国民の力の大統領候補一本化をめぐる対立が爆発している。党内予備選挙を経て選出されたキム・ムンス候補と無所属のハン・ドクス前首相の一本化問題をめぐり、キム候補と党指導部があからさまに衝突しているのだ。党指導部はキム候補に「党内選挙での約束通り、候補一本化に応じよ」と迫っており、キム候補は「大統領候補を引きずり降ろそうとしている」として反発している。
大統領選挙の候補登録日(11日)が差し迫っているにもかかわらず一本化が難航していることを受け、クォン・ヨンセ非常対策委員長は6日の議員総会で、「今になって信頼を裏切るのは、党員と国民を裏切るもの」だとして、キム候補に一本化の約束を守るよう重ねて求めた。クォン非対委員長は7日に一本化の賛否を問う全党員を対象とした世論調査を実施し、その結果に沿って必要な措置を取るとして、キム候補への圧力を強めている。党指導部は大邱(テグ)・慶尚北道地域を訪問中のキム候補を訪ねていって会おうとしたが、キム候補は「党指導部による、正当な大統領候補である私を強制的に引きずり降ろすことを狙った試みだと思う」と述べて、大統領候補としての日程の中断を宣言して上京した。
このような対立は、国民の力が正当性を深刻に欠いた候補の一本化を超高速で推進することを構想した時から予見されていた。そもそも、公党が政治工学的な計算にもとづいて「無条件の一本化」という結論をまず決めておいて、自党の大統領候補を選ぶ選挙を、党外の候補を連れてくるための予選へと転落させたこと自体が、無責任で非常識だ。予備選挙の当選基準は各候補の政策や政見ではなく、「誰がハン・ドクスとの一本化に適しているか」だった。党内では、キム候補の態度が予備選挙の時と異なるとして、「詐欺」だと非難する声すらあがっている。汝矣島(ヨイド)研究院のユン・ヒスク院長は、「一本化する気がないのなら、キム・ムンス候補は候補資格を返上して道を譲れ」として、候補交替論にまで公に言及している。しかし、キム候補の態度変化を問題視する前に、国民の力も自らを振り返ってみるべきだ。
キム候補とハン候補はいずれも、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の内閣の一員として12・3非常戒厳を防げなかったし、尹錫悦前大統領とも絶縁していない。キム、ハンのいずれに一本化するにしても、国民から見れば「内乱連帯」に過ぎない。国民の力はこのような状況に加え、無様な内部権力闘争まで繰り広げている。今の国民の力の内紛からは、「反イ・ジェミョン」以外にいかなる価値観やビジョンも見出せない。大統領選挙後の党の主導権や来年の地方選挙の公認権を念頭に置いた泥沼の争いがかいま見えるに過ぎない。国民の力には国民の冷笑が聞こえないのか。