河北を平定した曹操は破竹の勢いで南下した。劉備と孫権は連合し、揚子江南岸の赤壁に防衛線を張る。曹操軍は水上戦の経験がなかったため、船酔いで戦闘ができなかった。その時、策士の龐統が曹操を訪ねてきて、連環計を進言した。すべての船を鉄の鎖でつなげば揺れないので、船酔いは解消されるだろうと。火攻めが懸念されたが、時は冬。北西の風が吹いていたため、曹操は安心して船を鎖でつないだ。そして兵士たちの船酔いが収まると、総攻撃を開始する。その時、諸葛亮が壇を築いて祈りをささげると風向きが突如変わり、南東の風が吹く。連合軍は火攻めを浴びせ、数千隻の船がひとつにつながれていたため身動きの取れない曹操の20万の大軍は、全滅してしまう。
三国志のクライマックス、赤壁の戦いだ。グローバル化で一つになった地球村について考えるたびに、連環計が思い浮かぶ。多くの船をひとつにつなげば、ちょっとした波や潮流ではびくともしない。北西の風が吹く平和な時であれば、これ以上ないほど堅固で快適な繁栄の基盤となる。しかし、風向きが変わり火矢で射られると、全員が身動きが取れず生死の岐路に立たされる。米国の覇権が衰え、不良国家へと突き進むのが南東の風なら、疫病、経済危機、戦争の連続は火矢だと言えるだろう。
民主主義が危機に直面し、諸国でファシズム政権が成立するにつれ、各地で戦争が起きている。ひとつにつながった世界では、局地戦さえも世界的な文脈で展開される。特にロシアやイランなどのエネルギー覇権を握る国が戦争に巻き込まれると、世界は瞬く間にエネルギー危機に直面する。米国・イスラエルとイランとの戦争により、世界の液化天然ガスと石油の5分の1が通過するホルムズ海峡が封鎖されたため、全人類が苦しんでいる。韓国のように高度に工業化され、エネルギーを輸入に依存する国は、危機に対してよりぜい弱にならざるを得ない。
2022年にロシアがウクライナに侵攻して以降、天然ガスの価格が高騰しているため、多くの国がエネルギー転換に取り組んでいる。地球のどこにでもある太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、エネルギー貯蔵システム(ESS)の発展に伴い、化石燃料の強力な代案として注目されている。スペインはこの5年間で再生可能エネルギーの容量を倍増させ、化石燃料が電気料金に及ぼす影響を75%低下させた。中国はエネルギー輸入と炭素排出を減らすため、世界最大規模の再生可能エネルギー投資を断行し、エネルギー転換を加速させている。
韓国はどうか。酒に溺れた前大統領がシロナガスクジラ取りなんぞに夢中になって時間を浪費したせいで、4年前よりも大きな危機に直面している。民主市民が団結して追い出さなかったら今ごろは国が滅びていただろうという声は、決して軽く聞こえない。幸いにも新政権は機敏に危機に対処しているため、安心できる。国務会議の中継を見ると、エネルギー転換にも本格的に取り組むようだ。諸手をあげて歓迎すべきことだ。これを機に、いかなる勢力もイデオロギー化したり政治的に利用したりできないよう、エネルギー転換を絶対に守るべき価値として位置付けるべきだ。経済や安全保障はもちろん、気候危機の解決にも役立つ方向性だから、ためらう必要はない。
もちろん再生可能エネルギーに転換するからといって、すぐに石油や天然ガスの輸入を大幅に減らせるわけではない。現代文明は石油の上に築かれてきた。私たちが身に着ける服、穀物の生産に欠かせない肥料や農薬、道路を舗装するアスファルト、あらゆる目的に使用されるプラスチックやビニールやゴムは、すべて石油を原料として生産される。
しかし、まずは冷暖房や輸送に必要なエネルギーを転換するだけでも、息がつけるのは明らかだ。韓国も太陽が照りつけ、風が吹く。遠い国から銃声が聞こえるたびに、このようにひやひやしながら生きていてはおれない。市民と政府の意志が確固たるものであれば、技術は自然とついてくるものだ。もしかしたら、将来の食い扶持はそこから生まれるかもしれない。何よりもエネルギー転換は、つながっている私たちの何千隻もの船から太いかすがいを何本か抜くようなものだ。他人が「ひとつの大きな美しい法」を制定しようがしまいが、一緒に炎の中に飛び込む必要はない。今や生き残りのためには散らばるべき時代が迫ってきている。
カン・ビョンチョル|小児・青少年科専門医、出版人 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )