「ブラック企業に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」
2008年6月、日本の新潮社が出版した本の長いタイトルだ。インターネットサイト“2チャンネル”掲示板に上がった文などを集めて編集したこの本は、「労働者を使い捨て商品の如く使い潰すブラック企業」に対する関心を喚起した。 2009年にはブラック企業の話が映画になり、2013年には「ブラック企業」という単語がその年の最高流行語・新造語に選ばれた。
当初、ブラック企業という用語は2000年代中盤に「長時間低賃金労働を繰り返さざるをえず、35歳でもはや仕事を続けることも困難になり“定年”を迎える」日本の情報技術(IT)労働者の間から出た言葉だ。 だが、企業による労働者の使い捨ては次第に他業種にも広がった。 非営利法人POSSE(ぽっせ)などが創設した「ブラック企業対策プロジェクト」は、ホームページで「ブラック企業という言葉が世界金融危機以後、急速に人々のうわさになった」として「大学新規卒業者を採用し使い潰す成長大企業をいう」と説明する。
プロジェクトは2013年9月11日、ブラック企業の犠牲になる若者たちがなくなるように様々な分野の専門家が集まって情報と知識を活かし状況を改善しようという趣旨で創設された。 彼らは「ブラック企業の蔓延は、日本社会全体の縮小へとつながっていく」と憂慮する。 プロジェクトは被害者の救済・支援活動と共に調査活動を行い、ブラック企業問題をイシュー化している。 また、若者たちに労働法の知識を伝播することによって追加被害の発生を防ぐ努力もしている。 プロジェクトには労働組合や弁護士、労務士、精神科医、生活貧困者支援団体などが参加している。
作家、弁護士、大学教授、労働組合幹部などで構成されたブラック企業大賞企画委員会は、2012年から代表的なブラック企業を選んで発表している。 ブラック企業に社会的圧力を加えるためだ。 昨年は9月に授賞式を行い、大賞のヤマダ電機はじめ11社を選定し発表した。 東京都議会、秋田書店、外食チェーンの大庄なども10位内に入った。 2012年には福島原発事故の当事者である東京電力、2013年には居酒屋チェーン ワタミフードサービスに大賞を与えた。ブラック企業選定のためのインターネット投票には2013年に3万人が参加した。
市民社会の積極的な動きに日本政府も反応を示している。 田村憲久厚生労働相は2013年8月、「若者が使い捨てにされている問題を野放しにしておけば、日本再興戦略どころか、国の将来はない」と強調した。