‘脱北華僑出身ソウル市公務員スパイ事件’で証拠偽造疑惑を受けている中国公文書の入手および伝達過程に関与した国家情報院協力者キム・某(61)氏が自殺を試みたことにより、国家情報院がキム氏に公文書偽造を指示したか、あるいは少なくとも後から偽造の事実を知っていながら検察に提出した可能性が一層高まった。 さらにキム氏が自殺を試みたモーテルの部屋に血で‘国情院’という文字が記されていたことが明らかになり、国家情報院が自身に文書偽造を指示したり、文書偽造の責任を着せようとしたことにともなう恨みを表現しようとしたのではないかとの観測も出ている。
6日、検察関係者の話を総合すれば、キム氏は脱北者であり国籍は中国だ。 色々な職業を持っていて、韓国と中国をしばしば往来していたと言う。 青島朝鮮族企業協会顧問の肩書も持っている。 キム氏の身分と行跡を見る時、国家情報院としては利用価値が高い人物にならざるをえない。 中国国籍なので北韓へも行き来できる。 キム氏が韓国と中国をしばしば行き来していたことに照らして、国家情報院と密接な関係を結び、様々な役割を果たしていたと推定される。
キム氏は国家情報院・検察が裁判所に証拠として提出した文書3つの内、中国三合辺境検査廠(税関)が発行した文書を入手・伝達する過程に介入したと言う。 先月28日、最高検察庁デジタル捜査センター(DFC)が‘印鑑が異なる’という鑑定結果を出したまさにその文書だ。 この文書が偽造された可能性が一層高まった状態で、この文書の入手・伝達に関与したキム氏の自殺試図が起きたわけだ。
キム氏が自殺を試みた理由は具体的に明らかにはなっていないが、自殺試図だけで国家情報院・検察が提出した文書が偽造されたものだという点は事実上明らかになった。 キム氏は文書鑑定結果が出た日から3回にわたり検察の調査を受けたが、正常な経路で文書を入手し国家情報院側に伝達したとすれば、彼が自殺という極端な選択をする理由がないためだ。
今後糾明されなければならない点は‘文書偽造の主体’が誰かということだ。 国家情報院がキム氏に直接文書の偽造を要請・指示したのか、あるいは国家情報院からは単純に文書入手の指示を受けたキム氏が自ら偽造して国家情報院に渡したのか、2つの可能性に絞られる。 しかし、キム氏の‘単独犯行’というよりは、何らかの方法で国家情報院が介入したという分析が多い。 国家情報院・検察が出した文書は中国瀋陽駐在総領事館に派遣された国家情報院職員イ・インチョル領事が翻訳したとして領事証明書の発給を受けたし、文書伝達過程に第3の国家情報院職員も関与しているという点でキム氏一人で事を行ったとは見られないためだ。
国家情報院がキム氏に責任を転嫁しようとした情況を推定できる内容もある。 検察はキム氏に対する初めての調査が国家情報院の協力で行われたと話した。 国家情報院としては、自分たちに不利な人物の場合にはあえて検察に協力する必要がないのに、速やかに検察調査に応じさせたのだ。 検察関係者は‘キム氏に対する3度の調査過程で陳述が変わった点があるか’という質問に「確認する過程にある」として、キム氏が陳述を変えたということを表わした。
これはキム氏が当初の態度を変えて国家情報院に不利な陳述をしたと読める内容だ。 文書を正常に発給されたと述べることで国家情報院と‘調整’を済ませた後に検察調査に臨んだが、検察が客観的証拠資料を突きつけて追及するやキム氏が国家情報院との‘約束’を破った可能性がある。 キム氏が自殺を試みた極端状況にありながら、血で‘国情院’という文字を残したことにも、国家情報院に対する恨みと無念さが含まれているという見解が多い。
キム・ジョンピル記者 fermata@hani.co.kr