初めての裁判で怒り炸裂
裁判長、家族に陳述機会を与える
初めての対面だった。 セウォル号船員15人に対する初めての裁判が開かれた10日午後2時30分、光州(クァンジュ)地方裁判所201号刑事法廷の傍聴席に座っていたユ・ビョンファ(40)氏は震える心をようやく静めた。 殺人罪などで拘束起訴されたイ・ジュンソク(69)セウォル号船長など被告人15人が法廷に入って来た瞬間、娘の顔を思い浮かべた。 ユ氏の娘イ・ギョンジュ(17・檀園高2)さんはセウォル号沈没事故が起きた4月16日午前10時16分頃「水が上がってきた」という最後のメッセージを送った。 事故が起きて8日目に娘さんは遺体で発見された。 「そんなことがあったということが未だに信じられず、否定したい気持ちばかりが先に立つ。 彼らを実際に見た途端に怒りが込み上げて来た。」セウォル号犠牲者遺族90人余りが光州地方裁判所刑事11部(裁判長イム・ジョンヨプ)審理で開かれたセウォル号船員に対する初めての裁判を主法廷と補助法廷で見守った。 イ船長らを初めて近くで見た遺族たちは、怒りをそっくり表わした。 「オイ,この殺人者…。 自分の子供ならそのようにすることができるのか?」という抗議が涙とともにあふれた。 イム・ジョンヨプ裁判長は「家族の方々の心情は理解するが、大声でののしれば裁判を進行できない。 私にも高校生の子供がいる。 実体的真実糾明のために協力してほしい」と説得して家族代表に陳述の機会を与えた。
「時間が経てば傷が癒えるというが、時間が停止したままのようだ。 今私たちのそばにいない子供たちが、まだ現実と思えない。」セウォル号事故犠牲者・失踪者・生存者家族対策委員会キム・ビョングォン(50)委員長は「この頃も制服を着て学校から帰ってくる子供たちを見れば、私達の子供たちがすぐにでも‘母さん、父さん、帰ってきたよ。 ご飯ちょうだい’と言ってカバンを下ろすように思える」と話した。 法廷のあちこちからすすり泣きが聞こえた。 キム委員長は「(船員が)逃げた瞬間に一度でも案内をちゃんとしていれば、私達の子供たちは生きることができた」として「理由も分からないまま海中で苦しんだ子供たちに、少なくとも誰が間違ったのかを教えなければならない」と訴えた。
検察の起訴趣旨説明が続いた。 検察は「イ船長らは船内待機放送だけをして、警備艇が来るのを待って一番最初に脱出した」として「放送を信じて待っていた私たちの子供たちに返ってきたのは冷たい海中」と明らかにした。
「精一杯に浮き立った気持ちで済州島(チェジュド)の風景を胸に描いていた子供たちは、生死の岐路に置かれた。 ‘私の何が罪なのか。 私は別に悪いこともしていないのに…’子供たちは‘母さん 父さん、愛してます’という一言を残してセウォル号と海中に閉じ込められてしまった。」検事の声が震えた。
遺族たちはハンカチで涙を拭いた。 被告人の内1人だけが涙をふいた。 弁護人は「救護措置が不十分で、先に救助されたことは認める。 だが、殺人や逃走の意思はなかった。 イ船長は退船前に救助措置を行ったし、一部の船員は救命ボートの展開を試みた」として、検察の公訴事実を否認した。
裁判が終わった後、ある遺族は「船員に直接対面して彼らの弁解を聞くことはとても苦痛だ。 拷問のように感じられる。 次の裁判には来たくない」として胸を打った。 遺族たちは‘子供たちの魂が見ている’等の句が書かれた手立て札を持って、しばらく被告人護送車の前に座り込みもした。 次の裁判は17日午前10時に開かれる。 光州/チョン・デハ記者、キム・イルウ、キム・ギソン、ソ・ヨンジ記者 daeha@hani.co.kr