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韓国地下鉄 電動車の耐久年限、結局廃止…市民は毎日セウォル号に乗っている

登録:2014-07-01 16:33 修正:2014-07-02 06:25
収益性・コスト削減を掲げ規制緩和の嵐、大型惨事の「種」
去る5月2日午後、ソウル城東区の地下鉄2号線上往十里駅に停車していた電動車に後続の電動車が追突する事故が発生し、関係者が現場の復旧作業をしている。ニューシス

電動車の耐久年限、結局廃止
整備周期まで延長して人員削減
外注委託・非正規職で埋める
エレベーター・エスカレーターも同じ
市民は毎日セウォル号に乗っている

環境・医療・教育・労働部門も規制緩和
社会全般に安全事故の危険が万延している

(訳注:安全事故とは、安全管理を疎かにして起きた事故のこと)

 去る5月2日午後3時30分。ソウル城東区(ソンドング)の地下鉄2号線上往十里(サンワンシムニ)駅に入ってきた電動車が駅舎内に停車していた別の電動車に衝突した。(写真) 事故の衝撃で一部の客車は前後の車両から分離され、車両の縁全体が潰れたりもした。電車には1000人あまりが乗っていて、そのうち249人が負傷した。

 セウォル号惨事直後、全国民が悲しみと怒りに包まれていた状況で発生した事故だった。この事故の直接的な原因は「信号の不具合」と判明した。しかしもっと大きな問題が潜んでいる。現在ソウルメトロが保有する車両のうち、16年以上経過した老朽車両が60%以上だ。 21年以上は41%だ。このような車両老朽化の原因の一つが、列車の耐久年限廃止だ。政府は当初列車の耐久年限を15年と定めた。1996年に都市鉄道法が改正されて25年に延長され、2009年の都市鉄道法改正の際さらに40年に延長した。そして今年3月から施行された改正都市鉄道法では、耐久年限関連規定自体を削除した。事実上、無期限使用ができるようにしたわけだ。

 

さらに深刻な問題は、列車の整備周期まで延長したという点だ。列車の日常検査のような軽整備は2ヶ月から3カ月に、重整備の周期は4年から6年に延びた。老朽化車両が増加し耐久期限まで廃止したならば、整備回数を増やさなければならない筈だが、それとは正反対に延長されたわけだ。整備周期を延長したのに合わせて整備人員も削減した。乗務部門の場合、すでに国内で運行中の地下鉄はほとんどが1人乗務になっている。地下鉄だけでなく、鉄道も同じ状況になろうとしている。韓国鉄道公社(KORAIL)は去る4月から、中央線清涼里(チョンニャンニ)~堤川(チェチョン)区間に機関士1人が搭乗する1人乗務制を実施している。公共機関の人員削減に伴い、外注委託の範囲が拡大され、非正規職が既存の業務を代替している。 <公共交通ネットワーク>のナ・サンユン政策委員は「セウォル号の船員の大半が使命感や職業倫理を強制しにくい非正規職だったという点で、地下鉄とそっくりだ」として、「経営の基準を収益性とコスト削減に置く中で、安全を守ることがますます難しくなっている」と述べた。

 歴代政府が公共部門改革案を実行するたびに、国民の安全のための費用は削減された。自然な成り行きで、安全のための規制も緩和または廃止された。特に、朴槿恵(朴槿恵(パク・クネ))政府の規制緩和は、安全分野だけでなく環境、医療、教育、労働など全方位的に展開されている。都市ガスもその一つだ。2002年以降全国的に都市ガス網が普及し、LNG複合火力が増えた。産業用天然ガスの需要が増加するとともに、管理所の数が増え、主配管網も大幅に延長された。しかし、それに比例した人員拡充はほとんど行われていない。IMF危機によって大規模なリストラが行われる前の1997年と比較して2012年現在は、供給設備はほとんど3倍に増えているが人員増加率は10%にも及ばない。エレベーターやエスカレーター等の昇降機部門も同じ状況だ。経営評価の強化、検査機関間の競争、定員統制による非正規職の増加などが、昇降機検査の不良問題につながっている。公共運輸労組の韓国昇降機安全管理院支部によると、競争体制導入以前である1993年から1996年までの不合格率は平均4.8%だったが、最近4年間は0.4%に過ぎない。イ・ソクチュン支部長は「競争体制で、昇降機検査の申請者はより容易に合格できる検査機関を選択したり、検査基準に満たない現場でも合格に仕向けるケースがある」として「法で強制している安全検査を競争させれば、検査機関間のシェア競争が甘い検査を誘発せざるを得ない」と説明した。

ウォン・ナギョン ハンギョレ経済研究所首席研究員 yanni@hani.co.kr

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【寄稿】
日本の競争体制 ガス産業を見てみたら
日本は都市ガス・電気料金が韓国の3倍
競争よる価格の效果はない…

ソン・ユナ社会公共研究院研究委員

 

 現在ガス市場は、公企業である韓国ガス公社が導入・卸売を担当し、小売は全国30余りの地域独占民間企業が運営している。韓国政府はガス産業の直輸入規制緩和を推進し、「競争の誘発により、導入コストの削減が可能で、ガス公社による独占の非効率が改善される」と主張している。しかし、今年4月に訪問した日本は韓国政府の予想とは全く違っていた。

 完全競争市場である日本の天然ガス導入価格は韓国より高い。競争効果で都市ガスと電気料金が下がるだろうという韓国政府の主張とは違い、日本の都市ガスと電気料金は韓国より3倍ほど高い。地域間偏差、すなわち大都市と農漁村の料金格差は最大3.7倍にもなっているというのが、日本経済産業省の担当者の話だ。

 大阪の消費者団体は、地域内天然ガス家庭用消費の100%が炊事用だが、月の平均料金が7千円だと話した。炊事用だけで月に8万ウォンを払っているわけだ。日本を訪問する前には、冬が韓国より暖かくオンドルではない畳部屋なので、日本の家庭用消費は少ないだろうと漠然と考えていた。

 しかし、日本の庶民が暖房燃料にガスを使用しない理由は、家屋構造や天候のためではなく、高いガスをあえて暖房用燃料としては使えないというのが主な理由だった。東京と大阪の一部富裕層の居住地域、最近できた高級住宅地域だけがガス暖房を使用していた。日本の大多数の家庭は灯油ストーブ、電気毛布、ガスヒーターなどを混用して、最も料金を安く済ませることに戦々恐々としていた。

 韓国の都市ガス普及率は2012年末基準で76.5%だ。韓国も小売都市ガスは民間企業であるため、人口が少ない小都市と農漁村での普及拡大が停滞している。ところで韓国政府がモデルとしている日本には、209もの一般ガス事業者、1452もの簡易ガス事業者、2万1052ものLPガス販売事業者がいる。

しかし、競争による価格効果は表れていない。基本的なエネルギー供給網に対する政府の監督・管理は存在しなかった。

日本政府の担当者は普及率さえまともに把握できておらず、普及の拡大を勧告できるだけで、いかなる権限もないと訴えた。

 日本の家庭用天然ガスの割合は8.7%で、韓国(30%)に比べてはるかに低い。日本は総量基準では、韓国の2倍以上の天然ガスを輸入している国だ。筆者が会った日本政府関係者は「韓国のガス公社のような公的独占体制の効率性が羨ましい。私たちには規制する力もなく、規制する役割も果たせない」と述べた。

ソン・ユナ社会公共研究院研究委員

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/644921.html 韓国語原文入力:2014/0/01 10:38
訳A.K(3181字)

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