不安定な停戦の中、米国とイランの間で交渉が進められている。劇的な妥協が導き出されるのか、それとも破局的な戦争拡大の泥沼に陥るのかの岐路に立っている。核問題とホルムズ海峡の開放という主要争点が米国の意図通りに片付けられれば、ドナルド・トランプ米大統領は勝利を宣言し、戦争から抜け出すことができるだろう。だが、双方の立場の隔たりがあまりにも大きく、状況を断定的に予測するのは難しい。ただし明らかなのは、戦争後の世界がもはや以前と同じではないということだ。エネルギー安全保障、中東の秩序、大国間の力学関係のすべてが甚大な影響を受けるからだ。
まず、米国が被った内傷はかなり深い。米国は開戦当初から高価な爆弾を投下するなど、数十兆ウォンの戦費を投じたが、戦略的目標の達成は極めて不明だ。反政府デモで揺れていたイラン体制はむしろ強固になり、核問題においてもイランからウラン濃縮権の永久放棄という譲歩を引き出せるかどうかは不透明だ。全世界が注目するホルムズ海峡問題も鍵となる。海峡の戦略的価値に目覚めたイランは、将来もこれを何らかの形で活用する動機が高まっており、世界のエネルギー供給網に不安の火種を残すことになった。仮に自由な通行が可能になったとしても、それは単に戦争前の状態に戻ることに過ぎない。
さらに大きな問題は、米国の規範的リーダーシップへの打撃だ。トランプ政権発足以来、米国のソフトパワーは損なわれ続けており、今や取り返しのつかない段階に入った感がある。米国はもはや秩序の保証者ではなく、撹乱者へと変わってしまった。ホルムズ海峡が封鎖され全世界が苦しんでいるというのに、イランと通航料収入を分け合おうという提案が出るほどだ。これでは米国はもはや「招かれた帝国(Empire by Invitation)」ではなく、「略奪的な覇権国」にすぎないという自省の声が、米国内からもあがっている。
ソフトパワーの弱体化は、単なるイメージにおける打撃にとどまらず、実際に米国の存在感の低下をもたらしている。欧州は「これは我々の戦争ではない」としてトランプ大統領の軍事支援要請を拒否し、さらに米国を排除した上で、戦後のホルムズ海峡の管理策を模索している。中東の海上交通路の安全を担ってきた米第5艦隊を疎外するこうした構想は、米国の海洋覇権に亀裂が生じていることを象徴的に示している。
中東の秩序もまた再編される可能性が高い。戦争の当事者ではないにもかかわらず、甚大な被害を受けた国はアラブ首長国連邦(UAE)をはじめとする湾岸産油国だ。これら諸国は、米国との関係ゆえに国土が損なわれたのはもちろん、金融・観光・物流のハブという国家ビジョンにも深刻な打撃を受けた。戦争決定の過程で、トランプ大統領は湾岸諸国の引き止めを無視してイスラエルの意見に従い、中東駐留米軍の存在理由がイスラエルの保護にあるという不都合な真実が露呈した。急激な「脱米」にはつながらないとしても、これらの国々がより慎重なバランス外交を模索する可能性が高まった。一方、イランの発言権が反映されたホルムズ海峡の通航秩序が構築されれば、イランは中東地域のシーア派の盟主を超えて、世界経済の流れに影響を及ぼし得る地政学的アクターとして浮上する可能性もある。
大国間の力学関係の変化も避けられない。今回の戦争の最大の受益者はロシアだ。世界的なエネルギー供給網の不安定性は、ロシアの地政学的価値を高めている。ロシアとウクライナ戦争以降、中国やインドなどに割引価格で原油を販売していたロシアは、今や条件を提示できる優位な供給者として再浮上する見通しだ。ホルムズ海峡を通過する物量とロシアの供給量を合わせれば、世界のエネルギー市場の約30%が地政学的リスクにさらされることになり、その分ロシアは恩恵を受けることになる。一方、世界最大のエネルギー輸入国である中国にとって、原油価格の上昇は負担となる。しかし、米欧関係の亀裂、米国の孤立は、中国にとって戦略的な好機となるだろう。
今回の米国の作戦名は「壮大な怒り」(Epic Fury)だ。ところが、その怒りの原因は何なのか、誰に向けられたものなのかは分からない。米国は客観的な国力から見て、依然として世界の超大国だ。一方、製造業と中産階級の崩壊、薬物乱用、極度の政治・社会的分断など、内部的にはひどく荒廃している状態だ。こうした分断と傷が指導者の個人的な欠陥と重なり、米国の国益を損ない、多くの国を苦しめている。「傷ついた巨人の自傷的な暴走」が国際秩序を揺るがしている。