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暴露と真実の瞬間―「エプスタイン・ファイル」が示すもの【朴露子の韓国、内と外】

登録:2026-02-14 11:06 修正:2026-02-17 06:56
イラストレーション=キム・デジュン//ハンギョレ新聞社

 韓国現代史80年の間には数多くのスキャンダルと暴露があった。古いスキャンダルは、今や専門家以外では覚えている人も少ない。例えば、1966年に国中を騒がせた「サッカリン密輸事件」を今覚えている人はどれほどいるだろうか。サッカリン密輸事件がサムスン財閥と朴正煕(パク・チョンヒ)政権の合作だとすれば、1977~78年の「狎鴎亭洞(アプクジョンドン)現代アパート特恵分譲事件」は、現代のような財閥がメディア界の人物や政府高官をどのように管理していたかを露骨に示した。

 それより波紋が小さかった当時の数多くの財界・政界の事件は、今や多く人々の記憶からほぼ消え去ったが、韓国現代史のこの無数のスキャンダルが残した遺産は確かに存在する。大抵の韓国の人々は、政経癒着というこの社会の現実を十分に意識しており、財閥・政治家などの支配勢力の道徳性やゲームのルールが公正であるとは信じていない。暴露とスキャンダルが育んだこうした不信は、一方では既得権益への嫌悪や刷新への熱望として表れることもあるが、もう一方では脱政治化と原子化傾向へとつながることもある。

 韓国だけのことだろうか。大規模な経済・政治的暴露やスキャンダルは、他の社会でも大衆の意識の形成に大きな影響を与えてきた。おそらく20世紀で最も波紋を広げた暴露は、1956年のソ連共産党第20回大会でニキータ・フルシチョフが行ったあの有名な「スターリン個人崇拝批判演説」であろう。東西の多くの進歩主義者にとってより良い資本主義の代替案と思われていたスターリン主義は、この演説によって秘密警察の恐怖で支えられた「警察国家」にすぎなかったことが露呈してしまった。

 ソ連体制の権威が1956年の暴露で半ば崩壊したとすれば、その主敵であった米国もまた、1970年代初頭の相次ぐ暴露で致命傷を負った。1971年の「ペンタゴン文書」暴露は、米国の歴代政権が国民に嘘をつき続け、ベトナムで「中国けん制」のための不法な侵略戦争を繰り広げた実態を明らかにした。また、1972~74年の「ウォーターゲート事件」は、米国政府が議会主義政治の基本的なルールすら尊重していなかったことをあらわにした。米国の覇権の没落過程は、一次的には経済・社会・政治的要因によって進んだが、その過程で米国の権威を破壊した1970年代初頭の一連の暴露もまた大きな役割を果たした。

 ソ連であれ米国であれ、支配者たちは暴露を快く思わなかった。不可抗力の状況が訪れるまで暴露は不可能だった。ソ連の場合、1953年のスターリンの死後、強制労働収容所で反乱が起き、やむを得ず収容所を閉鎖することになって罪のない政治犯たちが大勢帰郷したという状況が発端だった。共産党はすでに多くの人が知ってしまったスターリン治下の大々的な強制労働という現実を説明するのに苦心し、ついにフルシチョフは党首として「スターリン批判演説」という形で釈明したのだ。1970年代初頭の米国も、経済危機とベトナム戦争敗北という悪材料の中で支配層が分裂し、その状況下で主要日刊紙が「ペンタゴン文書」のような暴露文書を掲載した。平時ならおそらく不可能だった巨大なスケールの暴露は、このように危機状況下でこそ可能となる。

 今回の「エプスタイン・ファイル」公開もやはり、米国の社会と政治危機の兆候を如実に表している。二極化、労働者の実質賃金の停滞、住宅価格の暴騰といった生活苦の中で、米国国民はますます政府に対する基本的な信頼を失いつつある。1958年には73%の米国人が「連邦政府はうまくやっている」と信じていたが、今やこのような純真な人はわずか17%にすぎない。ただでさえ不信と幻滅が蔓延している危機的状況にある米国社会で、36人の少女を性的に虐待していたことが確認されているジェフリー・エプスタインという稀代の性犯罪者が、2008年に懲役18カ月という信じがたい軽い処罰で済まされたことや、2019年に疑問だらけの自殺をしたという発表は、権力層に対する不信を極度に高めた。エプスタインがもしビル・クリントンやドナルド・トランプ、ビル・ゲイツやイーロン・マスクといった政財界の大物たちに性売買を斡旋していなかったら、果たしてこれほど厚かましく長年にわたり人身売買や未成年への性的虐待を働けただろうか、と問いただす人は多い。

 こうした状況下でトランプ政権は(おそらくトランプ本人に不利な部分を大幅に削除した上で)民意を抑えるためにやむなくエプスタイン・ファイルを公開した。この公開は米国内外の数億人の大衆にとって「真実の瞬間」となった。彼らは資本主義の末期の剥き出しになった社会の現実と直面することになったのだ。

 エプスタイン・ファイルに描かれる米国は、サッカリン密輸事件や現代アパート特恵分譲事件時代の韓国と、本質的に大差ない政経癒着の社会だ。財界の大富豪たちと政治のボスたちは共に集い、未成年を性搾取する。性買収を基盤に内部の結束を固める権力カルテルには、政財界だけでなく法曹界や学界の人物も参加する。あまつさえノーム・チョムスキーのような体制批判者でさえも、権力カルテルの中心に立っていたエプスタインとの親交を維持し、私的な手紙で被害者を滑稽に描いていた。多くが貧しい国出身の外国人である被害者たちは、スターリン時代のソ連を彷彿とさせる恐怖の中で生きねばならなかった。法治などというものは口先だけで、米国という国家権力が児童性搾取犯たちの側に立っているという事実を、骨身に染みて知っていたからだ。エプスタインが捕まると、トランプやゲイツ、マスクらは1970年代初頭のウォーターゲート事件にかかわったリチャード・ニクソンのように自らの発言を翻し、嘘だらけの弁明を並べ立てた。

 エプスタイン・ファイルは、極度に腐敗した政財界のボスたちの非公式ネットワークが、法治や民主主義とは無関係な方法で管理する新自由主義世界の素顔を示している。天文学的なカネの前で法治が崩壊し、制度的民主主義が後退に後退を重ねて形骸化しているというこの絶望的な現実への怒りが、無力感ではなく正義の実現と変革への熱望につながることを願う。広場を埋め尽くし、不道徳な特権カルテルに立ち向かう闘争に身を投じる民衆こそが、性犯罪者たちが支配し崩壊しつつある覇権国家米国に、再び真の民主化をもたらすことができる。彼らにとって、これまでの韓国の民主化闘争の経験は良い参考となるだろう。

//ハンギョレ新聞社

朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov)|オスロ国立大学教授・韓国学

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1244373.html韓国語原文入力:2026-02-10 19:25
訳C.M

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