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双龍自動車解雇者を襲う借金苦と自殺衝動

登録:2015-01-13 20:52 修正:2015-01-14 07:13
整理解雇者56人にアンケート調査
双龍自動車汎国民対策委員会が13日午前、「チボリ」新車発表会が開かれたソウルの東大門デザインプラザ前で、双龍自動車解雇労働者26人の死を追慕する意味の靴26足を置き、アナンド・マヒンドラ会長との面談と解雇者全員の復職を要求している。キム・ソングァン記者//ハンギョレ新聞社

代行運転手や日雇い労働などしたが
月平均所得150万ウォン減少
77%「最もつらいのは経済的貧困」

回答者全員「会社復帰を希望」
「復職が最大の治癒方法」

 解雇されてから6年が経つが、今でもK氏(44)は寝ていてガバッと起き上がる。 2009年8月の“玉砕スト”以後、体と心の衝撃のために、これと言ったはっきりした原因もなく1年間、両足が麻痺した彼だ。「死にたいという衝動が頭から離れない。 子供たちを人並みに育てたかったけれど、してやりたいこともできなくなって、食べたいというものも好きなだけ食べさせてやれない経済的苦痛が一番大きい」。

 年俸5500万ウォン(約600万円、1ウォンは約0.11円、以下同)の大企業正社員労働者だったK氏は“あの日”以来、月170万~180万ウォンを稼ぐ日雇い労働者になった。 主婦だった妻も、日雇いで働き始め、貯金と保険を解約した。しかし、2人の子供を育てるには生活費が足りず、6年間にした借金が7000万ウォンに上る。 経済的苦難はすべてを揺さぶった。 心の病気が生じて、平素笑って過ごしながらも“お金”の話さえ出れば家族の間でけんかになる。 昨年11月、最後の希望だった大法院(最高裁)までが「整理解雇は正当だった」と判決すると、夫婦は1週間、出勤もせずに泣いた。「裁判所だけを信じて6年間持ちこたえてきたのに、その希望が一瞬で消えてしまったのです。 会社との交渉でも始まれば、少しは希望があると思うけれど…」。

 「解雇は殺人だ」という表現が決して誇張でないことは、ハンギョレ新聞が金属労組双龍自動車支部と共に、昨年12月22日から今月2日まで行なったアンケート調査結果で再度確認される。これまで26人の双龍自動車解雇労働者とその家族が自殺や病気でこの世を去った。 生きている人たちは“経済的苦痛”に苦しめられた。 アンケート調査に答えた解雇者56人の解雇前と後の月平均所得は363万ウォンから213万ウォンに減った。 平均44.7歳で3.5人の家族を抱えた彼らには、食費・光熱費・被服費のような生活費(月平均196万ウォン)をまかなうにもギリギリの収入だ。 足りない生活費や子女の教育費、医療費、住居費などは借金で充当しなければならなかった。 そのため解雇後、1世帯当たりの借金は平均5276万ウォン増えた。

 解雇後、彼らを最も苦しめたのは「経済的貧困」(77%)だ。ひとたび正社員雇用から押し出された解雇労働者たちが、行く先を見つけるのは難しかった。 “良質な雇用”が不足しているせいもあるが、「双龍車解雇労働者」という烙印は、居住地域である平沢での再就職を困難にした。 回答者の42%が主な職業として「単純労務に従事」を挙げており、50%が規模4人未満の職場に通っている。 解雇後の働き口は主に、代行運転手、タクシー運転手、ガソリンスタンドなどのアルバイト、保険募集人、日雇い労働など、進入障壁の低い低賃金・臨時職だ。 71%が定年保障のない雇用だと答えた。 国民年金のような公的社会保険はない。 56人のうち24人がそれでも健康保険は維持しているといった程度だ。 安定した職場の垣根の外の世界には、彼らを保護してくれるセーフティネットはなかったという話だ。

 解雇は“精神的死亡宣告”でもあった。 「自殺など極端な衝動を感じたことがあるか」という質問に70%が「ある」と答えた。 2011年に平沢(ピョンテク)大学が双龍車解雇者や無給休職者など457人を対象に調査したアンケート調査では、その割合が52.5%だった。 時間が経つほど彼らの挫折感が深まっていることを示す内容だ。 また別の解雇労働者N氏(45)は「教会にも通い家族もいて助けられているが 、ますます精神的苦痛がひどくなっている。 以前は親しかった仲間の裏切りや解雇で信じられる人がいなくなり苦しかったとすれば、今はもう50代も遠くない年齢になって『これから私に何かできるだろうか』という不安感が押し寄せてくる」と語った。

 解雇労働者の妻でもある「ワラク」(双龍自動車の労働者・家族治癒共同体)のクォン・ジヨン代表は、「時間の経過とともに解雇の衝撃が忘れられるのではなく、さらに大きくなる。 安定した仕事がなく経済的困難のため、家族たちとの葛藤も深刻だ。 復職した無給休職者たちが急速に回復するのを見ると、どんな心理治療よりも復職が最大の治癒と言える」と話した。 アンケート調査の回答者のうち復職を願わない人は一人もいなかった。 そのうち85%は復職を切に望んでいると答えた。 ある解雇労働者はアンケート用紙に、「解雇労働者たちが日常に、かつての仕事場に戻れるように、力を集めて欲しいと思います」と書いた。 彼らが平穏な日常に戻る道は、6年前も今も復職しかないという意味だ。

キム・ミンギョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/672890.html 韓国語原文入力:2015/01/09 08:30
訳A.K(2133字)

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