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戦作権放棄「まるで兄貴(米国)の陰に隠れた小僧(韓国)のよう」

登録:2014-11-04 22:09 修正:2014-11-05 06:43
2012年3月、核安保首脳会議に参加するため訪韓したバラク・オバマ米国大統領(中央)が板門店共同警備区域を訪問し、オーレット警戒所から双眼鏡で北側を見ている。板門店/写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

[戦作権放棄で揺れる軍事主権]
(2)脅威にさらされる外交主権

軍事力と外交力は相当部分で比例
「自国軍隊も統制できない
周辺国が内心韓国を軽く見るだろう」

「みじめだった。我々の能力で戦い国を守るという軍人の気概を全く見いだせなかった。路地裏で力が強い兄貴の陰に隠れているばかりの小僧のようだと思った」。10月23日、戦時作戦統制権(戦作権)無期限延期決定過程を見ていたある外交官が吐露した心境だ。 事実上‘軍事主権’放棄の状況を見守って抱いた鬱憤や感情がにじみ出ていた。

 40代の職業外交官である彼は、軍事主権の核心である戦作権放棄によって軍事安保的波紋の向こう側に生じる外交安保の惨事の可能性も冷静に見ていた。 「一国の軍事力と断固たる意志は、外交力量を発揮する空間を作る基盤だ。ところが韓国では軍が先頭に立って自ら外交官より柔軟に動いているようだ」。彼は「主権放棄を黙って見ていてほう助した責任から自分も自由ではないと考える」として「恥ずかしいが、マスコミの正確な評価と市民社会の動きに逆行する局面を元に戻す最後の希望をかけている」と話した。

 朴槿恵(パク・クネ)政権の戦作権移管再延期決定が、軍事主権はもちろん‘外交主権’まで脅かしているという危機意識が広がっている。 専門家たちは今回の決定の危険性を大きく三つの側面から警告している。

「強い外交力はその国の軍事力と経済力に基づく」という国際政治の普遍原理にも今回の決定は外れているという指摘が最初に出ている。「権力は銃口から生まれる」という毛沢東の警句は、国内政治ばかりでなく国際政治にも適用されると専門家たちは見る。 冷徹な力の論理が通用する外交関係では、軍事力が相当部分で外交力と比例するためだ。 ところが軍統制権の真髄である戦作権移管の機会を蹴ってしまうことによって、政府自ら外交力量と身動きの幅を減らしたということだ。チョン・セヒョン元統一部長官は「軍事主権が他国に移れば、国家運営が難しくなり、外交的にも立場が狭まる」と話した。

 具体的には、戦作権を継続行使することになった米国との関係では、外交的にも顔色を見続けなければならない状況が維持されることになった。 ソン・ミンスン元外交部長官は「中国、日本など東アジアの周辺国も‘自国の軍隊も統制できない国’として韓国を内心見下すだろう」としつつ「表面では対話はしても、まともな外交相手としては尊重しない可能性がある」と指摘した。

 今回の決定は米中間の覇権競争構図に韓国が自ら歩いて入ってしまうという重大な敗着という批判も出ている。韓米は今回いつとも知れない戦作権移管の条件の一つに「朝鮮半島および領域内の安保環境安定化」を掲げた。北朝鮮の侵攻に備えた韓米同盟の軍事指揮体系の転換問題を、朝鮮半島以外の‘領域内安保’と連係させたのは今回が初めてだ。 リュ・ジェスン国防部政策室長は、戦作権再延期合意直後に「朝鮮半島の外側領域内の状況と戦作権移管が具体的にどうしてつながるのか」という質問に対してこう答えた。

「南シナ海と東シナ海を連結する海上交通路が武力紛争に巻き込まれたら朝鮮半島の安保に深刻な脅威を与えることになる。 こうした状況で、それでも戦作権移管をするか。これが一つの例だ」

 南・東シナ海では中国が日本・フィリピン・ベトナムなどと領土紛争を続けている。米国は中国に対抗して日本・フィリピンなどと同盟関係を結んでいる。 だが、南・東シナ海は韓国とは直接的な安保利害関係はない。ところが、今回の合意は韓米同盟の範囲を対北朝鮮抑制次元を越え、米国の対中国包囲網構築と直結させる口実を与えたという分析が出ている。

 ムン・ジョンイン延世大教授は「巻き込まれてはならない二つの強大国間の葛藤構図に自ら巻き込まれる材料を作った」として「鯨の間に挟まれた海老の境遇を自ら招来しかねない外交的一大敗北」と話した。

 中国はただでさえサード(THAAD・高々度ミサイル防御システム)の平沢(ピョンテク)配置の可能性に敏感に反応してきた。中国は対北朝鮮ミサイル探知半径をはるかに越えるサードの朝鮮半島配置の有無を、米国の中国封鎖構図に韓国が協力するか否かを計るバロメーターとして見ている。戦作権移管の再延期と領域内安保を連係させたことにより、韓国に対する中国の視線は一層鋭くなるだろうという展望が出ている。

 韓国は今回の戦作権再延期とともに、韓米日軍事情報共有方案の協議継続にも合意した。 韓米日3国間の「ミサイル探知情報」の共有は、サードの朝鮮半島配置時に最も必須となる軍事的共助方案に挙げられる。 ムン・ジョンイン教授は「韓米同盟が米日同盟と結合し一式で中国を狙うという感じが強まるほど、韓中関係は具合が悪くならざるをえない」と話した。韓国の最大貿易相手国である中国との不都合な関係は、韓国経済には直撃弾となりうる。 韓米日共助の強化は、その他にもそれぞれが作戦権を持つ同等な性格の米日同盟に対し、作戦権がない韓国が下位のパートナーとして参加するみじめな結果につながりうるという憂慮も提起されている。

 戦作権の放棄は、平和協定の議論など南北関係にも否定的波紋を投げかけることになるという観測が多い。 チョン・セヒョン元長官は「北朝鮮は1984年に朝米平和協定と南北不可侵問題を韓朝米の3者会談で議論しようと言っておきながら、「軍事実権を持つ米国と先に話し、南側ともする話があるから傍聴はしても良いという格好だった」として、「戦作権がないという理由で韓国は北朝鮮に侮辱を受ける他はなかった」と回顧した。 ソン・ミンスン元長官は「北朝鮮が韓国無視戦略を継続する名分を私たち自らが作ったのであり、本当にあきれる」と話した。

ソン・ウォンジェ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/662927.html 韓国語原文入力:2014/11/04 20:23
訳J.S(2661字)

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