高位公職候補者の道徳性を検証する時、必ず出て来る項目が兵役問題だが、故意的兵役忌避有無を判別することは簡単でない。 関連制度が非常に複雑な上に頻繁に変わるので‘このようなケースに該当すれば兵役忌避’と確信できる‘公式’がない。 また、多くの兵役免除理由が健康に関連した問題だが、人のからだは時にはひどく痛みながらも、まもなく何の跡も残さずに良くなるケースもありうる。 そのために数年~数十年前に実際に病んでいたのか、仮病だったのではないかを明確に切り分けることは高度な検証システムがなければ不可能に近い。 実際、不確かな根拠を持って疑惑を提起すれば当事者に大きな傷と羞恥心を与えかねないだけにより一層の慎重さが求められる。
それで高位公職候補者やその子供の軍籍記録などを‘根掘り葉掘り’暴きだしてみる作業は到底気が向く仕事ではない。 それでもこの仕事をせざるを得ない理由は我が社会高位層の‘前歴’のためだ。
李明博政府の初めての国務総理を務めたハン・スンス前総理は、本人が軍服務中に大学を卒業し除隊後1年で大学院まで卒業した。 ハン前総理の息子は兵役特例業者勤務で兵役を代替したが、4年6ヶ月の勤務期間中に休暇と出張で244日も国外に留まりゴルフをしていた。 更にチョン・ウンチャン前総理は‘高齢’(当時31才)を理由に兵役免除を受けた。 キム・ファンシク現総理は視力問題で兵役免除を受けた。 朴槿恵(パク・クネ)政府の初の国務総理候補者に指名され5日後に自主辞退したキム・ヨンジュン大統領職引継ぎ委員長の長男は体重未達で、次男は病気(通風)で兵役免除を受けた。 朴槿恵当選人が8日に再び指名したチョン・ホンウォン総理候補者本人は兵長として軍服務を終えたが、やはり息子は椎間板ヘルニアを理由に兵役免除を受けた。
2008年李明博政府スタート以後、最近まで国務総理を歴任したり候補者に指名された人々とその息子たちは計13人だが、その内6人が兵役免除を受けた。 50%に近い免除率は国務総理選定に‘兵役免除者優待政策’でもなければ出てくるのが難しい数値だ。 これほどであれば、いわゆる我が社会のエリートという人々が明白な不法とまでではないものの、少なくとも兵役忌避のための格別の努力をしたのではと疑うことが合理的だ。 その手段は博学な法的知識かもしれないし、幅広い情報力かもしれない。はたまたびっしり張り巡らせた人脈であるかもしれない。 特に最初の身体検査で現役判定を受けた後、数年間にわたり入隊を先送りして再検査で兵役免除判定を受ける‘典型的パターン’に出あった時にはこのような合理的疑いはより一層深まる。
英国王室のハリー王子は先月23日、4ヶ月間のアフガニスタン派兵任務を終えて英国に帰国した。 攻撃用アパッチ ヘリコプターの操縦士である彼はアフガニスタンで対テロ任務に実際に投入された。 彼は帰国後、マスコミとのインタビューで「作戦中に敵を射殺したことがあるか」という質問に「当然あった。 命を奪われないために命を奪い取る状況だ」と答えた。 英国王室が最前線に派遣されることはよくあることだ。 ハリー王子の祖父であるエジンバラ公は2次世界大戦の時に海軍で、叔父のアンドリュー王子はアルゼンチンとのフォークランド戦争に参戦した。 社会指導層の入隊伝統は米国でも同じだ。 ジョン・ケリー上院議員はベトナム戦に参戦したし、彼の両親も揃って2次大戦で戦った。
英国と米国では兵役は義務ではないため、彼らの行動を‘貴族の義務’(noblesse oblige(指導層が持つ道徳的義務))と呼ぶ。 それだけではないとしても、黙黙と入隊する大多数の国民のように‘国民の義務’でも履行した人々が高位公職候補の位置に立って欲しい。 ‘法的に問題ない’という説明で熱心に合理的疑いを拭おうとすることも、もううんざりではないか。 ユ・シンジェ記者 ohora@hani.co.kr