また、警察は、キム氏のコンピュータ記憶装置や携帯電話の消去された情報を復元して内容を調べている。警察は、「押収文書の鑑定結果に基づいて保安法違反の疑いを追加し、キム氏を15日頃、検察に送検する予定」だと明らかにした。北朝鮮の書籍や主体思想に関連冊子などが出てきただけに、警察は保安法の利敵表現物所持や賛美·鼓舞の疑いの適用を積極的に検討している。

 利敵団体(汎民連)が発行した文書であるとともに、「大韓民国の存立・安全や体制を脅かす積極的で攻撃的な内容」があれば、利敵表現物として認められる。定期刊行物である『民族の進路』の場合、金正日委員長が死亡した直後発行した号が裁判所から利敵表現物に認められた。

 警察はキム氏に対し、利敵表現物の単純所持を越えて変乱扇動または賞賛・鼓舞・同調の「目的」を明らかにすることに捜査力を集中している。キム氏が研究目的で「単純所持」をしたとなると、処罰が困難になる可能性があるからだ。 「平和と統一を開く人々」のオ・ヒェラン前事務局長の場合、利敵表現物所持で起訴されたが、1、2審の裁判では無罪が宣告された。オ氏の主張が北朝鮮の主張とは多少異なっており、オ氏が北朝鮮に対して批判的な立場を表明したことなどを挙げ、研究目的を認めたのだ。

 1996年に「韓国社会統一文化運動の課題」という修士論文を書いたキム氏は、北朝鮮関連書籍は統一研究のために所持したと主張している。警察は、キム氏の北朝鮮関連性を証明しようと、7回訪朝時の行跡と2011年に金正日委員長の焼香所を設置しようとした経緯も集中的に調べている。

 過去の活動よりも、リッパート大使を攻撃した行為自体が利敵意図と解釈される可能性もあるとの見方もある。「民主社会のための弁護士会」のイ・グァンチョル弁護士は「保安法が曖昧で恣意的に解釈される場合が多いことから、米大使襲撃行為自体に利敵目的を認める可能性も高い」とした。

 警察は、キム氏の通信履歴、金融口座入出金内訳分析を通じて、共犯者または背後勢力の存在有無も捜査している。保守言論などは、キム氏が他の団体と連携して韓 米合同軍事訓練に反対記者会を開いた点に焦点を当てている。しかし、キム氏を知っている人は、彼が非常に突発的な性格で精神的にも問題があったと伝えており、「組織背後説」に首を傾げる。キム氏も単独犯行を主張しており、「(犯行)当日の朝に果物ナイフを持って行かなければならないと思った」と述べている。何よりも犯行のあり方そのものが「背後」の存在を疑うことを難しくしているというのだ。

イ・ギョンミ、キム・ギュ·ナム記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2015.03.08 19:42

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/681329.html  訳H.J

関連記事