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[インタビュー]革新と保守は相手を悪魔化すべきでない

登録:2015-03-03 09:44 修正:2015-03-03 11:12
『正しい心』著者
ジョナサン・ハイト ニューヨーク大学スターン経営大学院教授
ジョナサン・ハイト教授がハンギョレ新聞社スタジオでセウォル号を象徴するリボンを背景に立った。彼は「セウォル号転覆事故で多くの子供たちが犠牲になったという話を聞いた時はとても辛かった」と話した。イ・ジョンヨン記者//ハンギョレ新聞社

 道徳が人間の判断や集団行動を決定
 スター思想家となった道徳心理学者
 韓国系夫人と家族と共に訪韓

「意見が異なる革新と保守が向き合うより重要なのは“条件”を創り出すことにある。相手を悪魔化せず互いの“正しい心”を理解すれば独善を減らせる」。道徳心理学者ジョナサン・ハイト ニューヨーク大学スターン経営大学院教授が韓国を訪問した。彼は2012年に米国で『正しい心』(原題:The Righteous Mind、写真、邦題は『社会はなぜ左と右にわかれるのか』)を出版し、米国の国際外交専門誌フォーリン・ポリシーが選ぶ「世界100大思想家」に選ばれた。 『正しい心』は人間の判断と集団的行動を決める要因が“道徳”であるところから出発する。この考えに基づき2008年のTED講演で「革新と保守の道徳的な根」を説明しスター思想家に浮かび上がり、同年の米大統領選挙当時、保守層の道徳心を考慮する方向で民主党大統領選挙の戦略修正を勧告しバラク・オバマ大統領当選に寄与した。

 今年研究年を迎え家族と共にアジア6カ国を巡回している彼と、先週ハンギョレ新聞社で会った。「妻は韓国系、私はユダヤ系として両家ともに子供たちに献身的で教育を重要視するという共通点がある。家庭環境も似ていて大きな困難はなかった」。そのためなのか今回が初めての訪韓だが、韓国文化と歴史についての理解は深かった。

 「韓国の場合、世代格差が途方もなく大きいが、これは最近富を蓄積したアジア各国で共通の現象だ。戦争で幼い時期に安保と生存の脅威を受けた父母の世代と、繁栄と安全を当然と感じる子供世代の間で葛藤が尖鋭になっている」

「セウォル号事故と処理過程で明らかになった
 韓国社会陣営間の意見対立は深刻
 若い世代から50代の見解の違いも大きい
 さらに広がれば災難呼び起こすことも」
 「革新と保守は相手の“神聖冒涜”慎まねば
 理解と相互補完を通じ一緒に暮らすべきだ」

 昨年4月、韓国語版(ウンジン知識ハウス刊)が出版される5日前 セウォル号事故が起きた。米国で事故の報せを聞き、事故原因と処理過程で韓国社会の見解が分かれたことも知っていると語る。ハイト教授は韓国社会の政治的両極化を扱ったイ・ネヨン高麗大政治外交学科教授の論文を示しながら、「韓国の場合は2004年の総選挙を基点に進歩(革新)と保守両陣営の意見対立が深刻になり、若い世代と50~59歳の見解の違いが深刻に広がった」と説明した。「もっと前にそうした事態になっていれば、今のように極端な雰囲気にはなっていなかったかも知れない」という。

ジョナサン・ハイト教授の著書『正しい心』//ハンギョレ新聞社

 問題はに二大政党の議会構図でますます広がる政治的見解の違いが災難を呼び起こすこともあるということだ。彼は『正しい心』を構想した理由について「なぜ(米国の)民主党が庶民層に腹立たしい思いをさせたのか教えたいと考え書いた」と説明した。現在は本人は左右のどちらにも属さないが、当時は左派に属していたし、ジョージ・ブッシュ元大統領の当選だけは「当時も今も酷く誤ったことだと考える」と語った。

 「ジョージ・ブッシュの勝利は世界の悲劇に広がった災難だった。ブッシュが嫌いなほどアール・ゴアやジョン・ケリーにも腹立たしい思いをした。なぜ民主党は簡単に勝つことができた選挙で敗北したのか呆れた。民主党候補は演説したり政見を明らかにする時、人々の心を鼓舞したりインスピレーションを呼び起こすことができなかった」

 彼は保守派が人間道徳性の五つの基盤となる配慮、公平性、忠誠心、権威、高貴さなどをすべて利用していたのに比べ、革新派は忠誠心、権威、高貴さに関連する相手の道徳的基盤を受け入れられずにいたと考えた。要するに「共和党員は道徳心理学をよく理解していたが、民主党員はそうでなかった」というのだ。

 「韓国も同じだ。韓国は南北対峙している状態にあるので、北朝鮮の南への侵略の可能性自体が保守主義者の心に簡単に作用する“引き金”となる。進歩主義者はなぜ平和に生きられないかと主張するが、保守主義者にはそれ自体が非常に腹が立つほどの主張になる」。ハイト教授は理想は正当化の根拠を探すために作られた道具と考える。直観が戦略的推論より先にあるというのだ。昨年カン・ジュンマン全北大教授が著書『礼儀をわきまえぬ進歩』で理性中毒症と進歩陣営の限界を説明したことについても共感を示した。

 「もちろん権威に対する挑戦は正しい。しかし、相手に対する“神聖冒涜”は慎むべきだ。韓国の保守主義者にとり年配者に対する敬愛と南北対峙状況は神聖な価値感だ。例えば北朝鮮に対し開放政策をしようという時は最大限用心深く相手に対する尊敬の念を表わし、安心させた後に話さなければならない」

 最近彼は資本主義に関する研究をしている。今回のアジアの道程も米国と異なる発展をした独特の資本主義の様相を調べるためだ。2017年には『資本主義に関する三つの話』を刊行する予定だという。資本主義自体を(必要)悪だと考える左派と、市場に介入する政府を悪だと考える右派の対立に関心を持つことになったと彼は話した。この研究によって搾取でない信頼に基づいた資本主義の新しい可能性を提示する予定だ。

 ハイト教授は最後に韓国読者らに向かって聖書の一節を聞かせてくれた。「なぜあなたは、兄弟の目の中のちりに目をつけるが、自分の目の中の梁には気がつかないのですか」

 「韓国は民主化に成功したロールモデルであり、民主主義を向上させる義務がある。 私たちは皆一緒に暮らしていくべきだ。互いを悪魔化するのを避け政見を異にする兄弟姉妹に対する理解と相互補完が必要だ」

イ・ユジン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015.03.02 20:00

https://www.hani.co.kr/arti/culture/religion/680418.html 訳Y.B

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