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[セウォル号100日] 珍島住民の生計は脅かされ、政府は知らぬ振り

登録:2014-07-25 17:20 修正:2014-07-26 00:10
16日午後、全羅南道珍島郡臨淮面の西望港でワタリガニ漁船の船員が空っぽの筌(うえ:籠状の漁具)を船から下している。ニューシス

捜索の長期化で養殖業・漁業は足止め状態
観光客の足も途絶え
特別災難地域に指定され3ヶ月…約束した住民支援はなし
心理治療費は自己負担
「1世帯あたり85万ウォン支給のみ
被害確認の努力すらしなかった」

 去る9日、珍島郡鳥島面(チンドグン・チョドミョン)の漁民キム某氏がこの世を去った。ワカメ・ヒジキの養殖とカタクチイワシ漁などで生計を立てていたキム氏にとって、4月16日のセウォル号沈没事故は悪夢の始まりだった。生存者捜索作業が長期化し、事故海域から遠くない養殖場の管理ができなくなった。 収入が急激に減った。それにつれて憤りが胸の片隅に 積もっていった。険しい人生の航路でセウォル号惨事という暗礁にまでぶつかったキム氏は、結局自ら命を絶ってしまった。

 セウォル号惨事100日目を迎え、珍島住民の被害はますます増大している。失踪者の捜索作業が終わっていないため、珍島の養殖業と漁業は依然として足止めされている。上鳥島(サンチョド)・下鳥島(ハチョド)と観梅島(クァンメド)などの島嶼地域は観光客の足も途絶えた。生活苦よりも一層耐え難いのは大型惨事による精神的衝撃、そして政府に裏切られたという気持ちだ。 政府は、事故発生から5日後の4月21日、珍島郡を特別災難地域に指定し、珍島住民の被害支援対策を講じると約束した。しかし、現在までほとんど何もなされていない。

 <セウォル号惨事による珍島郡汎郡民対策委員会>(対策委)の幹事キム・ナムジュン氏は23日「特別災難地域指定以後になされた被害補償は、一部の島の漁民に生活安定資金として1世帯当たり85万3400ウォン(約8万5千円)を支給しただけだ。政府は珍島住民がどれほどの被害を受けたのか、直接確認しようとすらしなかった」と述べた。我慢できなくなった対策委は15日、政府ではなくソウル汝矣島(ヨイド)の国会に出向き、セヌリ党と新政治民主連合などを訪ねた。対策委が把握した珍島住民の被害状況を伝え、対策を講ずるよう訴えるためだった。

 セウォル号惨事による精神的衝撃は深刻だ。 保健福祉部と全羅南道道庁、珍島郡保健所、国立羅州(ナジュ)病院などが共同で構成した災難心理支援団は、5月から今月初めまで珍島郡に属する8つの島嶼地域の漁民などを対象に巡回心理相談を行なった。セウォル号生存者救助作業に直接参加した漁民や、事故で精神的衝撃を受けた住民の心理的安定と日常生活復帰を助けるという趣旨からだ。セウォル号事故海域から近い鳥島面(チョドミョン) 東巨次島(トンコチャド)西巨次島(ソコチャド)(6月17~18日)と観梅島(6月24日)大馬島(テマド)(6月25日)の漁民20人余りを対象にした心理相談も行なわれた。

 政府に対する珍島住民の不信はその後さらに高まった。 政府が、漁民10人余りに集中的な心理治療が必要だと判定した後、診療費は本人負担と通知したためだ。 事故当日、現場で多くの生存者を救出し“セウォル号の英雄”と呼ばれた大馬島の漁民キム某氏でさえも「診療費は本人負担」という通知を受けた。

 珍島の漁民は呆れ返った。 診療費負担のために心理治療を放棄する事例も続出している。鳥島面東巨次島のチャ某氏は「心理相談の1週間後に再び連絡してきた医療陣が、診療費個人負担を条件に追加の心理治療を受けるよう言うので、開いた口がふさがらなくて、“大丈夫だ”と答えた」と話した。

 これに対して福祉部関係者は「中央災難安全対策本部が定めた医療費支援範囲は、事故の犠牲者・行方不明者家族と救助作業に参加した人たちに限定される」とし、「珍島の漁民は医療費支援対象に含まれない」と明らかにした。

チェ・ソンジン記者 csj@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/648170.html 韓国語原文入力:2014/07/23 17:05
訳A.K(1824字)

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