‘底引き網’捜査・一方的照会の憂慮
特定人物の査察の道具に使われることも
警察“人権侵害最小化を議論中”
“監視国家に他ならない”批判
韓国警察庁が構築した「手配車両検索システム」は、既に地方自治体別に設置・運営し捜査機関が事後捜査に活用してきた車両防犯用防犯テレビ(CCTV)映像を一か所に集めてリアルタイムで検索できるようにしたものだ。 導入趣旨だけを見れば、警察が最近強調している”捜査ゴールデンタイム確保”に適合したシステムに思える。 しかし、地方自治体の防犯テレビで収集した不特定車両全体の情報を第三者である警察庁にリアルタイム伝送して活用することに対し、誤・乱用の憂慮とともに個人情報保護法違反にあたるという指摘が出ている。
警察庁は新システム構築直後の今年4月、安全行政部に「映像情報から抽出して別途管理する車両番号が個人情報に該当するかどうか」を判断してほしいと問い合わせた。 これに対し安全行政部は6月、「警察庁は車両番号だけでも車両所有者を識別できる。 該当映像情報には運転者の顔まで識別できる情報が含まれている。 これは個人情報保護法(第2条)による個人情報に該当し、このような情報を簡単に検索できるよう体系的に配列・構成されているならば、個人情報保護法(第4条)による個人情報ファイルに該当する」と答えた。
警察庁は新システムの試験運用中にこのような人権侵害の素地が発見され、運用を中断したと明らかにした。 手配車両検索システムの概略的輪郭は、安全行政部の「問題車両知能型検索および検挙システム」のモデル事業に選ばれ、昨年5月から統合管制センターを運用中のソウルのある自治区の事例を見れば知ることが出来る。
チン・ソンミ新政治民主連合議員がこの自治区から受け取った資料によると、このシステムに接続して特定車両番号を入力すれば車両が通過した移動経路が地図に自動表示され、カメラで撮られた動画までを確認できる。 この自治区で車両防犯用カメラ289台が撮影し保管する車両番号は、年間7000万件に達すると推定される。 識別が容易なナンバープレートを認識するので、本人が知らない間に個人の位置情報がそっくり露出するわけだ。
警察の手配車両検索システムは、この自治区のシステムの全国拡張版だ。 警察システムは、地方自治体別に運営する車両防犯用カメラ5929台が認識した車両の運行情報をリアルタイムに伝送され、最短3か月間保管するよう設計されている。 2010年江原道警察庁を始め、2012年から一次システムを構築した忠清南道・忠清北道・京畿道警察庁管轄地域、ソウルの一部自治区ではすでにこのような車両情報を警察庁にリアルタイム伝送している。
特に緊急手配の場合には、車両ナンバープレートの文字や数字のうち2文字だけ入力しても「類似検索」できるように設計されている。 手配車両の番号と何文字かだけが同じという理由で誰でも警察捜査対象になりうるという意味だ。 これに先立って、警察は手配中のユ・ビョンオン元セモグループ会長を追跡するために、スマートフォンのナビゲーション アプリを通じて特定地名を検索した一般市民の個人情報までを無作為に覗き見ていた事実が明らかになり批判を受けた。
特別な統制・安全装置を備えずに手配車両検索システムが公式運用される場合、”底引き網”的捜査や一方的照会に悪用される可能性がある。 特定人のアラをさがす強力な査察道具にもなり得る。 警察庁情報通信担当官室は「人権侵害要素を最小化するために照会権者と対象犯罪をどのようにするのかを議論している」と話した。
イ・ホジュン西江大学法学専門大学院教授は「警察が明確な関連法規も用意せずに一般市民の車両移動情報をまるごと収集することは憲法に定める過剰禁止原則に反する、監視国家の姿と違うところがない」と話した。