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ロシアと密接する北朝鮮、中国との距離は…「豆満江下流」3カ国協力がカギ

登録:2024-06-28 09:05 修正:2024-06-29 09:10
中国吉林省琿春市の防川龍虎閣からみる豆満江下流。遠くにみえる「朝鮮・ロシア友情橋」(豆満江鉄橋)の向こうが東海に出る豆満江河口だが、中国の主権が及ばない朝ロ国境地帯が東海まで16.93キロ続く=イ・ジェフン先任記者//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮・中国・ロシアの3カ国が国境地帯での協力のスピードを上げている。中国の習近平国家主席とロシアのウラジーミル・プーチン大統領による5月16日の北京会談、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長とプーチン大統領による19日の平壌(ピョンヤン)会談が重要な動力源だ。

 協力の舞台は3カ国が接する豆満江(トゥマンガン)下流。習主席とプーチン大統領は、中国の船舶が豆満江下流を経て海に出る問題について「北朝鮮と建設的な対話」を、朝ロは「豆満江国境の自動車橋の建設」を合意した。北朝鮮の羅先特別市、中国の琿春市、ロシアのハサン地区を結ぶ豆満江下流の三角地帯は「北方経済の中核地域」になる潜在力が高いと評価されてきた。

 3カ国協力のスピードと成り行きを測る争点は大きく2つある。1つ目は、金正恩委員長が朝中国交樹立75周年にあたる今年、中国を訪問するかどうかだ。2つ目は、3カ国が米国に対する戦略をめぐる微妙な違いを克服できるかどうかだ。相互に絡みあう2つの問題がどのような軌跡を描くかによって、豆満江下流の3カ国協力の成否が決まるという見方が多い。

5月16日に北京で会談した中国の習近平国家主席(左)とロシアのウラジーミル・プーチン大統領/聯合ニュース

■中ロ「5月合意」

 中ロ首脳が先にエンジンをかけた。公式文書である「共同声明」に「双方は中国の船舶が豆満江下流を経て海に出て航行する事案について、朝鮮民主主義人民共和国と建設的な対話を進める」と明記したのだ。太平洋につながる東海(トンヘ)に出る航路と港を確保できなかった中国の困難を3カ国協議で解決するという意味だ。

 中国は、鴨緑江(アムノッカン)と豆満江を挟み、北朝鮮と1334キロメートルに達する長い国境を接しているが、吉林省琿春市の防川が東側の国境の末端だ。防川を越えて東海に至る豆満江下流の16.93キロメートルは、中国の主権が及ばない朝ロ国境地帯だ。清国がアロー戦争(第2次アヘン戦争)の敗北で英国・フランス・ロシアと結んだ1860年の北京条約によって、ロシアに東海と接する沿海州の60万平方キロメートルの土地を奪われたためだ。1949年の「新中国」建国後、3カ国はこの問題について多くの協議や合意を行ったが、中国の東海出海は今なお「現実」ではない。中国の江沢民元主席が「東海出海」を「歴史の夢」としたのもそのためだ。

6月19日、平壌の万寿台議事堂で北朝鮮のキム・ギョンジュン国土環境保護相とロシアのロマン・スタロボイト運輸相が「豆満江国境の自動車橋の建設に関する協定」に署名した後、握手している/朝鮮中央通信・聯合ニュース

■朝ロ「6月合意」

 朝ロ首脳会談後の公式発表には「中国の船舶の東海出海」に関する内容はなかった。その代わり、北朝鮮の国土環境保護相とロシアの運輸相が「豆満江国境の自動車橋の建設に関する協定」に署名したという発表があった。豆満江下流を挟んだ朝ロ国境を結ぶ交通路は、一般的には豆満江鉄橋と呼ばれる「友情の橋」だけだ。1952年に木製の橋で始まり、1959年に鉄橋に改築され、現在に至る。朝ロの新協定は、豆満江駅とロシアのハサン駅を結び国境を越える橋を建設し、往来と交易を拡大するという構想だ。3カ国協力ではなく朝ロの2カ国協力だ。

6月19日、平壌の錦繻山迎賓館内で、ウラジーミル・プーチン大統領が金正恩国務委員長を助手席に乗せ、自身が贈ったアウルスを運転している/朝鮮中央通信・聯合ニュース

■金正恩の中国に対する「テコ」

 しかし、北朝鮮側が「中国の東海出海」に反対したのではないかとの予断はできない。朝中関係に詳しい元政府高官は25日、ハンギョレに「中国の東海出海問題は、金正恩が習近平に対して使える重要な交渉レバレッジ(テコ)だ」と述べた。金委員長が国交樹立75周年にあたる今年中に中国を訪問し習主席に会うためには、「交渉カード」を残しておく必要があるという分析だ。そのうえ現在の朝中関係は、金委員長と習主席が1月1日に「朝中親善の年」を共同宣言したにもかかわらず、「異常気流」が感じられている。

 これとは別に、豆満江鉄橋は高さ7メートルの古く低い橋であり、大型船舶の航行を妨げる構造物だということから、今回の朝ロ協定は3カ国協力の基盤を築く先行措置だとする分析も出ている。

昨年11月15日(現地時間)米国サンフランシスコを訪問した中国の習近平国家主席(右)が米国のジョー・バイデン大統領と握手を交わしている/聯合ニュース

■ 「反米連帯」の亀裂?

 対米戦略の違いは、3カ国協力の行方を左右する重要な要素だ。中国も朝ロ条約に明記された「一極世界秩序」に代わる「多極化した国際秩序」の指向に同意している。しかし、中国は朝ロが強調する「反米連帯」に全面的に同伴する立場ではないという指摘が多い。

 高強度の制裁のため、米国および西側との経済的結びつきが事実上途絶えている朝ロとは違い、中国は脱冷戦期の「グローバル経済秩序」に「非常に多くの投資」をしており、米国および西側の経済と緊密に結びついているからだ。習主席は、昨年11月15日にサンフランシスコで「中国は米国と友人になる準備ができている。地球は両国がともに成功できるくらい広い」と力説している。朝ロの「反米連帯」とは方向性の異なる「共存摸索」だ。スターリン死後の1950年代後半に発生した中ソ紛争期のソ連の「平和共存」と朝中の「米帝国主義との非妥協的な闘争」の構図がひっくり返されたかたちだ。

 ただし、「東海出海」問題は、中国政府が戦略的に推進してきた「豆満江を活用した北極航路」の開拓の先決課題だという点も念頭に置く必要がある。元政府高官は「豆満江下流の3カ国協力は朝中ロの戦略協力の尺度であり、中国の東海への出海権確保は豆満江下流の3カ国協力の尺度」だと述べ、「金正恩の今年中の訪中が実現すれば、中国の東海出海に関する合意がなされる可能性がある」と語った。今年下半期に朝中首脳会談が実現するかどうかが、朝中ロ3カ国協力の1番目の尺度だという指摘だ。

イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1146474.html韓国語原文入力:2024-06-26 08:01
訳M.S

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