韓国最高裁が維新時期の‘超憲法的’悪法である緊急措置を適用した捜査・裁判は、それ自体としては不法行為ではなく、損害賠償請求の対象とはなりえないと明らかにした。 緊急措置を違憲・無効と宣言しておきながら、当時これを実行に移した公務員たちの行為には免罪符を与えることになるため論議が起きている。
最高裁2部(主審イ・サンフン最高裁判事)は最近、維新反対運動をして緊急措置9号違反で有罪を宣告されたソ氏とチャン氏、およびその家族が国家を相手に起こした損害賠償訴訟上告審で、緊急措置により令状なしで逮捕・監禁したことは不法行為であり、損害賠償対象になるという原告側主張を棄却した。
裁判所は「緊急措置9号によって令状なしで被疑者を逮捕・拘禁し起訴した捜査機関や、有罪を宣告した裁判官の職務行為は公務員の故意・過失による不法行為に該当するとは見難い。 当時の維新憲法は『緊急措置は司法的審査の対象にならない』と規定しており、緊急措置9号が違憲・無効であることが(当時には)宣言されていなかったため」と明らかにした。
最高裁はさらに「国家機関が捜査過程で行った違法行為と有罪判決の間に因果関係があるかを別に審理し、国家の賠償責任を認めなければならない」と判示した。 緊急措置が当時実定法同然だったために、それを執行したこと自体は不法行為とは見られず、ただし拷問などの苛酷行為の事実が認められれば国家に賠償責任を負わせることができるという判断だ。
緊急措置は朴正煕政権が独裁延命のために“デマねつ造・流布”行為などを処罰するという名分の下に令状なしで逮捕・拘禁などを可能にした措置だ。 1974年の1号を皮切りに9号まで発動された希代の悪法として知られる。だが、最高裁が緊急措置にともなう捜査・裁判行為の違法性を初めて判断した今回の判決で、拷問などの苛酷行為を立証し難い被害者は賠償対象から除外される可能性が高まった。
裁判所は今回の事件の原告であるソ氏らが大学生だった1976年、中央情報部捜査官に連行され服を脱がされ殴打され、睡眠をとらせない拷問などにあった事実は認められるとし、原告一部勝訴判決した原審を27日に確定したと明らかにした。
だが、裁判所の論理は、2010年と昨年の最高裁、及び憲法裁判所が緊急措置1・9号は違憲と判断した趣旨には外れるという批判が出ている。 当時、最高裁は「緊急措置1・9号は発動要件を備えずに目的上の限界を逸脱し、憲法上保障された国民の基本権を侵害したものであるため、緊急措置1・9号が解除ないし失効する以前から維新憲法に違反しており違憲」と明らかにした経緯がある。 現行憲法に照らしても、違憲であるだけでなく、緊急措置発動の根拠として提示された維新憲法に照らしてみても違憲だとしていたわけだ。
チョ・ヨンソン弁護士は「当時の最高裁判決は、維新憲法による緊急措置立法行為自体が違憲という趣旨だ。 捜査機関の違法行為を論じずとも、国家が立法形式上のの不法行為を犯したことを認めたもの」と話した。 キム・ヒョンテ弁護士は「ドイツのナチ体制の法も、その当時には正当だったと言うようなものだ。 司法府の貧しい歴史認識を示すもの」と話した。
民主社会のための弁護士会は論評で「過去の維新政権が緊急措置を批判したという理由だけで国民の基本権を侵害し、無実の市民を監獄に閉じ込めた点を考慮する時、最高裁判決の趣旨は形式論理に陥った独断」と批判した。