本文に移動

尹大統領による43日間の「卑しい政治」【寄稿】

登録:2025-01-17 08:53 修正:2025-01-17 09:20
パク・ロクサム|ジャーナリスト
内乱首謀の容疑で高位公職者犯罪捜査処に逮捕された尹錫悦大統領が15日午後、京畿道果川市の公捜処での取り調べを終え、ソウル拘置所に移動している=写真共同取材//ハンギョレ新聞社

 12月3日の大統領による非常戒厳令の宣布と内乱暴動は、43日後の1月15日午前の逮捕令状の執行で一段落した。扉を破壊して銃を撃ってでも封鎖しようとした国会で自身の弾劾訴追案が可決されてから見せた大統領の姿は、「目も当てられない」、それこそ目を開いて見ることすらできなかった。漢南洞(ハンナムドン)の家の中でとぐろを巻き、適法な法の執行を前にして三重四重に車壁を作り、有刺鉄線で遮り、警護処の公務員たちを盾にした。憲政史上類を見ない、法と秩序を形骸化させた大統領の姿であり、大韓民国は大きな混沌の渦から一歩も抜け出せずにいた。

 振り返ってみると、このすべての混沌は、政治をすべき時に政治をせず、歪んだ法を強調してきたという過ちからはじまり、法秩序を正すべき時にむしろ卑しい政治をしたという過ちによって膨らんだ。

 総選挙を通じて野党が議会の最大会派になったのは、政府与党に対する民意による審判だった。苦しかっただろうが、少数与党国会は大統領として彼が直面した現実だった。置かれた立場と実情に合わせて野党を説得し、協力を求めつつ、自身の国政目標と課題を履行するために政治的努力を尽くすことが、彼に与えられた責務だった。

 にもかかわらず、彼は政治の責務を投げ捨てた。野党との対話そのものを拒否し、野党の有力な大統領候補を司法的に責め立て、自身の家族を守るために法案拒否権を乱発した。そして、第22代国会の開会式を欠席したかと思えば、国会での施政方針演説まで拒否した。代わりに選挙不正、「議会独裁」、反国家勢力という独善と妄想の世界を着々と構築しつつ、憲法と法律を破壊し、憲政秩序そのものを打倒するという計画を立てた。政治と政治家を冷笑し嘲笑する人は多いが、代議民主制政治には明確な役割がある。確執や対立を調整したり仲裁したりしつつ、多様な社会的利害が衝突する状況にあって妥協を作り出さなければならない。それにもとづいて政策を立案し、国家の究極的な課題を設定しなければならない。大統領はその中で最も大きな役割を果たす政治家であることは明らかだ。

 しかし、憲法と法律が打ち捨てられた状況に至っているため、必要なのは中途半端な旧態依然の政治ではない。立法府、司法府、行政府をはじめとする社会全体が憲政秩序の回復に努めることが求められている。しかし皮肉だ。政治をしてはならない時に政治が横行した。それも政治家でもない首相と副首相、官僚たちが、司法システムを否定しつつ政治をした。大統領権限代行を任された首相は、憲法裁判官の任命において法にもない与野党合意を要求した末に弾劾訴追された。続いて権限代行を任された経済副首相は、無責任なけんか両成敗論を掲げ、法の執行を無力化する勢力に沈黙をもって同調した。ついに大統領は、逮捕される瞬間まで、一部の極右支持者に対して「法はすべて崩壊した」という詭弁(きべん)の映像メッセージを残し、滑稽で卑しい政治形態をやめなかった。

 政治の役割を放棄し、やせ細った法治を掲げていた大統領が、今度は法秩序を真っ向から傷つけ、退行と反動の政治的役割の裏に隠れているのだから、韓国社会の対立と確執が泥沼へと転げ落ちていくのは当然のことだった。自らがばらまいた非常識と不公正、違憲と違法の痕跡の活躍を眺めながら、大統領は漢南洞の家を要塞化し、武装した警護員を私兵とし、一部の極右支持者を世論戦の使い走りにした。このようにして「南米の麻薬ギャング団」よろしく公権力に対抗した。このような袋小路の対立や確執の助長は戒厳令による内乱暴動よりも大きな傷を残し、韓国社会をたやすくは回復しないところにまで追い込んだことは明らかだ。

 政治権力を私有化したまま酔生夢死の日々を送った人間の末路は、容易に見当がつく。逮捕後、拘束と弾劾を免れることはできないだろう。それによって憲法と法律の厳しさを確認することは、それほど難しくない。しかし、真の問題は現在進行形であり、今後も残る。崩壊した政治の役割と責任を回復し、韓国社会の構造的な確執と対立を解消するのは容易ではないが、決してあきらめてはならないことでもある。

 先日見た映画「シビル・ウォー」のように、国内で互いに軍隊を作って戦争する場面が私たちの現実にならなくて幸いだ。ただし、銃を手に取らなかっただけで、漢南洞でペンライト、星条旗、太極旗を手に「弾劾の賛否」で対立した姿が今後も見られ、それに便乗する政治が続けば、韓国社会は依然として内乱の混沌の中にとどまるかもしれない。

//ハンギョレ新聞社

パク・ロクサム|ジャーナリスト (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1178329.html韓国語原文入力:2025-01-16 18:57
訳D.K

関連記事