尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が、10日(現地時間)に米ワシントンで行われる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議への出席に先立ち、ロシアに対して「韓国と北朝鮮のどちらがより重要で必要な存在なのか判断してほしい」と述べた。「韓国との健全な関係を望む」と述べてきたロシアを不必要に刺激する発言だ。世界の陣営対立が激しくなればなるほど、「最前線」に置かれている韓国のこうむる被害は大きくなる。尹大統領は対立をあおるのではなく、冷徹な情勢判断にもとづいた現実的な対応を取るべきだ。
尹大統領は8日のロイター通信とのインタビューで、「ロ朝間の軍事協力は朝鮮半島と欧州の平和・安保に対する決定的脅威」だとし、「韓ロ関係の行方はひとえにロシアの態度にかかっている」と述べた。すでに北朝鮮との同盟関係を回復するという「戦略的決断」を下したロシアに対して、韓国か北朝鮮かどちらかを選べという「現実性のない」要求をしたわけだ。尹大統領の発言が「外交的常識」とかけ離れているため、ロシアの反応もやはり思わしくない。クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、「現実的に我々はすでに平壌(ピョンヤン)とパートナーだが、韓国は反ロ制裁に参加している」とし、「尹大統領の発言は理解しがたい。我々に対して敵対的な立場に立つ国とどうして良い関係が築けるのか」と応じた。
朝ロは先月19日、かつての冷戦時代に近い同盟条約を締結したが、その翌日、韓国のチャン・ホジン国家安保室長は「ウクライナに殺傷兵器を支援しない」という従来の方針を「見直す」と表明している。この発言や尹大統領のインタビューなどをみると、政府は「韓国の優れた経済力」や「破壊兵器提供の可能性」などによって、朝ロの接近はけん制できると判断しているようだ。
しかし冷静に考えてみると、この問題はすでに韓国のみでは決定できないグローバルな懸案となっている。ロシア経済は西欧の厳しい制裁の中でもそれなりに回っており、韓国がウクライナに殺傷兵器を援助したところで、西欧全体が2年間にわたって莫大な支援をつぎ込んでも動かせていない戦況が変えられるわけでもない。それと比べて、ロシアが北朝鮮に先端軍事技術を提供した時に私たちが目にすることになる被害は、想像するのも難しい。
ロシアに対する明解な発言によって、NATO会議で西欧首脳の「好意的評価」はひとまず得られる。しかし、11月の米国の大統領選挙の結果次第では、ウクライナ情勢は一寸先も予測できなくなる。今は冷徹に情勢を見定めるべき時だ。