去る2月中旬、チェ・ドンウク(54)当時ソウル高検長は検察総長候補推薦委員会が推薦した3人の検察総長候補者に上がった後、こういう話をした。 「今最も熱い事件は警察が捜査している国家情報院コメント事件だ。 今後検察に渡されるはずだが、どのようにするのか…。 国家情報院が直接乗り出した事件であり、検察が捜査をしてみるならば現政権のlegitimacy(正統性)に触ることになりうる。 本当に頭の痛いことだ。 そのように考えればあの町内(最高検察庁)に行くことも嫌だ。"
国家情報院事件が抱いている‘爆発性’をあらかじめ感知していたわけだ。 それでも彼は去る4月、検察総長候補者人事聴聞会で "タスクフォースを構成する方案などを検討して徹底的に捜査する" と話した。 検察総長任命後、特捜通のユン・ソギョル(53)驪州(ヨジュ)支庁長をソウル中央地検特別捜査チーム長に任命し、国家情報院の大統領選挙世論操作および政治介入疑惑事件を捜査させた。
チェ前総長の予感は当たった。 現政権の正統性に触れる捜査は‘不穏’だった。 4月に検察が特別捜査チームを設け捜査に入って7ヶ月後に、捜査チームはもちろん捜査指揮ラインの大部分が中途下車したり懲戒を受けた。 最初の犠牲者はチェ前総長自身だった。 総長任命6ヶ月目で‘婚外子’疑惑で落馬した。 ウォン・セフン(62)前国家情報院長らに公職選挙法違反疑惑を適用し、憎まれたまま前総長を政権次元で‘追い出した’という評価が支配的だ。
最高検察庁監察本部(本部長イ・ジュノ)は11日、ユン・ソギョル驪州(ヨジュ)支庁長と特別捜査チーム副チーム長であるパク・ヒョンチョル(45)ソウル中央地検公共刑事捜査部長に対する懲戒を法務部に請求した。 イ・ジュノ監察本部長は「最高検察庁監察委員会でユン支庁長とパク部長検事に対しては(選挙介入ツイッター文作成疑惑を受けている国家情報院職員に対する)逮捕令状および押収捜索令状請求、起訴状変更申請過程での指示不履行などの被疑嫌疑が認められると見て、ユン支庁長には停職、パク部長検事には減給の懲戒を請求することが妥当だと多数意見で勧告した」と発表した。 ツイッター文を利用した大統領選挙介入情況を捕捉した捜査チームが、上部の指示に従わなずに強制捜査に乗り出した責任を問うたわけだ。
強制捜査をするという捜査チームを阻んだチョ・ヨンゴン(55)ソウル中央地検長に対しては 「不当指示など被疑嫌疑が認められなかった」として無嫌疑で終結した。 だが、チョ地検長もこの日、監察結果の発表後 「後輩検事たちが懲戒処分を受ける状況で理由の如何にかかわらずこれ以上、席に未練がましく残っていられないので、この事件指揮と組織規律に関するすべての責任を自ら抱いて検察を去ろうと考える」として辞意を明らかにした。
国家情報院事件捜査を指揮した検察総長とソウル中央地検長は法服を脱ぎ、一線で直接疑惑を暴いた捜査チーム長と副チーム長は懲戒を受ける境遇に置かれた。 問題はこのような状況が、これら個人だけでなく検察組織次元の傷として深く残りうるという点だ。 入庁10余年目のある検事は 「結局政権の正統性に触れて捜査チームと指揮ラインはもちろん検察組織全体がとてつもない犠牲を払った。 国家情報院事件は人事権を握っている権力の力がどんなものかを見せた。 数年後には私に迫ることでもありうる。 本当に重苦しい」と話した。
国家情報院事件捜査・指揮ラインのうち、辞退と懲戒の後暴風を避けた人は、イ・ジンハン(50)ソウル中央地検2次長のみだ。 イ次長はウォン・セフン前国家情報院長を選挙法違反疑惑で起訴すれば裁判で無罪が出てくると主張して特別捜査チームと衝突を起こしてきた。 ファン・サンチョル記者 rosebud@hani.co.kr