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誤報を呼ぶSNSの真偽判定をするメディアが登場

登録:2014-07-17 23:02 修正:2014-07-18 02:12
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上に氾濫する写真や動画などの虚偽性を判断し、報道機関に情報提供する「ストーリーフル(storyful)」のホームページ画面。 「世界初のソーシャルニュース代理店」と紹介されている。ストーリーフルのホームページ・キャプチャー

一部の報道機関はSNSをそのまま引用
「言論仲裁委員会」に申請された仲裁申請
80%がインターネット新聞やポータルサイトに集中
ネットユーザーを注目させる検索語商売のため

国際的SNS通信社ストーリーフル
ニューヨークタイムズ紙などは記事化前に検証
メディア王マードックが巨額で買収

#事例1. 韓国の大統領選挙を控えた2012年11月、ある中年タレントが自分のツイッターに野党の文在寅(ムン・ジェイン)候補らを非難する文を載せた。マスコミは競うように報じたが、そのタレントは「ツイッターをする方法も知らない」と打ち明けた。何者かが詐称アカウントを使って書いた文であることが分かった。

#事例2. 昨年5月、「水原(スウォン)駅で殺人事件が発生した」という文が、一人の男性が倒れている写真と共にソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で急速に広がった。SNSは炎上し、ポータルサイトの人気検索語に「水原駅」が上位に上がり、関連記事があふれた。しかし、京畿道(キョンギド)警察庁が単純な暴行事件に過ぎなかったと明らかにすると、話題にすらされなくなった。

 交流サイトのSNSが誤報を大量生産していることで注目を集めている。誰でも参加できるので、事実でない情報が氾濫する可能性が高まるのはやむをえない。深刻なのは、一部のメディアが事実関係を確認もせずにSNS上の内容を記事化し、2次、3次と被害を拡散させている点にある。

 韓国言論仲裁委員会が17日現在で受け付けた調整および仲裁の申請現況を見ると、対象となるのはインターネット新聞とインターネット・ニュースサービス(ポータルサイトなど)が突出して多い。過去5年間の調整件数の55.3%、仲裁件数の79.0%がインターネットの新聞とニュースサービスに集中している。

 これらはマスコミ報道による被害に対する救済申請であり、それだけ誤報などが多かったことになる。一方、SNSを審議する韓国放送通信審議委員会にSNS上の文などで被害をこうむったと申告されたのは、昨年は17件、今年は6月までに6件に過ぎない。SNSそのものに問題があるというより、それを加工して報じるメディア側の姿勢に大きな問題があるといえる。

 こうした現象が起きるのは、インターネットメディアが行う‘検索語商売’のためだとするのが専門家たちの見解だ。SNSで話題になればネットユーザーの検索頻度が高まり、自動的にポータルサイトが実施する「リアルタイム人気検索語」の上位に上がる。それを見たメディアがネットユーザーの検索にひっかかる記事を急いで作る。その結果、噂にすぎないSNS上の内容が事実確認もされずに記事になり、ありとあらゆるメディアが群れをなして後を追う。こうした状況がエスカレートし、大手メディアまで振り回されることもある。

 先進国もこの問題で頭を痛めている。米国の場合、2012年に起きた「ハリケーン・サンディ」の被害で、『CNN』がニューヨーク証券取引所が浸水したというSNSの噂を報じて恥をかいた。「無名戦士の墓」が浸水した偽造写真が競うように報じられたこともある。「言論人権センター」のユン・ヨジン事務局長は、「SNS上に飛び交う話題を加工して記事化する過程で、マスコミが事実確認という本来の役割を果たせずにいる」と指摘した。

 韓国のあるインターネットメディア関係者は、「SNSで話題になればリアルタイムでニュースを作って流し、事実でなかった場合はすぐに訂正報道を出す」と話す。

 こんなマッチポンプ的報道しか解決策はないのだろうか? SNS上の噂の真偽を判定する新しい形の報道機関が解決策になりうる。2010年に設立された「ストーリーフル(storyful)」(写真)というSNSを基盤とする通信社では、SNS上に氾濫する様々な写真や映像を発掘し、その真偽を判定する。元記者や様々な分野の専門家で構成される専属記者が確認作業を行い、事実なら「通過(cleared)」、事実確認ができなければ「保留(pending)」と表示する。原作者を探し出し、著作権問題も解決する。事実関係が確認されたものを『ニューヨークタイムズ』、『ワシントンポスト』、『BBC』などに売って収益を上げる。メディア王のルパート・マードックが経営する世界最大のメディアグループ「ニュースコープ」は、ストーリーフルを昨年2500万ドルで買収した。

 専門家もこうした形のメディアが事実確認というマスコミ本来の役割を果たすことになるとみている。韓国言論振興財団のキム・ヨンジュ研究員は、「ストーリーフルのような事実確認を専門に行うメディアで選ばれた情報に基づいて報道するメディアの信頼性は上がるだろう」と話す。これはニュース作りの分業化でもある。キム・グァンジェ漢陽(ハニャン)サイバー大学教授(メディア経済学)は、「(ストーリーフルは)記事の発掘・作成・配布を一組織で担ってきた報道機関のニュースの作り方を壊してしまうかもしれない。経費節約の効果もあり、小規模なメディアは注意深く見守らなければならない」と指摘した。

イ・ジョングク記者 jglee@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/media/647413.html 韓国語原文入力:2014/07/17 20:51
訳J.S(2391字)

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