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韓国で福祉予算縮小の動き…減らせるものがなく難航必至

登録:2015-02-06 01:32 修正:2015-02-06 14:16
福祉予算の現状
病院の新生児室。資料写真 //ハンギョレ新聞社

 セヌリ党と保守陣営の一角で、福祉や税金のレベルの調整が必要だとし、現在実施している福祉の一部を縮小しなければならないとする意見が相次いで提起されている。セヌリ党のキム・ムソン代表とウォン・ユチョル政策委議長は、無償給食、無償保育などを取り上げ、「福祉の構造調整」の必要性を主張した。しかし、実際の福祉予算と現実の状況を詳細に調べてみると、相当な数の政策が少子化と高齢貧困などの社会的問題と直結しており、縮小した場合、社会的影響が大きくなる可能性がある。「租税抵抗」よりも大きな国民の抵抗をもたらす可能性も少なくない。

■福祉予算

総額115兆ウォン中80兆ウォンが年金と基金
半分は基金減らしても、転用不可

 今年の韓国の福祉予算(保健・福祉・雇用)の規模は115兆7000億ウォン(約12兆4430億円、100ウォンは約11円)である。このうち70.6%は年金と基金が占めている。福祉予算の中で最も大きな割合を占めるのは、国民、公務員、私学、軍人の4大公的年金で39兆6000億ウォン(34.3%)だ。国民年金は、国民が税金とは別に保険料を出しており、政府が年金改革なしで減らせる項目ではない。公務員年金は赤字のため政府予算が投入されており、改編議論が現在国会で行われている。次に大きい部分は、「幸せ住宅」など住宅分野(18兆5000億ウォン、16.1%)、失業給付などが支給される労働分野(15兆5000億ウォン、13.5%)だ。しかし、住宅や労働分野は基金で運営されており、減らすとしても基金の性質上、他の福祉予算には使えない。

中央政府福祉予算の主要分野の現況。 //ハンギョレ新聞社

■無償給食

地方事業で年間2兆ウォン
学生減少、長期的に自然減少

 セヌリ党から福祉縮小対象として集中的に攻撃されてる無償給食には、中央政府の予算が投入されない。昨年の予算は2兆6239億ウォンで、地方自治団体が1兆573億ウォン(40.9%)、地方教育委員会が1兆5666億ウォン(59.1%)を捻出している。地方自治体と教育庁の教育理念によって小・中・高対象の無償給食水準が千差万別なのもそのためだ。済州島は86.9%で無償給食割合が最も高く、蔚山(ウルサン)は36.3%と最も低い。地方事業であるだけに、中央政府と国会が無償給食を縮小するように強制するのは難しいだけでなく、地域ごとに格差が大きく、どの水準まで減らすかの基準も曖昧である。例えば、社会的な合意を通じて無償給食を60%に合わせる場合、蔚山をはじめ釜山(プサン)、大邱(テグ)、仁川(インチョン)、大田(テジョン)、慶尚北道、慶尚南道はむしレベルを上げなければならない。無償給食予算は比較的に規模が小さい上に学生数も減っており、長期的な観点から福祉財政に大きな負担にはならない。

普遍福祉3大項目の予算の現況。 //ハンギョレ新聞社

■無償保育

養育費の負担大きく縮小したら家計への打撃
「減らすなら、『もっと生んで』なんて言わないで」

 無償保育は韓国社会で最も深刻な問題である少子化密接に関わっており、縮小された場合の悪影響に対する批判が高まると思われる。現在の保育施設を利用する場合、0〜2歳は月40万1000〜75万5000ウォンを、3〜5歳(ヌリ課程)は月22万ウォンを支援される。自宅で子供の世話をする場合のみ、6歳まで月10万〜20万ウォンの養育手当てをもらう。無償保育に中央政府、地方政府、地方教育委員会が総10兆ウォンの予算を使っている。

 無償保育は20〜30代にとって利点が多い。これらの世代は、まだ給料などが高くない上、マイホーム費用などで可処分所得が少なく、無償保育まで縮小される場合打撃が大きくならざるを得ない。仕事をしながら3歳と5歳の子供を育てるキム・ヨンミ(仮名・37)氏は、「保育料支援を受けても子供登下園のために家政婦のおばさんや保母の先生に助けてもらわないとならないため、お金がかなりかかる」とし「保育料支援まで縮小すると私の給料を丸ごと保育に使わなければならない。仕事をするより家で子供を育てるほうがマシ」だと述べた。キム氏の家は、月収が700万〜800万ウォン程度で経済的に余裕がある方だ。キム氏は「政府や政界が子供の保育料や給食を減らすとか減らさないとか騒いでいるが、情けない。もう二度と『もっと子供を生んでください』なんて言わないでほしい」と批判した。少子化のせいで無償保育の予算も長期的に見れば大きく上昇しない。

■基礎年金

高齢化時代の高齢者貧困率、深刻な水準
国民年金の死角地帯広く、増やしても不足

 福祉予算の中で、財政的に最も大きな負担となっているのは基礎年金だ。 65歳以上の高齢者下位70%に月最大20万ウォンを支給しているが、今年の予算が10兆1522億ウォンだ。高齢化により高齢者人口が増え続け、25年後の2040年には100兆ウォンが入ると推計されている。しかし、韓国は高齢者貧困率(48.1%)と高齢者の自殺率(10万人当たり81.9人)が非常に高いので、今の水準から基礎年金をより減らすのは深刻な社会問題になりかねない。現在、国民年金の死角地帯が広すぎるので、基礎年金が減ると高齢者貧困率がさらに上昇する可能性が高い。零細自営業者の場合、500万人が国民年金保険料を納付できず、非正規職も38.4%だけが国民年金に加入している。

 チョン・ジェフン ソウル女子大学教授(社会福祉学)は「二極化は深刻になって仕事もますます不安になっている状況で、福祉政策は必ず必要な“時代精神”だ。このような状況で福祉をより減らすと、民乱が起こるかもしれない」と懸念した。

キム・ソヨン、パク・スジ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015.02.05 19:58

https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/677096.html?_fr=mt1  訳H.J

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