韓米6か国首席代表がワシントンで会談
北朝鮮に「離散家族再会・米国人釈放」を求める
北朝鮮核問題担当のサイラー特使も
「抑留者問題が韓米関係の障害」
キム・グァンジン安保室長、いずれ訪米して外交・安保を議論
韓半島情勢を睨んだ試金石に
米国が北朝鮮に抑留中の自国民の釈放という“人道主義”問題を機に対北接近を試みている。朝米関係が、拉致問題という人道主義に基づく議題で対話の糸口をつかんだ朝日交渉と同じ道に進むのか、あるいは睨み合いで終わるのか関心が高まっている。
米国政府が北朝鮮に拘束されたケネス・ベ、マシュー・トッド・ミラー、ジェフリー・エドワード・ファウルの自国民3人に対して積極的な外交的解決法を模索しているのは間違いなさそうだ。韓米6か国協議首席代表の9日(現地時間)のワシントンの会談も、抑留者釈放に対する米国の関心を反映したものと思われる。韓国側の6か国協議首席代表のファン・ジュングッ外交部韓半島平和交渉本部長はこの日、国務省庁舎で米国のグリーン・デービス6か国協議首席代表と会談した後、記者らに「南北離散家族再会と北朝鮮内の米国人抑留者釈放など人道的問題に北朝鮮が転向的措置をとることを求めた」と語った。
韓国と米国の6か国首席代表が具体的事案を特定して北朝鮮側に措置を求めたのは、北朝鮮の態度により関係改善に肯定的な雰囲気が生まれるというメッセージを伝えようとする意図がみてとれる。なにより離散家族再会と米国人抑留者釈放を“人道主義”事案としてひと括りにしたのは、抑留者釈放のための米国の独自の外交的努力を韓国政府が黙認するための事前整地作業ではないかとする解釈もされている。
これに先立ちシドニー・サイラー新任6か国協議特使も今月4日、ワシントンのあるシンクタンクで行われた講演で「北朝鮮抑留者問題が朝米関係の障害」になっているとして、「平壌駐在のスウェーデン大使館を通して領事的接触は言うまでもなく(対北外交交渉窓口の)“ニューヨーク・チャンネル”を通して外交的努力をしている」と語った。
北朝鮮関連業務を担当するサイラー特使が人道主義事案の抑留者問題をあげたのは異例なことと受け止められる。北朝鮮核問題と人道主義問題を分離対応するという米国の伝統的対北基調から外れ、二つの問題を結び付ける印象を与えるからだ。
米国政府は北朝鮮抑留者たちに対する国内世論を無視できない立場にある。中東で失踪した米国人記者2人がイスラム・スンニ派原理主義武装勢力「イスラム国家」(IS)により2週間間隔で無慈悲に殺害された後、米国社会はさらなる自国民犠牲の憂慮が拡散している。特に、11月の中間選挙を目前にしたバラク・オバマ政権としては、外交政策で湧き上がる不信世論を鎮めなくてはならない立場にある。
韓国政府も米国を側面支援するかまえだ。朝米関係が改善すれば南北関係にも交渉の余地が少し広まると思われるからだ。政府関係者は「米国が高い関心を見せるほど、北朝鮮としては抑留者を釈放する適切な時期にもなる」としたうえで、「もし釈放されば米国内では“イスラム国家”殺害事件と比較する世論が生まれるだろうし、その過程で北朝鮮はむしろ“イスラム国家”などと異なり人権を重視するというイメージを得ることもできる」と語った。
しかし、まだ最初のボタンもしめていない朝米関係に楽観的な見込みをするのは早すぎるという指摘も少なくない。なにより朝米それぞれの計算があまりに違う。北朝鮮は抑留者釈放の見返りに条件なしの6か国協議再開などを要求するのが明白だが、米国は北朝鮮核問題に対しては相変わらず頑固な立場だ。ソウル大学統一平和研究院のチャン・ヨンソク専任研究員は、「北朝鮮は人道問題で米国の態度をいかに変えられるか確信がなく、この先どれほどの進展があるか疑わしい」とみている。北朝鮮が自国に有利に時間を使えると考え、協議に消極的になるかもしれないというのだ。
こうした脈略からカン・ソクチュ北朝鮮労働党国際担当書記が今月6日からドイツ、ベルギーなどヨーロッパ4か国を歴訪中であるのも、北朝鮮の対外関係の多様化戦略なのだろうが、朝米関係と南北関係に集中してきた今までの外交路線から抜け出そうとしているという解釈もされる。実際に、北朝鮮は対内外的には南北関係改善が必要だと強調しておきながら、先月11日の南側の第2回高位級接触の提案には公式な答えをまだ出していない。
さらに、米国政府が陥った容易ならざる国際情勢も朝米接近を現実的に難しくしていると指摘される。イ・ヘジョン中央大学教授(国際関係学)は「オバマ政権がイラク戦争に再び足を踏み入れて対テロ戦争の論理が復活すれば、北朝鮮を“悪の枢軸”と名指しした過去のブッシュ政権の時の姿に逆戻りしないという保障はない」と指摘した。
14日に予想されるキム・グァンジン青瓦台国家安保室長の米国訪問も、韓半島の下半期情勢を占うリトマス紙になるかもしれない。キム室長は17日までワシントンに留まり、米国側のカウンターパートであるホワイトハウスのスーザン・ライス国家安保補佐官など外交・安保分野の高官および専門家たちと相次いで会うと伝えられた。キム室長は北朝鮮核問題と中国および日本との関係、韓米同盟問題などを包括的に論議するものとみられる。
特に、米国の高高度ミサイル防御体系(サード)を韓国に配置する方向で韓米間の意見が集約される場合、北朝鮮と中国の強い反発で米中、韓中、南北、朝米など東北アジア情勢が全般的に揺れ動く可能性も排除できない。
一方、11日にソウルでは韓中日外交当局次官補級の官僚が参加する高位級会議(SOM)が開かれ、3国間の葛藤解消を探る迂回的な折衝が始まる。2007年以降、毎年開催されてきた韓中日高位級会議は3国首脳会談を準備する実務会談の性格を帯びている。ただ、最近続いている日本の右傾化に対する韓中の反発など、歴史および領有権葛藤のため3国首脳会談は当分難しいと展望される。3国間の会合そのものに意味がある外交的行為となる。
韓国語原文入力:2014.09.10 22:0