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トランプの「共和党」、尹錫悦の「国民の力」【寄稿】

登録:2025-03-22 08:44 修正:2025-03-22 11:08
ソ・ボクキョン | ザ・可能研究所代表
尹錫悦大統領とドナルド・トランプ米大統領/AP・聯合ニュース

 憲法裁判所の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾審判の言い渡しが遅れているが、まもなく認容判決が下されることに疑いはない。弾劾が認容されても、「12・3内乱」以降の韓国の民主政が進むべき道の峠の一つをやっと越えたに過ぎない。私たちは内乱が残した様々な後害と、今後長いこと対面しながら生きていかなければならない。

 内乱は憲法と法治に対する韓国の政治共同体の合意された信頼を傷つけ、適法な手続きにより作動すると信じていた検察、警察、軍隊、情報機関などの国家機関に対するあらゆる疑惑を積みあげ、選挙結果に対する承服や政治対立の非暴力的な解決原則など、民主政の基本原理を危険にさらした。最も深刻な後害は、今回の事態以降、憲法と民主政を脅かす勢力に変貌してしまった与党「国民の力」という政党とその支持層だ。「国民の力」は弾劾後の大統領選挙に参加し、2026年の地方選挙、2028年の国会議員選挙にも候補を出すだろう。同党で選出された公職候補者と党員たちは、不正選挙陰謀論と絶縁し、民主憲政体制を認めながら、選挙戦を繰り広げていくことができるだろうか。弾劾後に発足する新政権の路線と立場に対して、憲法秩序の枠内で表現の自由を行使しながら、政治暴力に断固として対処できるだろうか。次の政権5年以内に「12・3内乱」に関わった者に対する捜査と起訴、裁判が続くはずだが、現行憲法と法律の制度的手続きを尊重できるだろうか。そうなることを望むばかりだ。

 しかし、ドナルド・トランプ大統領以降の米国共和党を見ると、この問題がそれほど簡単ではないことが確認できる。2021年1月6日朝、トランプ大統領は自身の支持者らに「不正選挙で大統領の座を盗んだジョー・バイデンの当選の公式認定手続きを止めろ」と扇動し、彼らの暴動が始まった時、州防衛軍の派遣要請の承認を3時間以上拒否し、暴動に手を貸した。トランプ大統領が連邦議会に乱入した暴動に対して「米国史上最も偉大な運動」と擁護した時、共和党員たちはその発言を公の場でかばい、黙認した。米国下院が国会議事堂暴動調査委員会を構成した時、共和党の全国委員会は「適法な行動をした一般市民」を弾圧する処置だと反対し、連邦下院が暴動に対する責任を問いトランプを弾劾しようとした時、賛成した共和党議員は10人に過ぎなかった。

 その後、共和党はどうなっただろうか。不正選挙陰謀論を主張したトランプ大統領について「民主主義を崩そうとする十字軍」だと批判した共和党のリズ・チェイニー下院議員は、数百件の殺害脅迫を受け、所属州の共和党から追放された。トランプ大統領に反対した議員は全員、次の選挙の党内予備選挙で脱落した。その席をトランプ支持者たちが占めたことは言うまでもない。バイデン政権の間、連邦議会暴動で1500人余りが起訴され有罪判決を受けたが、共和党指導部を含むほとんどの議員は「2024年にトランプ前大統領が再び出馬するならば支持する」と公表し、トランプ支持者の歓心を買うのに余念がなかった。2020年の大統領選で敗北したトランプ氏は、敗北後に共和党を事実上支配し、4年後に共和党を上院と下院の多数党にし、自身も大統領の座に返り咲いた。

 尹錫悦大統領の「国民の力」は、トランプ大統領の共和党の道を進むことができるだろうか。容易ではないだろう。トランプ大統領は2009年のティーパーティー運動からあらわになった白人至上主義という根強い人種対立を重要な支持基盤としている一方、尹錫悦大統領は明確な社会的支持基盤を持っていない。トランプ大統領は莫大な財力と人材プールで共和党を掌握することができたが、尹錫悦大統領は政党という政治組織を維持できる人的・物的能力を持ち合わせていない。5年任期の1期限りの大統領制度を採択している韓国で、尹錫悦大統領にできるのは、後継者を立てることだけだ。トランプ大統領は運良くバイデン政権の弱い民主党と闘うことになったが、弾劾以降、国民の力にそのような幸運が訪れるかは不透明だ。何よりも、トランプとは違って尹錫悦大統領は、戒厳軍と全身で対抗し民主政を守っていく勇気を持った多数の市民と対面しなければならない。

 このすべての違いにもかかわらず、トランプ大統領の共和党は、尹錫悦大統領以降の「国民の力」の未来に重要な示唆点を投げかける。支持者を反体制極右に導くのは政治家たちだが、すでに反体制過激主義に傾倒した支持層を政治家たちがまた引き戻すのは非常に難しいという事実だ。尹錫悦大統領以降、誰が「国民の力」の支持層を民主主義者へと引き戻すことができるだろうか。

//ハンギョレ新聞社
ソ・ボクキョン | ザ・可能研究所代表(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1187867.html韓国語原文入力: 2025-03-2008:09
訳H.J

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