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都市近郊農業で効率いい「ローカルフード直売場」が人気

登録:2014-11-03 01:31 修正:2014-11-03 06:27
23日、京畿道高陽市徳陽区碧蹄農協のローカルフード直売場で、イ・スンヨプ(左から三人目)組合長と職員が親環境農産物を手に明るく笑っている。//ハンギョレ新聞社

 京畿道高陽(コヤン)市一山東(イルサントン)区にある「ローカルフード直売場」に30日朝8時頃に行ってみると、農産物を積んで来る農民が集まって活気を帯び始めていた。100人余りの農民は、サンチュ、白菜、唐辛子、キュウリ、ナス、カボチャなど自分が育てた農産物を約500平方メートルの売場に整然と陳列していた。 明け方に収穫し包装して価格票を付けた野菜だ。 売場には野菜を売りに来た農民の名前と顔、生産地、連絡先などが表示されていた。

 一山東区のチャンハン洞で農地約3300平方メートルを借りて野菜を作るカン・ソングク氏(57)は5月にローカルフード直売場が開場して以来、毎朝ここに出勤している。 この日も午前4時30分に起きてサンチュ、カラシナ、かぶとキャベツなどを収穫し、ていねいに拭い包装して5箱を出した。数日前までよく売れたニラは、最近霜が降りてもう出せなくなった。

 ローカルフード直売場ができた後、カン氏は品目の選定から販売まですべての農作業過程をローカルフードに合わせている。以前は少数の品目を作って卸商人に渡していたが、原価と差し引きゼロに終わる時が多かった。

 価格を付けるのも生産者であるカン氏の役割だ。セリ相場表、近隣の大型マートの農産物価格などを参考にして適当な価格を決めるが、高ければ消費者に無視され、安ければ利益が手元に残らない。 幸いカン氏が出した野菜はほとんどが露地もので人気が高いので、毎日ほとんど‘完売’だ。 このようにしてカン氏の手に残るお金は一日7万~10万ウォン(1ウォンは約0.1円)。 ローカルフード直売場が開場して以来、月平均200万ウォン程の稼ぎになっている。

 カン氏は「在庫を残さないようにし、商品の質と包装には神経を多く使う。直売場で消費者と直接顔を会わせて『味はどうか』、『農薬は本当に使っていないのか』など対話をして信頼を積み上げている」と話した。

2012年に全羅北道完州(ワンジュ)で初めて生まれ
今年10月までに全国42か所で人気を博す
生産-消費者間の移動距離が短いため
新鮮さと利益の極大化‘ウィン・ウィン’

 地元で生産される農産物を長距離移動と多段階流通過程を経ずに直接地域で消費する‘ローカルフード’直売場が全国に相次ぎ開設され、農民と消費者双方から強い呼応を得ている。 ローカルフードは生産者と消費者の間の移動距離を縮めることにより食品の新鮮度を最大化し、農民と消費者に利益が帰るようにしようという趣旨で米国や日本などで始まった。

 国内では2012年に全羅北道完州郡の龍進(ヨンジン)農協に最初のローカルフード直売場ができ、今年10月までに地域農協だけで42の直売場が開設された。農業人団体などが作った協同組合や営農法人形態の直売場まで合わせれば、全国に約60個所の直売場が営業中だ。 直売場を通じて農民はセリ相場より高い価格で農産物を販売でき、消費者は新鮮で安全な農産物を20%以上安い価格で買うことができ‘一石二鳥’と評価されている。

先月30日午前、京畿道高陽市一山農協ローカルフード直売場で地域住民たちが朝取りの新鮮な農産物を購入している。//ハンギョレ新聞社

 カン氏のようにローカルフード直売場を販路としている農民は、一山農協だけで184人、ほとんどが中小零細農民だ。 一山農協の直売場には一日平均約700人の消費者が訪ねてきて、1200万ウォン相当を買っていく。 開場以来5か月間で出荷農民66人が月平均100万ウォン以上の売上を上げた。

 開場時間の午前9時にもならないうちから、勤勉な消費者が新鮮な野菜を買いに来ていた。 2~3日に1回はローカルフード直売場で買い物をするという楓洞(プンドン)の住民ペ・ジュハさん(41)は「新鮮で価格も高くなく、何より信用して買える売場が村にできて気分がいい。 週末農場をしているので、家で育てた野菜の味が分かるが、そんな感じがする」と話した。 ペさんはこの日、松浦(ソンポ)米10キロと卵1パック、ニラ、カラシナ、ネギ、白菜などを買った。

 午前10時頃、直売場には住民数十人が列を作っていた。 馬頭洞(マドゥドン)の住民チョンさん(46)は「地元の農民が自分の名前を付けて販売しているので信頼できる。菜園で育てた農作物も買える」と言って、買い物袋から‘露地産の長ネギ’を取り出して見せた。

 売場に陳列された商品がなくなりそうになれば、機敏な農民は商品を補充する。農民は携帯電話を通じてリアルタイムで売場の状況をモニタリングできる。 いつでも20分以内に到着でき、時間帯別に物量を調節したり不足した商品はいつでも補充できる。

 売場の運営責任者であるチョン・チャヌク一山農協楓山(プンサン)支店長は「ローカルフードは一つずつ手で整え、ていねいに包装しなければならないため中小農民に競争力があって、実際にも中小農民が多い。 大規模農民はかけた時間に比べて物量を多く出せないため満足できず、他人の手を借りて栽培し包装するので物が荒れているため消費者の選択から外れる場合が多い」と話した。

 だが、小農、大農の制限はなく、誰もが農薬使用基準と作物栽培法・包装法など4日間の教育を受ければ売場に商品を出すことができる。 販売金額から手数料として10~15%ほどを抜いた残りは生産者の取り分だ。 大壮洞(テジャンドン)で大型農場を営むムン・オククム氏(52)は「生産量が多く、ほとんどソウルのセリ市場に出すが、近い直売場で消費者と会うことができるのがうれしくて、小遣い稼ぎにもなるので毎日少しずつ野菜を出している」と話した。

 この直売場では、品目毎に唐辛子はキムさんの、カボチャはイさんの、という形で常連もでき、消費者が生産者に‘物はいつ出てくるのか’と直接電話したりもしていると、売場の職員は耳打ちした。 直売場ができた後、村人の気持ちが薄情になったという笑い話も出てきた。 食べて残る農産物を、以前なら周辺の人々に分けていたのに、今は全部直売場に持って行って売るということだ。 桑の木2株を育てたある農民は、以前は酒に漬けて配って飲んでいた桑の実を、今年は直販場に持って行き販売して150万ウォンを稼いだとこの職員は伝えた。

 午後6時になれば、売場に山と積み上げられていた農産物がほとんど無くなっていた。 閉場時間である午後7時までに販売されなかった商品は、翌日卸売市場に売られたり、福祉財団に寄付されて一人暮らしの老人のおかずとして使われる。

「家で育てたものだから味がよい」
「農民の名前を出しているので信頼できる」
不合理な流通構造を変えた

 高陽市には一山農協以外にも同じような規模の願堂(ウォンダン)農協・碧蹄(ピョクチェ)農協でローカルフード直売場が今年開場した。 昨年開場した農協高陽流通センター直取引市場とローカルフード専用映画館、高陽体育館朝市、前掛け市場ショッピングモールなど高陽市が運営する直売場4か所と農業企業法人である株式会社ヒーリングファームまで合わせれば計8か所のローカルフード直売場が2年間に高陽地域に生まれた。 来年には松浦農協など直売場2か所がさらに開設される予定だ。 まだ初期段階だが、直売場の年間売上が67億ウォンを記録する程に消費者の反応が熱いと高陽市関係者は話した。 イ・スンヨプ碧蹄農協組合長は「地元の農産物が他の地域の卸売市場に行ってまた戻ってくる不合理な農産物流通構造はもう変わらなければならない」と話した。

 高陽市にローカルフード直売場がうまく定着した理由は何か。 高陽市は数十年にわたって都市近郊農業をしてきた約1万世帯の中小農家がある首都圏の代表的な近郊農業地域だ。 ここに100万人の都市消費者が共存し、10~20分以内に直取引が可能な条件が揃っている。 ローカルフードの最適地であるわけだ。

 高陽市と農協は毎日残留農薬検査、2週間ごとに詳細な調査を実施するなど、安全な農産物供給を通した消費者信頼を最優先の価値としている。 許容基準を超える残留農薬が検出されれば、1か月間出荷が停止され、2回摘発されれば3か月停止、3回摘発されれば永遠に出荷資格を剥奪する。 今までに3軒の農家が各1か月の出荷停止にあった。 売場の各所には小さな電子秤を置いて、消費者が自分で農産物の重さを測れるようにしてある。

 また、高陽市と農協は開場の2年前から‘単一品目大量生産’ではなく‘多品目少量生産’に農産物生産システムを改編し、品目と品種の多様性を確保できるよう準備した。

 ローカルフードの持続的な発展のためには、品目の多様化など課題が多いという指摘もある。 農協と農民はオフシーズンに備えて粉唐辛子、イチゴジャムなど農産物加工食品を作って販売できるよう条例の制定を要求している。 チョン・ジョンヒョン高陽市農業政策課長は「まずローカルフード認証制と冬季用ビニールハウス、余剰農産物を保管できる低温冷蔵庫の普及などを推進している。 農食品加工センターとローカルフード食材を利用したレストランの開場なども検討中」と話した。

高陽/文・写真 パク・ギョンマン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/area/662573.html 韓国語原文入力:2014/11/02 20:21
訳J.S(3994字)

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