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[セウォル号100日ドキュメンタリー話題] 「ゴールデンタイムに何もしなかった」…'国家'を赤裸々に告発

登録:2014-08-07 00:34 修正:2014-08-07 18:02
ドキュメンタリー‘セウォル号ゴールデンタイム、国家はなかった’
ペンモク港救助現場に行ってきた家族「何もしていません」
ニュースでは一貫して「大規模救助活動中」という
政府の‘偽り’発表が流れていた
大統領府関係者は海洋警察に大統領報告のための現場映像を携帯電話で送ってほしいと催促した。 ドキュメンタリー<セウォル号ゴールデンタイム、国家はなかった>画面キャプチャー、キム・ジョンヒョ記者 hyopd@hani.co.kr

‘ニュース打破’‘4・16記録団’共同作業
「放送会社が皆持っている映像
真実を正すことが重要だった」

 事故が起きた4月16日夜、救助の状況が気になる家族たちはお金を集めて漁船を借り、沈没現場に訪ねて行った。 波は凪いでいたが海洋警察は水面上に突き出ている船首付近をぐるぐる回るだけで、誰も救助活動はしていなかった。船に乗って行った家族は「自分が海に入る」と言って海に飛び込もうとし、周りの家族が泣きながら引き留めた。 しばらくして海は渦巻いた。 ‘ゴールデンタイム’はそんな風に空しく過ぎ去った。

 ペンモク港に戻ると待っていた他の家族が集まってきた。 「現場の状況はどうですか? 救助活動はしていますか?」漁船からおりた家族は「何もしていませんでした」と言ってその場に座り込んだ。 その瞬間にも政府は「大規模救助活動をしている」と言い続け、マスコミはそれをオウムのように繰り返してばかりいた。

事故当日の夜、セウォル号沈没現場の海は穏やかだったが、救助作業はなされなかった。 ドキュメンタリー<セウォル号ゴールデンタイム、国家はなかった>画面キャプチャー、キム・ジョンヒョ記者 hyopd@hani.co.kr

 事故当日、海洋警察は救助活動より大統領府報告に夢中だったという情況も具体的に捉えられた。 事件初期の救助を手伝うために‘海洋警察3009号’指揮艦に搭乗したある民間潜水士は「大統領府側からめちゃくちゃ多くの電話がかかってきて、海洋警察庁長が会議を主管できなかった。 その状況で誰かが‘こうしてみよう’と言うべきだったのに、海洋警察庁長が電話を受けてばかりいて会議にならなかった」と話した。 別の民間潜水士から「海洋警察庁長が会議をしようと言っておきながら、5分だけ座っていてラーメンを作って食べて行ってしまったこともある」という暴露も出てきた。

 セウォル号惨事100日を迎え、ドキュメンタリー、国家はなかった>(以下、<セウォル号ゴールデンタイム>)は救助のゴールデンタイムに大統領府と海洋警察など‘国家’が何もしていなかったことを赤裸々に告発している。 セウォル号を沈没させたのがユ・ビョンオン氏と船員だとすれば、300余の生命を全員死なせてしまったのは無能・無責任な政府だったという点を生々しい現場画面を通じて視聴者たちに自ずと悟らせる。 ドキュメンタリーの演出者であるイム・ユチョル ディレクターは「たった1人の人命も救助できなかったことについて、単に‘無能’という一言で済ませることはできない」と語り、ソン・ウォングン ディレクターは「事故発生から72時間の中に正解があると見る」と話した。 ドキュメンタリーは<ニュース打破>と‘4・16記録団’の共同作業によるものだ。 記録団は地上波放送を製作するフリーランサー ディレクターが集まった‘韓国独立ディレクター協会’会員たちが設けたプロジェクトの集いだ。

 実際<セウォル号ゴールデンタイム>を共同演出したイム・ユチョル、ハン・ギョンス、ソン・ウォングン ディレクターは来年4月、事故1周年を目標にドキュメンタリーを製作していた。 だが、セウォル号が忘れられつつあり、セヌリ党が遺族を路上生活者だと‘侮辱’している状況で、じっとしてはいられなかった。 セウォル号事故で国家が何をしたのかを明らかにしなければならないと判断した。 掘り下げるほど、疑問のの数は増えたとディレクターたちは口をそろえた。

対策会議に参加した民間潜水士は「海洋警察庁長が会議しようと言いながら、5分だけ座っていたがラーメンを作って食べて行ってしまった」と証言した。 ドキュメンタリー<セウォル号ゴールデンタイム、国家はなかった>画面キャプチャー、キム・ジョンヒョ記者 hyopd@hani.co.kr

 特に今回のドキュメンタリーに含まれた映像の大部分は放送会社がすでに保有しているものだという。 ただし、使われ方が違った。 16日夜、17日未明の映像もすべての放送会社が共有しているけれど、放送会社は17日午前「政府が夜中に捜索作業を始めた」というメッセージとともに報道した。

 演出陣はドキュメンタリーの製作過程でセウォル号の遺族たちを深く理解するようになった。 彼らは遺族たちを「良心の共同体」と呼んだ。 二度とこのような事故が起きないようにするための‘真相究明’を除き、すべての欲が無くなった人々のようだと話した。 政界で言われる特例入学や義死者指定など‘補償’と言われるいかなる項目も家族が望んだり提案したものではない。 演出者は「金で覆い隠そうとする」政界の誘惑のせいで家族が分裂したり疲れてあきらめる事態が起きないよう、市民の関心と支持が何より重要だと話した。

今回のドキュメンタリーを共同演出したソン・ウォングン ディレクター(左から)ハン・ギョンス ディレクター、イム・ユチョル監督

 「セウォル号を貫く核心は金です。金に始まり金に終わるということじゃないですか。 家族委が屈すれば、韓国社会で生きていく大人たちはもはや子供たちに何も言えなくなります。」(イム ディレクター)「この戦いが補償金で覆い隠されれば、韓国社会は金の奴隷になるということを知らせたいと思いました。 片方では金で覆い隠そうとし、国民は疲労感故に忘れようとして…。 これが今の韓国の現実ならば、それもそっくりありのままに記録します。」(ハン ディレクター)「セウォル号は普通の人が‘私が当事者だったら’という立場で接近するべきだと思います。 特に初期救助のゴールデンタイムだった72時間を元に戻して、その時国家は何をしたのかを十分に噛みしめる必要があります。」(ソン ディレクター)ドキュメンタリーが公開された後、セウォル号の遺族たちは演出陣に感謝の意を表わしたという。 これまで積もりに積もった苦痛を和らげてくれたためだ。 イム ディレクターは「私を‘キレギ(ゴミ記者)’と見て距離を置いていたある家族の方が、ドキュメンタリーを見て笑顔で慰労してくれた」と話した。 演出陣はセウォル号ドキュメンタリー第2編を準備している。

キム・ヒョシル、イ・ジョングク記者 trans@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/650180.html 韓国語原文入力:2014/08/06 22:31
訳J.S(2946字)

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