来年から警備労働者に対しても最低賃金100%保障が施行されるにあたり、賃金引き上げの代わりに大量解雇の憂慮が提起されているなか、一部の大規模アパート団地を中心に、減員ではなく“共に生きる”方法が試みられている。 最小限の警備人材は必要だなどの現実的理由もあるが、最近起こった焼身死亡事件で警備労働者の劣悪な労働環境問題に使用者である入居者たちが目を開き始めたためだ。 減員の可否を決める入居者代表会議が集中的に開かれる11月末~12月初めが大量解雇の山場になるものと見られる。
17棟960世帯が暮しているソウル蘆原(ノウォン)区 中渓(チュンゲ)洞のライフ・青丘・新東亜アパート団地では、警備員最低賃金100%適用に関し9月に入居者賛否投票を実施した。 警備員を減らす代わりに自動ドアと防犯カメラ(CCTV)、中央統制室を設置しようという案件だった。 だが、入居者の間で反対世論が形成され、案件は否決された。 このアパート団地の関係者は25日「宅配受領とゴミの分離回収業務を自分たちが行わなければならない不便さが増すだけでなく、警戒所ごとにいた警備員がいなくなることに対する入居者の不安が大きかった」と話した。
蘆原区のJアパート団地入居者代表会議は、近い将来警備員の賃金を来年16%程度上げる方案を議論することにした。 3400余世帯が入居しているこのアパート団地関係者は「当初の管理費負担がそれほど大きくないうえに、世帯当り一か月に3000ウォン程度多く負担すれば良い水準だ。警備員の賃金引き上げに対する入居者の不満は大きくない」と話した。
警備員の焼身死亡事件で劣悪な警備員の処遇が知らされたこともアパート団地入居者の気持ちを変えている。 ソウル麻浦(マポ)区のあるアパート団地管理事務所は「ラーメン一袋、コーヒー一杯を追加で払い、警備員たちからより良いサービスを受けようと話す住民たちもいる」と話した。 アン・ソンシク蘆原労働福祉センター事務局長は「最近アパート団地の警備労働者がマスコミの注目を浴びて、各団地では世論を意識するムードが形成されているようだ」と話した。
だが、依然として相当数のアパート団地では、警備員を減員しなくとも「無給休憩時間」を増やすなどの方法で賃金引き上げと相殺させる手段を探っている。無給休憩時間は警備員に実質的警備労働をさせておきながら、賃金算定から除外する時間であり、最低賃金100%(2015年から時給5580ウォン、円換算で594円)適用にもかかわらず、実際には賃金を引き上げない便法として使われている。 ソウル銅雀(トンジャク)区のSアパート団地も最近入居者代表会議を開き、最低賃金100%を適用して雇用を維持する代わりに休憩時間を一部調整することにした。
民主労総、韓国非正規労働センター、参与連帯などはこの日「警備労働者大量解雇対策準備および労働人権保障のための汎市民社会団体連席会議」を設けた。 連席会議は「全国で警備労働者は25万人に達し、最低賃金適用にともなう大量解雇は4万人に達すると予測される。 政府は高齢化時代に高齢者の良い働き口のための根本的対策を出さなければならない」と主張した。 民主労総は近い将来、全国的なアパート団地警備員の解雇状況を整理し発表する計画だ。
勤労基準法により警備員の解雇は、30日前に予告しなければならない。そのために多くのアパート団地の入居者代表会議は、今週の月例会議で警備員の減員や解雇の有無を決め通知しなければならない。これに先立って警備員焼身死亡事件が起きたソウル江南(カンナム)区 狎鴎亭(アックジョン)洞の新現代アパートでは19~20日に警備員106人に対し解雇予告通知状を送り論議が起こっている。
パク・ギヨン、チェ・ウリ、ソ・ヨンジ、パク・テウ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )