済州 “航空会社協同組合”の胎動
済州(チェジュ)地域で“航空会社協同組合”を立ち上げようとする初の試みが始まった。84年前、日本統治時代の1930年に旅客船協同組合を作って済州と日本の大阪航路に旅客船を浮かべ、日本人を驚かせた底力が蘇るか、関心を集めている。済州道民による、済州道民のための、済州道民の作った協同組合航空機が飛べるだろうか。
史上初の実験が済州で胎動している。「済州道民による、済州道民のための、済州道民の」を標榜した<航空会社協同組合>がそれだ。
<航空会社協同組合>設立の論議が出たのは、ここ数年間に済州島訪問客が増え、済州道民が必要な時に航空券を手に入れられなかったり、済州産農水産物の輸送が難しくなったからだ。
昨年、済州空港利用客は史上初めて2000万人を超えた。2004年から2008年まで済州空港の利用客増加率は年間1.2~6.6%に過ぎなかったが、格安航空会社(LCC)の登場などの影響で2009年から毎年7.2~15.3%の増加率を見せた。
済州道が分析した今年上半期(1~6月)の、済州空港の国内線輸送(往復)実績を見ると、1日平均336本(6万3670議席)が運航され、搭乗率83.3%(5万3829人)を記録した。
この6月には国内線搭乗率が85.3%に達した。 搭乗率が80%を超えれば航空機の座席は求めにくいというのが一般的な評価だ。 必要な時に航空券を手に入れられなかった済州道民が、航空機利用を放棄するケースも出ている。貨物運送も同じだ。2012年と昨年は済州地域の農産物生産者団体が、大手航空会社の航空機機種変更や運航回数の削減などで越冬野菜と生鮮野菜の航空輸送が難しくなったとして、物流対策作りを要求したりもした。
このような現実に問題意識を持った人々が、済州道民の航空移動権と貨物輸送権の保障のための“航空会社協同組合”設立を推進している。韓国協同組合創業経営支援センター(理事長キム・ソンオ)と航空専門家たちが、昨年9月に協同組合を提案して論議に火をつけた。
彼らは、去る5月と6月の2回にわたって済州で<済州空のバス協同組合>設立の公聴会を開き、設立推進の会も作った。彼らの構想する方式は、消費者(道民)、事業者、職員らが出資する多重利害関係者協同組合だ。来る10月の組合設立を目標に推進中だ。計画を見ると、初期の設立資本金は100億ウォンで、個人出資者の出資金は1人10万ウォン以上と構想している。
格安航空会社のために済州空港利用客増大
道民ら航空移動権侵害され
越冬野菜など輸送困難に抗議
“航空会社協同組合”5月から公聴会
道民2万人など3万人集め
設立資本金100億確保する計画
貨物機・旅客機2機 賃貸運用案
道民参加・資本金募集がカギ
公信力ある機関による検証が必要
ウォン・ヒリョン知事も参加意思を表明
消費者組合員は、済州道民2万人、在外済州道民1万人を目標にしている。 航空機は貨物機2機(1機は予備用)と旅客機2機を賃貸方式で調達し、貨物機と旅客機を順次就航させる計画だ。 彼らは1日5回往復する済州~金浦(キンポ)路線の座席販売率80%を基準とし、月平均4万人が利用して、旅客運送事業の年間売上高が400億ウォンに達すると推定した。済州~金浦往復航空料金を8万ウォン(現行14万ウォン台)と見積もった場合だ。貨物機は、済州~金浦路線を週に30回、国際路線10回を運航し年間270億ウォンの売上を予想している。 社会的企業として社会的弱者を採用し、利益金の組合員配分と地域社会への還元も計画している。
キム・ソンオ理事長は「道民の立場から見ると、済州島訪問客が増加すればするほど、航空移動権がだんだん侵害されているのが現実だ」と述べた。
2回の公聴会では、航空会社協同組合の安全性と事業性、初期資本金の規模などの問題が提起された。4回の航空会社設立の経験があるというイ・ジェイン韓国航空整備(株)代表は「初期資本金が100億ウォンなら十分可能だ」として「一部の格安航空会社の場合、金融費用などがかかるので短期収益を出すことは難しいが、“空のバス”は組合費で運営するために金融費用がかからないという長所がある」と説明した。
彼は「航空会社を設立すれば、通常、貨物機を先に就航させる。済州道内の農畜水産物など、一日150tの需要がある。この生産者たちが組合に加入して利用することになる。 6ヵ月後には旅客機を就航させるが、一般の人に格安航空会社よりも少し安い価格で運営すれば、いくらでも黒字を出せる」と強調した。
格安航空会社も大手航空会社も、国内外の航空安全基準厳しく適用されているため、安全性にも問題はないという立場だ。 むしろ組合員の同等な代表性のために、安全運航のための意思疎通が可能だと話した。大韓航空操縦士労働組合の初代委員長を務めたイ・ソンジェ(66)氏は「経営陣から職員まで同じ組合員であるために、対話のチャンネルがいつも開かれているという点が安全運航に大きく役立つだろう」と話した。彼は「協同組合の原則は民主性、責任性、公平性、協力などであるために、一般の株式会社のように富の集中が成されないという長所がある」として「このような航空会社が世界のどこにありますか。 航空会社協同組合が設立されれば、最も美しく誇らしい航空会社になるだろう」と断言した。
航空会社協同組合設立のカギは、済州道民の絶対的支持と主導的参加、資本金の確保だ。農協、水産業協同組合、信用協同組合など機関投資家が乗り出すかどうかも疑問だ。済州道民が主導し、専門家集団が参加する形で行なわれなければならないという意見も出ている。
設立推進の会代表のイム・ムンチョル神父は「設立資本金や売上高など全般的な事項について、公信力ある機関の検証作業を受けるべきだという意見が多い。 その次には道民を説得できなければならない」と指摘した。パク・ホンベ済州空港インフラ拡充推進団長も「(協同組合設立の議論は)もうちょっと考えて見なければならない。航空会社は小さな企業じゃないから。技術的、財政的側面など、精密な分析と徹底した計画が必要だ」と慎重な立場を示した。
ウォン・ヒリョン済州道知事は知事当選者時代に公聴会に参加して、「個人的に協同組合に参加できるなら参加したい。道知事も参加したのに失敗したと言われないようにしなければならない。道民の誰もが共感できる事業計画書がほしい」と注文した。済州道民たちの作った“空のバス”時代が開かれるかどうか関心を集めている。
文・写真ホ・ホジュン記者hojoon@hani.co.kr