いつどこで起きるかしれない事件や事故ばかり追いかけているため、警察署に行きびたっているハンギョレ社会部24時チームのパク・キヨンです。久しぶりのコラムでのご挨拶になります。
今回は任期3年目を迎えた朴槿恵(パク・クネ)大統領を批判するビラの話をしてみたいと思います。近頃は一部で「国家冒涜罪」を復活すべきという主張までされているのですが、実に驚くべき話しです。
大統領批判ビラは最近になって執拗にばら撒かれています。昨年11月に大法院(最高裁)が双龍(サンヨン)自動車解雇労働者に対し「会社の整理解雇は適法」と判決した直後、ソウル汝矣島(ヨイド)などで「おまえらが殺したんだ」「整理解雇法を廃止しろ」といった文が書かれた紙が数千枚ばら撒かれました。憲法裁判所による統合進歩党解散決定直後の昨年12月26日には、ソウル麻浦(マポ)区の弘益大近くで「自分がやればロマンス、他人がすれば従北?」「本当の従北は誰だ?」と書かれたビラ1万枚が発見されています。
今年に入ると首都圏以外の地域にまで広がりました。1月13日には光州(クァンジュ)空港のトイレ備品保管所で朴大統領を批判するビラが発見され、先月12日には釜山市庁近くの道路に朴大統領を批判する絵と文があるビラ数百枚がばら撒かれました。先月16日には大邱(テグ)市寿城(スソン)区にあるセヌリ党の大邱市党と慶尚北道党事務室入り口に朴大統領を批判するビラがばら撒かれました。ビラ撒きは先月25~28日に“絶頂”を迎え、4日連続で大統領府近くとソウルの江南(カンナム)、明洞(ミョンドン)、新村(シンチョン)など流動人口が多い場所で奇襲的に行われました。
国家冒涜罪を復活すべきだなどとする一部の騒ぎにもかかわらず、ビラ撒き行為は軽犯罪(ゴミなど投機)に過ぎません。許可なく他人の建物の屋上に上がってばら撒いたので建造物侵入罪にもなります。売春ビラのように不法広告物を路上にばら撒いたことから屋外広告物法違反になるという意見もあります。
警察は異例にもビラ製作者の自宅を家宅捜索するなど全力を尽くしています。大統領の気分を害した罪を犯したためなのでしょうか。大邱市の水西(スソ)警察署は大統領批判ビラをばら撒いたビョン氏(46)に出頭要請書を送りました。このビラを製作したのは全羅北道群山(クンサン)に住むパク氏(41)でしたが、警察はパク氏にも大邱へ出頭要請書を送りつけました。釜山ではビラをばら撒いたユン氏(45)の自宅が家宅捜索されました。警察はユン氏宅からコンピュータのファイルや携帯電話などを押収した後、ユン氏に対し名誉毀損と軽犯罪処罰法違反、自動車管理法違反を適用しました。軽犯罪だけでは物足りず、名誉毀損とオートバイの不法改造まで問題視したのです。
名誉毀損は被害者が処罰を求めなければ罪を問わない反意志不罰罪で、通常、告訴後に捜査がされます。朴大統領や大統領府がユン氏を告訴していないので、警察の過剰対応に対する批判が出てくるだけのことはあります。また、大邱水西警察署が全羅北道群山のパク氏に適用しようとする出版物による名誉毀損容疑にも問題があります。大法院判例上、7ページ以下の印刷物は出版物と認められないからです。
私はむしろ警察のこうした大袈裟な振る舞いが、ビラ配布行為を誘発しないか心配になります。大邱で撒かれたビラの製作者のパク氏はマスコミとのインタビューで、「大統領批判ビラが初めてまかれた時、警察の強力(犯罪)課が捜査を進めるなど、警察が大騒ぎしている姿に腹が立ってビラを製作した」と話しています。民主社会のための弁護士会のパク・ジュミン弁護士も「オンラインを通した政府批判が名誉毀損や侮辱罪などで処罰される事例が増え、こうしたこと(ビラ散布)が増えているようだ」と指摘しています。自然な議論の道を防ごうとしたため起きているのかもしれません。
にもかかわらず保守紙系ケーブルテレビの総合編成チャネルは、大統領批判ビラの消息を伝えるなか、「容疑者を捕まえたところで建造物侵入罪くらいしか処罰できない状況だ。警察の悩みは深い」と報じました。あたかもこうした行為を処罰する新たな法がなければならないと言っているように聞こえます。国家冒涜罪を復活しようとでも言うのでしょうか。
「国家元首冒涜罪」と誤って知らされるほど甚だしい悪用が横行した国家冒涜罪は1988年に廃止されました。当時の法制処は刑法からこの条項を削除し、「国家発展のための健全な批判の自由を抑制する恐れがある」と明記しました。27年前になくなった法律が再び議論されている現実は残念なことです。「自由な宗教活動を禁止したり、発言の自由を阻害したり、出版の自由と平和な集会の権利を制限するいかなる法律も作ってはならない」と釘を刺した米国修正憲法1条が国家冒涜より切実な私たち韓国に必要な法律ではないでしょうか。
韓国語原文入力:2015.03.06 19:37