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【個人情報も人権だ<下>】私を露わにする“終身の足かせ”、流出後も変更できない住民番号

登録:2014-02-03 23:09 修正:2014-02-04 07:33
 危険な“万能キー”
世界に類例のない住民監視体系
住民番号に基づく“本人認証制”では
移動通信・クレジット業者をビッグブラザーに育成している

 我が国の住民登録制度が、導入半世紀にして新しい“転換点”を迎えている。1962年に朴正煕(パク・チョンヒ)議長の率いる国家再建最高会議で住民登録法を作って52年目だ。朴槿恵(パク・クネ)大統領が27日「住民登録番号の代わりに個人を識別できる代案がないか検討せよ」と発言したことが契機となった。 史上最大の1億件以上の個人情報流出事故の対応策次元から出た言葉だ。

 昨年安全行政部が「住民登録番号の保護総合対策」を発表するなど個人情報流出に対する政府の対策が出されたことはあるが、大統領自らが乗り出して、住民登録番号自体の問題点を指摘したのは初めてだ。

 この10年間、大規模な個人情報流出事態が繰り返されて、住民登録番号制度に対する信頼は地に落ちた。会社員チョン某(29)氏のような荒唐無稽な経験をした人が少なくない。 チョン氏は何年か前に、あるメッセンジャーに新しく加入しようとしたところ、誰かがすでに自分の住民番号で加入していた。 「IDとパスワードを入手しログインしてみると、知らない人が言葉をかけてきました。誰かが私を詐称して、メッセンジャーで他の人達と交流していたということです。」

 チョン氏は「背筋の寒くなるような思い」でメッセンジャーから脱退したが、それ以来、誰かが自分の知らないところで住民番号を盗用しているかもしれないという不安感にさいなまされている。“泣き面に蜂”で、チョン氏は、今回のカード会社個人情報流出事態でも被害者になった。 「私の住民番号が既にどこかに流出しているならば、カード情報と括られて、さらに大きな被害を被ることもありそうで不安です。住民番号を変えることもできないのに、どうしたらいいんでしょう?」 チョン氏のほかにも多くの被害者が「クレジットカードは抹消するか再発給を受ければ良いとしても、露出した住民番号はどうすればいいのか」と訴えている。

 公共・民間分野を問わず無差別的に収集された住民番号は、生体情報と変わらない。住民番号さえあれば、遺伝子や指紋のように個人のすべてを把握することができる。情報専門家が「住民番号の廃止といった根本的対策が出されない限り、情報人権侵害は続くだろう」と見る理由だ。

 特に政府が住民番号の代替手段として奨励してきた“アイピン”や“携帯電話による本人認証制”に代案を求めてはならないという指摘が多い。政府が2006年に導入したアイピンは、住民番号の収集を前提としている。アイピンの発行会社である“本人確認機関”を媒介するという違いしか無い。携帯電話の本人認証制もまた、通信会社の住民番号収集を土台としている。

 情報人権運動団体である<進歩ネットワークセンター>のチャン・ヨギョン政策活動家は「政府が住民番号制には手をつけず、民間信用情報会社・移動通信会社の住民番号収集・蓄積を許容しているのは責任放棄だ。これらの企業が住民番号収集で他の利潤を創出することも可能だ。国家が自ら“ビッグブラザー”を育てることになる」と批判した。進歩ネットワークセンターは28日、声明を出して「アイピン・携帯電話を利用しようという政府の従来の代案は、既に全世界に撒かれた住民番号の問題を治癒するのではなく、対症療法に過ぎない」と批判した。

「行政上の便宜のために人間に番号」・・・住民登録制を無くすことが正解

“不純な出発” 朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が1968年11月21日、発給された第1号住民登録証を覗きこんでいる。朴元大統領夫妻は1、2号の住民番号受給者であり、それぞれ住民番号が110101-100001、110101-200002と公開された。当時は今と違って、12桁の住民番号が用いられていた。報道写真年鑑

導入時から尊厳性毀損の批判
盗用の事実を知ってもお手上げ
「せめて変更できるようにしてほしい」
流出被害者の訴訟 相次ぎ敗訴
憲法裁判所「情報の自己決定権制限」
学界でも「廃止」の声高い

 問題の根本原因は我が国の住民登録制度そのものから見つけるべきだという声が高い。我が国の住民登録制度は世界に類を見ないほど強力な住民監視体系だ。市民社会や学界では長いこと、住民登録制度に国民の基本権侵害の素地があると一貫して指摘してきた。

 市民団体<共に歩む市民行動>のキム・ヨンホン情報人権局長は「年令・登録地域・性別など個人情報を本人の意思と無関係に含む住民登録番号制度自体に、情報人権侵害の要素がある。 他の国では、個人識別のために解釈価値のない無意味な番号を用いている」と述べた。この団体は国内にインターネット使用が日常化された1990年代から、住民登録番号制の問題点を指摘してきた。

 ハン・サンヒ建国(コングク)大学法学専門大学院教授も「住民番号制度は終身単一性(一生に一つだけ持ち)、不変性(絶対に変更できず)、一身性(一人に一つの番号が付与され)、統一性(全国にわたって単一の基準で生産・配分され)、汎用性(ほぼすべての事に使用される)などの特性を持った個人情報管理手段として位置づけられた。 この制度がある限り、個人情報の自己決定権をいくら唱えても意味がない」と述べた。

 強力な監視制度である住民番号制は、朴正熙大統領時代の1968年「住民登録法施行令」で導入された。その年の1月にキム・シンジョ大統領府襲撃事件、プエブロ号事件が発生した。また人革党事件・東ベルリン事件・民族主義比較研究会事件と韓日国交正常化に対する反発世論などで、朴正熙政権はより強力な国民監視と統制を望んでいた。今のように生年月日を含めた13桁数字を使い始めたのは、維新直後の1973年からだ。

 住民番号制導入当時にも「人間に番号をつけて人間としての尊厳を損ねる」、「個人を国家行政の便宜のための道具として犠牲にする」といった批判が提起された。詩人パク・モグォルは住民登録法改正論議が進められていた1965年12月、ある新聞に「スパイの浸透を防ぐためということのようだが、それが市民と国民の心理的な面を暗くするのは明らかだということだけは言えよう」という文を書いた。

 憲法裁判所傘下の憲法裁判研究院も昨年「住民登録番号制についての憲法的争点」という研究報告書で、「我が国の住民番号は被害の最小性と法益の均衡性において過度に個人の人格権と個人情報の自己決定権を制限しており、基本権の侵害につながるものと評価される」と指摘した。 2011年のポータルサイト ネイトなどの大規模な個人情報流出事故以後、住民番号を変えてほしいという行政苦情・訴訟が相次いだが全て拒否されており、関連憲法訴願は審理が進行中だ。

 <進歩ネットワークセンター> <共に歩む市民行動> <経済正義実践市民連合>などの市民団体は集団行動に乗り出した。これらの団体では28日から住民番号の変更を要求する市民誓願人団を募集して、29日から各行政機関に苦情を申し入れる計画だ。

 さらに、根本的には住民番号制度を廃止しなければならないという声が高い。ハン・サンヒ教授は「短期的には行政の混乱を防ぐために番号変更許容などの方式で改善しなければならないだろうが、長期的には廃止が正解だ。そうすれば国民に対しては個人情報の大切さを浮き彫りにするきっかけを作り、国・企業に対しては個人情報保護のための各種監視体系を導入するよう強制できるきっかけを確保できるようになるだろう」と述べた。チャン・ヨギョン活動家も「個人情報流出が累積された結果、被害が子々孫々までつながる危険をも考慮しなければならない状況だ。究極的には国家が市民に番号を付与することはできないということを原則として、個人識別に対する強迫を振り切らなくてはならないだろう」と述べた。

イ・ジェウク、キム・ヒョシル記者 uk@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/621903.html 韓国語原文入力:2014/01/29 10:25
訳A.K(3446字)

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