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【社説】尹錫悦弾劾宣告の遅れで高まる極右の暴力への懸念

登録:2025-03-21 23:18 修正:2025-03-22 09:21
ムン・ヒョンベ憲法裁判所長権限代行をはじめとする憲法裁判官たちが18日、ソウル鍾路区の憲法裁判所で行われたパク・ソンジェ法務部長官の弾劾審判の第1回弁論に入場し、あいさつしている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 憲法裁判所による尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の弾劾審判の決定言い渡しが遅れていることで、社会的な対立と混乱が強まっている。国威の失墜と国政の空白による経済成長率の低下で、非常戒厳以降、国内総生産(GDP)が一日に1兆ウォン減っていると警告する声もあがっている。足元に火がついた「トランプ関税」の嵐にもなす術がない。言い渡しの遅延を憲法裁が動揺しているシグナルだと誤解した極右勢力の蠢動(しゅんどう)がさらに激しくなるにつれ、国論の分裂と対立も危険水位に迫っている。このままでは、民主憲政の最後のとりでとしての憲法裁の権威と国民の信頼にも傷がつく恐れがある。憲法裁は、今が国と国民、憲法裁の運命を左右する決定的瞬間であることを肝に銘じなければならない。

 憲法裁が理解しがたい理由で言い渡しを遅らせている間に、尹大統領の熱烈な支持層の動きは、法と規範を逸脱してさらに過激化している。20日には、憲法裁の前で記者会見をおこなっていた野党「共に民主党」のペク・ヘリョン議員が、極右勢力から生卵を投げつけられるという不祥事が起きている。彼らは「1人デモ」を標榜する集会をおこなっている途中で、ペク議員らに向かって卵やバナナなどを投げつけた。一部のデモ参加者たちは、強制解散にあたった警察官に向かって「アカ警察」などの暴言を並べ立てた。人間に対する最小限の配慮、尊重、礼儀はおろか、法と公権力さえ軽んじる態度だ。この日午後には、尹大統領の支持者と推定される男性が、憲法裁前で民主党のイ・ジェジョン議員の太ももを蹴るという暴行事件も起きている。大勢の警察官が見ているにもかかわらず、暴力の行使にためらいはみられなかった。このような暴力が制御されることなく頻発すれば、ふとした瞬間にソウル西部地裁暴動のような極端な事態に至らないとは、誰も保障できない。

 国政に責任を負う政権勢力が、このような状況の防止に努めるどころか、「弾劾不服従」を叫ぶ極右勢力に便乗し、むしろ彼らの逸脱をあおっているという現実は、非常に懸念される。与党「国民の力」は、極右集会で「弾劾不服従」を公然と主張する塾講師のチョン・ハンギル氏を2回も国会に招き、発言権を与えた。今週末にも、多くの議員が「弾劾が認容されれば憲法裁に火をつけるべき」という扇動の飛び交う極右の「弾劾反対」集会に参加する予定だ。与党は、野党の議員たちも「弾劾賛成」集会に参加しているのだから自分たちも問題ないと主張する。道理に反する。今、極右勢力は弾劾不服従と暴力扇動を公然と叫んでいる。一方、国民の大多数は、迅速な弾劾言い渡しによる民主憲政の回復と国政の正常化を念願している。大多数の国民の願いの実現を平和的に要求する行為と、極端な暴力扇動を事とする行為を、どうして同一線上に置いて比較できるのか。いやしくも政権勢力なら、今からでも国民の常識から外れた無理な主張をやめ、民主憲政を脅かす極右勢力と絶縁しなければならない。

 今は何よりも、憲法裁の強い責任感が求められている。12・3非常戒厳が軍を動員して憲政を破壊しようとした尹大統領による親衛クーデターであることは、あまりにも自明だ。この明白で重大な違憲行為に対して判断をためらうような今の憲法裁の姿は、正常ではない。これ以上の引き延ばしは、慎重さの結果ではなく、憲法裁の一部が自らを推薦した憲政破壊犯と極右同調勢力の顔色をうかがっているからではないかという、不必要な疑問を強める恐れがある。ひたすら憲法精神と主権者国民の意思に従い、これ以上遅らせることなく「憲法の守護者」としてふさわしい責任を果たしてほしい。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1188247.html韓国語原文入力:2025-03-21 18:00
訳D.K

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