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5坪余りの安宿暮らし少女の新年の夢 "机のある部屋が欲しい"

登録:2013-01-01 17:29 修正:2013-01-02 16:04

 キム・スジン(仮名・15)さんは登校しに家を出るたびに神経がピリピリする。 友人の目につくかと思っていつも心臓がドキソキする。 旅館の門を出るやいなや走る。 可能な限り早く旅館街を抜け出すために。 「一度は旅館の門を出るときに知っている子が直ぐ前を通りました。 帽子を深くかぶって逃げました。」スジンの家はソウル市九老区(クログ)のある安宿だ。 ここ*(こちら)*小さい部屋でお父さんとともに生きている。

 "貧しいことが恥ずかしくはありません。 ただ、私がこのように暮らしていることが知られれば、友人の両親が私を変に思って一緒に遊べないようにするかと思うと…」年が暮れ行く27日の夜に会ったスジンは語尾を濁した。 すぐにでも涙があふれそうに瞳が赤く変わった。

 スジンは1年前から安宿で暮らしている。 父親キム・某(56)氏の商売がだめになった。 家賃30万ウォンの貸間で暮らすことさえかなわなかった。 父親は貸間の保証金500万ウォンを引き出して借金2500万ウォンの一部を返した。 娘を連れて安宿の部屋に住みかを移した。

 5坪余りの狭苦しい部屋にはベッド一つがかろうじて入った。 机を入れる場所どころか座る場所も足りなかった。 テレビ一つだけをかろうじてテーブルの上に上げた。 部屋のすみに携帯用バーナーを置いて食事を作る。 スジンはこの日の夜もラーメンで食事を間に合わせた。

 洗って寝ることの他にできることのない旅館の部屋にスジンは夜10時に帰ってくる。 学校の授業を終えれば両親が共稼ぎをしている友人の家に行って時間を過ごす。 旅館の部屋に帰ってくればベッドに横になりスケッチブックに絵を描いたりしてすぐに寝る。「ベッドで本を読むのはとても不便です。」液晶画面がこわれた携帯電話を覗きながらスジンが話した。

 母親(39)は父親と別居して9年になる。 事実上の離婚状態だ。 兄(17)は母親と暮らしている。 「お母さんは私と一緒に住もうと言います。 だけど、私までが出て行けばパパが一人で寂しいでしょう。 お父さんを守って上げたいのです。」

 娘を見守る父親の心も真っ黒に焦げるがどうしようもない。「保証金をみな食いつぶして…。 あちこち働き口を探しているのでもうすぐ解決できるでしょう。」父親のキム氏は苦し気にタバコを吸いに部屋から出て行った。 一日2万ウォンの旅館代も150万ウォンも滞っている。 2ヶ月半を越えても旅館代を払う金を稼げないのだ。

 中学校卒業を控えたスジンは人文系高等学校に志願している。 だが、まだ職業に対する明確な目標はない。 ただ漠然とピアノをひきたいという夢を持っている。 「6年の時から塾でピアノを習いました。 お金がなくて中2の時に止めました。 院長先生が塾費を持ってこないと度々催促するので…」 高校生になれば夜間アルバイトでお金を稼いで電子ピアノを買うのがスジンの新年の夢だ。

 いつかはお金をためて父親の借金も返すつもりだ。 家も新しく用意したい。 「2階家がほしいです。 パパの部屋と居間が別々にあって、ピアノの部屋も別々にある…。 勉強部屋には机もあって…」スジンの目が光った。 そばに座っていた父親は何も言わなかった。

 気の毒な事情に接したパク・ウォンスン ソウル市長は先月20日スジンを訪ねて励まして帰った。 福祉から疎外された世帯に直接会ってみるというパク市長の意にともなう訪問だった。 ソウル市はこれら父娘に家族専用の自活施設への入所を案内してあげることにした。 本来は片親家庭だけが入居できるが、まだ法的離婚手続きが終わっていないもののスジンたちも事実上の片親家庭だとソウル市は判断した。

 スジンはそれでも運の良い方だ。 2010年統計庁人口住宅総調査資料によれば、安宿・考試院などに住んでいる住居脆弱階層はソウルだけで17万8000世帯余もあると推測される。 この内、ソウル市が運営している家族専用自活施設に暮らしている人は150人余りに過ぎない。

ホ・ジェヒョン記者 catalunia@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/567812.html 韓国語原文入力:2013/01/01 16:44
訳J.S(1817字)

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