“外庁”統計庁、企画財政部に従属
国家統計委員長も企画財政部長官
全斗煥政権時に農民被害呼んだ
稲生産量統計操作等
政権の意向により歪曲・脱落
「統計庁 独立的人事システムを」
「農水産統計は安保や経済的次元からも正確を期するべきで、虚偽報告の旧習を捨てなければならない。 功名心を押し立てて過大報告したり予想生産量を定めておいて統計をこれに合わせる矛盾は根絶されなければならない。」
チョン・ドゥファン(全斗煥)前大統領が1981年5月27日、京畿道(キョンギド)金浦郡(キンポグン)高村面(コチョンミョン)で田植えをしながら行なったという訓示だ。 当時政府内の操作・歪曲・不良統計がどれほど広範囲に生産されたかを示すエピソードだ。
こう発言した当のチョン・ドゥファン自身も、統計操作の誘惑に陥っていた。 農林水産部は1980年9月20日稲生産量推計を農村振興院の報告(3300万石)、市道の報告 (3300万石)、学界推定(3200万石)より大幅に低い2740万石とした。 当時チョン・ドゥファン政権はこのように“縮小歪曲”された稲作状況不振を根拠に、その年米国などから米1500万石を購入すると約束する。 以後我が国の米在庫量は年1000万石を前後した。 当然にコメの買い上げ量が大幅に減り、何の過ちもない農民が大きい被害をこうむることになった。 軍事クーデターで執権した後5・18光州(クァンジュ)抗争を体験するなど基盤が脆弱なチョン・ドゥファン政権が、米国などのコメ輸入要求を拒否できなくて、統計を操作したという疑惑が強く提起された。
1990年代以前まで政権の口に合うように統計が“マッサージ”されるケースはたくさんあった。 統計に対する権力の誘惑は統計庁が1990年、独立した部署として分離されて多少改善されはした。 それ以前は統計庁は1961年から経済政策を総括する経済企画院の一介の局である調査統計局として存在した。 統計の生産と解釈が政府の経済政策方向に大きく左右されざるを得ない構造であった。
国連(UN)の「統計の基本原則」は「統計はもっぱら統計的観点のみで作成し発表しなければならず、政治的解釈が介入してはならない」と規定しているけれども、それ以後もわが政府の統計操作と干渉の疑惑は、忘れられる頃になると決まってまた顔を出すのだった。 特に輸出に依存する経済的特性上、貿易収支が政権の主要な成果指標であり、これを黒字にしようとする過程に論難が集中した。
過去の政府が統計に直接手を付ける方式だったとすれば、最近では敏感な統計の故意的発表脱落や遅延という方式で権力の意志が貫徹されている。 統計庁関係者は「今は統計を作る過程で全くの操作までするケースはないと見る。 ただし政権に不利な統計は項目を抜いたり生産されても発表しなかったり、発表が遅れるケースが多い」と話した。 昨年大統領選挙を控えてイ・ミョンバク政府が、家計金融福祉調査で産出された“新ジニ係数”が既存の家計動向調査上のジニ係数より悪く出るや発表しなかったのと、玉ネギ生産量や社会調査結果などの発表が遅れたのが代表的だ。
政府統計の生産と解釈の分離も問題だ。 統計庁が毎月消費者物価と雇用動向、産業活動動向など主な経済指標の統計を発表するが、ほとんど同時に企画財政部がこれに対する解釈を出す。 この過程で当該政策の主務部署である企画財政部が関連統計を有利に解釈する形が構造化されるのだ。 企画財政部の前身である財政経済部は、統計庁が生産した物価統計を2001年5月まで直接発表しながら統計の解釈権を最初から“独占”しさえした。 このように統計庁が作った統計を利害関係の大きい政策担当部署が直接発表および解釈をするなかで、大型事故が引起されることもあった。 参与政府時代に統計庁の非正規職統計を労働部が発表する際に、非正規職数9万人増加を37万人減少と間違って発表して労働部長官が対国民謝罪をするということもあった。
企画財政部の“外庁”である統計庁は“外圧”にも脆弱な構造だ。 統計庁関係者は「企画財政部と統計庁は甲乙の関係だ。 同等な関係にならなければ、業務協議をする時も乙は常に一方的に受け入れるほかない構造だ」と話した。 もう一つの問題は、国家統計の最高意志決定機構である国家統計委員会の委員長を企画財政部長官が務めるという事実だ。 高物価が持続した2011年末、消費者物価指数が指数を大幅に低くする方向で改編され、日程も当初予定より前倒しにされて、“姑息な手”という論難をかもしたのもこのような構造だからこそ可能だった。 その上、歴代統計庁長はイ・インシル前庁長を除けば全部企画財政部(過去の経済企画院など含む)出身だった。 統計庁内部で「企画財政部出身が大統領府と企画財政部の意中を統計庁に伝達する主な通路」と言うのもこのためだ。 この他にも統計庁の主な職務に企画財政部人士が下ってくるのが慣行のように固まっている。
<ハンギョレ>が入手した韓国科学技術翰林院の「国家の統計品質向上のための制度的考察」(2010年)は「統計庁が企画財政部の循環的勤務から必ず独立しなければならない。 統計専門家の席に統計経歴のない上部機関の人士が配置されているのが現実であり、これは統計の独立性を危くさせている」と指摘している。 統計庁の委託学術研究であるこの報告書は「統計生産の政策だけでなくすべての統計行政に企画財政部長官の影響力は非常に大きい。 したがって公式統計の独立的監督機能は事実上存在しないと見ることができる」と明らかにした。
統計庁が統計で評価される部署から独立するのは、政治的または政策的中立機関への第一歩といえる。 統計庁の位相を高めようと企画財政部長官が委員長を務めている国家統計委員会も、独立機構として再編されなければならないという指摘が出るのもこのためだ。 さらには先進諸国のように専門性を有する統計機関長を座らせて、任期を十分に保障しなければならないという声も高い。 韓国銀行がその良いモデルと言える。
リュ・イグン、ノ・ヒョンウン記者 ryuyigeun@hani.co.kr
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<外国の事例>
カナダ・オーストラリア、統計庁長任期保障
英国・フランス、閣僚の統制受けず
統計庁は政府の一部署であるが、政府の政策を評価する統計を生産するという独特の地位を有している。 このために多くの国で統計庁の政治的独立性を制度的に保障している。
1997年英国では総選挙を控えて労働党と保守党など三政党が皆「全国の統計サービスの独立性」を選挙公約に掲げた。 翌年英国政府は国家統計の発展のための長期計画に関する“緑書”(Green Paper)を発刊して、公式統計の品質保障と共に統計の蓄積および提供時の政治的干渉排除のための制度的装置を構築した。 以後英国の国家中央統計機関であるONSは独立部署として運営され、責任者以下すべての職員は公務員身分でありながらも閣僚の統制を受けないようにした。
カナダの場合にも統計庁長は次官級で総理によって任用されるが、政治的独立性が保障される。 去る90余年間に9人の庁長が在任する程に、統計庁長の任期も安定的に保障されている。 また、国税庁の所得税情報など各部署が持っている行政統計に対するほとんど無制限の接近権を享受している。 統計先進国であるオーストラリアも7年任期の統計専門家が庁長を務めており、フランスの場合にも専門家が長い在任期間を通じて独立的に業務を遂行する。
これは全て、 統計庁を統計で評価される政府から政治的または政策的に中立機関として作ろうとする趣旨から生まれた制度だ。 これに比べて我が国の統計庁は大統領府と企画財政部の“影響力”に振り回され、中立的独立的業務遂行に対するいかなる制度的裏付けも保障されずにいる。 他の先進国と違い、企画財政部出身が主に庁長として下ってくる中で、専門性も落ちている。
韓国科学技術翰林院は2010年の「国家の統計品質向上のための制度的考察」なる報告書で「中央統計機関の調整権限を始めとする統計関連リーダーシップを円滑に行使するための最も根本的な措置は、統計庁長の独立性保障および専門性確保であろう」と明らかにした。
リュ・イグン記者