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[なぜならば] 朝鮮半島の平和統一実現のための日本の過去清算と植民地主義克服を/キム・ウギ

登録:2014-04-07 20:03 修正:2014-04-08 09:31
キル・ウォンオク おばあさん

 

カメラのシャッターを押しながら涙が止まらなかったのは、初めてだった。次のシャッターは手が震えて押せなかった。その場にいた者すべてが、一人の女性の姿、声、息づかいに神経を集中させていたように思う。会場が「しんと静まり返る」とはこのことか、と思った。その女性は、薄いピンクに深い紫色のチョゴリをまとい、演壇の前に小さく立ち、柔らかいウリマルでゆっくりと話した。

「私がこれから話すことはあまりにも悲惨で、みなさん聞くのもつらいことでしょう。しかし、戦争を二度としてはならないということをみなさんに伝えたくて、どうにかここに来ました」

そう言って、吉元玉ハルモニは証言を始めた。今は北側の地である慈江道に生まれ、13歳のときに仕事に就けると騙されてハルビンに連行された後、「慰安婦」として軍人の相手をさせられ、ひどい性病にかかり子どもを産めない体になった。誰もが出来ることをひとつも出来ないまま、自分の過去が知られるのではないかと、息を殺して生きてきた…話し始めてそう長い時間が経たないうちに、ハルモニは疲労を滲ませ、駆け寄った南の支援者に支えられながら話し、証言を終えた。

私はこれまでも日本の市民集会で吉元玉ハルモニの証言を聞いたことがあり、他の被害女性たちの証言を聞く機会にも何度か恵まれてきた。しかし、これまでの集会の雰囲気とは違う、何とも言い表せない今回のような会場の空気は初めて感じた。北・南・日本・中国在住の朝鮮女性たちが一同に会した場で、同じ朝鮮女性が日本軍「慰安婦」とされた被害を聞くという出来事がつくりだしたあの空気は何だったのかと、今も考えている。「どうして、どうして朝鮮女性がこのような目に遭わなければならなかったのか?」涙の落ちる音さえ聞こえそうな静かな会場で、あの場にいた者すべてが、心の声でそう語っているように思えた。

2000年6.15共同宣言が発表された後、在日同胞も南を訪問する機会が格段に増え、当時高校生だった私の世代は在日同胞社会で「6.15世代」と呼ばれた。2007年の10.4共同宣言も経て、統一が本当に近づいていると誰もが実感していたと思う。しかし、2008年李明博政権以降、北南関係は急速に悪化し、在日同胞社会でも「6.15世代」という言葉は昨今ほとんど聞かれなくなった。

在日同胞に関して言えば、南側政府の「旅行証明書」発給不許可措置によって朝鮮籍者が南へ行くことはほとんど困難になり、韓国籍者の中でも一部の同胞が韓国旅券の有効期限制限などにより南へ行く自由が不当に制限される状況が続いている(私もそのうちの一人である)。

日本では、北側についての偏向した報道が出るたび、朝鮮学校に通う子どもたちが攻撃対象とされ、チマチョゴリを切られたり、殴られたり、「日本から出て行け」などの暴言を吐かれたりしてきた。私自身、中学生時代にチマチョゴリで通学中、日本人と思しき女性に憎悪の視線を向けられた記憶が今も強く残っている。2002年の朝日首脳会談で拉致問題が公になったときは、朝鮮学校学生への暴言・暴行事件が急激に頻発し、朝鮮学校の女子生徒たちはもう通学路でチマチョゴリを着られなくなってしまった。

日本政府はこうした事件の実態調査すら行わず、2003年には朝鮮学校卒業生のみ大学入学資格の一律認定から除外し、2010年から始まった「高等学校等授業料無償化」制度からは、対象となる外国人学校のうち朝鮮学校のみを排除したまま今日に至っている。「在特会」等の朝鮮人差別主義者たちが朝鮮学校に襲撃し子どもたちや保護者、先生らにはかり知れないほど甚大な被害を与えたり、「朝鮮人首吊レ毒飲メ飛ビ降リロ」などのヘイトスピーチを平気で振りまいたりすることが可能なのは、日本政府による朝鮮人差別が公然と行われているからである。

日本軍「慰安婦」問題についても「強制連行を示す証拠はなかった」「『慰安婦』制度は必要だった」などの日本の国家責任否定論が公的に噴出している状況の中で、日本軍「慰安婦」問題について研究し、在日同胞の権利と生活を守る活動家として、私はどこを見ても明るい未来が描けず、今後日本でどのように生きていけばいいのかという思いを日ごと強くしていた。

しかし今回の討論会に参加して、会うこと自体が奇跡的な北・南・中国在住の同胞女性と出会い、どんなに厳しい情勢の中でも各地で同じ思いを持って活動している仲間がいることに、心から力を得た。日本の侵略と植民地支配、分断により世界各地に散り散りになっている私たちの民族。今回の討論会を通じて、日本軍「慰安婦」問題の解決をはじめとする日本の過去清算、在日同胞に対する絶え間ない差別に代表される日本の植民地主義の克服こそがすなわち、朝鮮半島の平和統一への重要なプロセスなのだということを肌で実感した。

「統一したら故郷に住めるだろうと、統一の日を待ちながら生きています」と語った吉ハルモニの言葉を胸に、今後も日本軍「慰安婦」問題の解決や在日同胞の権利・生活擁護のための活動・研究を通じ、真の「6.15世代」として、統一へ向かう未来をつくっていきたい。

金優綺(キム・ウギ)「日本軍性奴隷問題解決のための北南海外女性討論会」海外側代表団成員、在日本朝鮮人人権協会事務局員)

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/631603.html 韓国語原文入力:2014/04/07 19:03
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/631603.html

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