6月1日、クィア文化祭が開かれるソウル麻浦区(マポグ)弘益(ホンイク)大学前の<歩いてみたい通り>は摂氏30度近いその日の気温ぐらい熱かった。「ザ・クィア(queer)、私たちがいる」というタイトルの今回の祭りは、性少数者がほかでもない「私たちの隣」にいて共に社会を生きていくパートナーであるという事実を知らせるために企画された。 クィアは「風変わりな」、「格別な」等を意味する英単語だが、かなり前からゲイやレズビアンなど性少数者を代表する用語として使われている。
本行事が始まる前の昼12時から、<歩いてみたい通り>には3百人余りの性少数者をはじめとする市民が狭い行事会場を行き来しながら笑い騒いでにぎやかに楽しんでいた。 青少年、外国人、同性愛カップルとその友人たちは、共に肩を組み腕を組んで催し会場に設けられた30余りのブースを回った。 人々は各ブースで売っているカクテルとビールを手に、しばらくおしゃべりをした。 周辺の50余りの商店には祭りを歓迎する虹色の旗が掲げられていた。催し会場の中では同性愛ダンスチームである<ゲイ時代>がダンスを披露して参加者の力強い拍手を浴びた。
この日午後3時から始まった‘クィア文化祭’開幕行事には、ミュージカル「ドラッククィン」(派手な女装をして多様な公演を繰り広げる男性)を公演しているハ・リス氏など公演チームと性少数者の権利を支持する<開かれた門共同体教会>の公演チームなどが参加して、1000人を優に超える参加者を熱狂させた。
ソウル鍾路区(チョンノグ)大学路(テハンノ)で性少数者の問題を扱ったドラッククィンを公演しているハ氏はこの日舞台に上がって「クィア文化祝祭をもっともっと知らせて、今後より大きな空間で共にしましょう」と言い、ミュージカルの一場面を披露して多くの参加者の歓声を受けた。
去る5月15日に同性結婚を発表した映画監督キム・ジョ・グァンス氏と映画会社レインボーファクトリー代表のキム・スンファン氏も舞台に上がって参加者に挨拶した。 キム・ジョ・グァンス監督は「9月に結婚する予定です。 私たちは祝儀金を集めてLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスセクシュアル(性転換者))センターを作ります。 多くの方に結婚式に来ていただけたらと思います」と話した。
民主党のチン・ソンミ議員とチャン・ハナ議員もこの日舞台に上がった。 チャン議員は「国会で差別禁止法が撤回された。 残念で、恥ずかしい。 差別禁止法が作られるまでさらに頑張ります。 9月には必ずこの法が可決されるようにします」と約束した。
差別禁止法は性的志向、宗教、人種、政治的意見などによる差別を禁止する内容を盛りこんだ法だ。 2013年2月民主党のキム・ハンギル議員、チェ・ウォンシク議員らがこの法を発議するや、同性愛に反対する一部キリスト教団体と保守団体などの反対が強く起こった。 結局民主党は去る4月、この法を自主的に撤回した。
チン議員は「最近同性結婚を宣言される方々が出てきている。 以前と比較すると(性少数者の権利が)少しずつ進展していることを感じる」として「皆さんと共にさらに楽しくこの場を楽しみたい」と話した。
クィア文化祭開幕行事が終わった4時30分から、参加者は<歩いてみたい通り>のオウル広場から弘益(ホンイク)大正門、弘大(ホンデ)大路の方向に“クィアパレード”を行なった。 パレードが始まると参加者は2000人を優に越えた。 彼らは「私たちは堂々としたゲイだ」、「私たちは堂々としたレズビアンだ」、「差別禁止法を制定せよ」等のスローガンを叫んだ。 また、放送車両から流れ出る音楽に合わせ、興に乗って踊りながら街をねり歩いた。
市民は足を止めて彼らの行進を見守った。 友人とともに弘大(ホンデ)に遊びにきたチ・某氏(26・女)は「クィアパレードを直接見るのは今回が初めてだ。 レズビアンやゲイは別世界の人間だと思っていた。 でもこうして直接見るとあの人たちも私たちと別に違わない人間だという気がする。 社会が彼らをそんなにひどく排斥する必要はないと思う」と話した。
シン・某氏(34)は「外国に来たようだ。 映画やドラマで同性愛者をたくさん見たので拒否感はない。 彼らの人権が伸張されるといいと思う」と伝えた。
一部の市民は「他の人に被害を与えてどうするのか」と怒りもした。 しかし多くの市民は、手を振ったり携帯で写真を撮って彼らの行進を楽しんだ。
クィア文化祭に来るようになって3年目だというキム・某(25)氏は「年を重ねるごとに市民の反応が変わっていくのを感じる。 性少数者が自らをさらに多く表わすほど、異性愛者たちも私たちが違う人間ではないということを感じるようだ」と話した。
この日の公式行事は午後6時頃に終った。 公式行事が終った後も、参加者たちはしばらくオウル広場を離れることが出来ずに三々五々集まって話を交わした。
この日の催しに参加したパク・某(17)さんは昨年に次いで二回目の参加だった。 パクさんは昨年一つ上の女性とつきあった。 彼女はパクさんとつきあいながらも、同性愛をする自分自身に対する嫌悪が激しかった。 彼女は一度も自身を表わそうとはしなかった。 結局二人は今年になって別れた。 パクさんは違っていた。 自分の感情とアイデンティティに対して率直であることを望んだ。 そのように率直であっても後ろ指を指されない所がほかでもないクィア文化祭だった。 「昨年このような催しがあるということを初めて知りました。 ここでは他人の目を気にする必要がなくて幸せです」とパクさんは笑って話した。 パクさんも周囲の視線が負担になりはする。しかし「お前たちが幼いからだ」という言葉は耐え難い。 パクさんは「『まだ幼いから何も分からなくて同性愛をしている』というのは間違っていると思います。 それは私が経験したこと、私が考えたことを無視することだから。 そのような視線をなくすために、そのためにでもクィア文化祝祭に参加しています」と語った。
この日催しに参加したキム・スジョン(17)さんも6人の友人と一緒にやってきた。「同性愛をするからといって誰かに被害を与えてはいないでしょう。 大人たちがなぜ反対するのか分かりません」と言った。 キムさんは自身の経験と悩みを無視する大人たちの視線を避けて、友人らと共にこの日祭りに参加した。
外国人もあちこちで目についた。 この5月に英語講師をするために韓国に来たモーセ(29)は性少数者ではない。 だが、ゲイとレズビアンの友人が多い。 「私はゲイではないけれども催しを楽しむために、ゲイ、レズビアンの友人らと共に来ました」と彼は話した。 モーセは米国シカゴに住んでいた。 そこでもクィア祝祭は一年中で最もおもしろい行事の一つだった。「ここには楽しみに来たんです。 そうやって楽しみながら、性少数者である私の友人を支持したいです」とモーセは言った。
催し会場にはキリスト教団体も参加した。 最近キリスト教界では性少数者に対する差別を禁止する「差別禁止法」に反対する立場を次々表明している。 しかしクィア文化祭に参加したクリスチャンたちは、そのような行動が偏狭なものだと批判する。 ロデムナムグヌル教会のエディ(36・ニックネーム)は「同性愛は罪ではありません。 同性愛者に救いの条件がただ一つあるとすれば、それは神様を信じるか信じないかだけです。 他の人と全く同じなのです。 同性愛を止めることが救いの条件だということはあり得ません」と話した。 また「差別禁止法制定に当然賛成します。 一部キリスト教が偏狭な見解で同性愛に反対してはいけないと考えます。 世の中は多様に変わっていきつつあるでしょう。 そのような変化を受け入れないで自分の信仰と考えだけを強要するのは独善でしょう」と付け加えた。
クィア文化祝祭は2000年から始まった。 50人余りで始めた祭りの参加者は14年が過ぎた今、3000人余りに増えた。 祭りの初期にあった後ろ指や罵倒も随分見られなくなった。 去る5月15日にクィア映画会社であるレインボーファクトリーのキム・スンファン代表と国内初の同性結婚を発表したキム・ジョ・グァンス監督は「今年で参加は9回目です。 以前は年配の方が毎回後ろ指を指し、通行人が悪口雑言を浴びせるなど、行事自体に対する非難が多かったんです。でも年を重ねるほどに、クィア文化祭を楽しむ人々が増えています。 周囲の視線も変わっていくのが感じられます」と話した。 また「今後クィア文化祭がさらに開放的に開かれたらいいですね。 そうして、より多くの人が一緒に楽しんで遊ぶことができたらいいと思います」と付け加えた。
チョン・ファンボン記者 bonge@hani.co.kr