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尹錫悦検察総長時代の「検察クーデター」は事実だったのか【コラム】

登録:2024-06-17 06:27 修正:2024-07-05 11:30
2019年7月25日、文在寅大統領が尹錫悦検察総長(当時)に任命状を渡した後、握手している=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が検察総長時代に指揮した「生きている権力(者)の捜査」について、当時の文在寅(ムン・ジェイン)政権の人々は「検察クーデター」と非難した。捜査を行うほどの事案ではないにもかかわらず、政権に打撃を与える目的で検察の持つ権限を悪用しているとみたのだ。代表的な事例が、2021年11月の「脱原発捜査」だ。文在寅政権の脱原発政策により2019年12月に月城(ウォルソン)原発1号機を閉鎖したのは違法だとし、ペク・ウンギュ産業通商資源部長官(当時)をはじめとする文政権の要人たちを起訴した事件だ。「チョ・グク(元法相、現祖国革新党代表)事態」以降、文在寅政権と対立していた尹錫悦検察総長がチュ・ミエ法務部長官と激しく衝突していた時だった。政治的「私心」にまみれた検察総長が自分の私欲を満たすために検察を私有化しているというのが、当時の文大統領支持勢力の認識だった。しかし「検察クーデター論」は当時、あまり支持されなかった。世論は検察が捜査を行うべき事案だから捜査に乗り出したのではないかという方に傾いた。検察の捜査が気に入らないからといって、クーデターだと検察を非難した当時の与党(共に民主党)にむしろ冷たい視線を注いだ。

 ところが、今年5月9日に最高裁が産業部公務員に言い渡した無罪確定判決は、脱原発捜査を検察クーデターと疑うに足る十分な根拠を提供する。「尹錫悦検察」は、文在寅政権が公企業である韓国水力原子力(韓水原)を圧迫し、2022年まで稼動することになっていた月城1号機を安全性の懸念との理由で閉鎖時期を繰り上げたとし、職権乱用だと主張した。しかし、月城1号機は2012年にすでに設計寿命を迎え、朴槿恵(パク・クネ)政権で稼動を10年延長した状態だった。2011年の日本の福島原発事故の影響で、老朽化した原発の安全性に疑問を呈する世論は日増しに高まった。地域住民たちは月城1号機の稼動延長に非常に不安を感じていた。原発閉鎖はこのような民意を反映した政策だった。検察が下手に捜査に乗り出したら、逆風にさらされる可能性があった。

 その時、検察に助け舟を出したのが監査院だった。監査院は月城1号機の閉鎖過程を監査する過程で、産業部の公務員たちが主要資料を廃棄し、監査を妨害したと発表した。当時監査院長だった国民の力のチェ・ジェヒョン元議員は、2020年10月の国政監査で、「監査妨害がここまで激しいのは初めて」だと異常さを訴えた。のちにチェ元議員は、尹錫悦検察総長のように大統領選出馬のために任期途中で辞任した初の監査院長となる。「監査妨害」というフレームは産業部公務員があたかも大きな過ちを犯したかのように見せる役割を果たした。保守メディアは「違法を犯したのだから関連資料を密かに消去したのだろう」と猛攻をかけた。検察の捜査は一瀉千里に進んだ。チュ・ミエ長官によって職務排除された尹総長は、裁判所の「援護」で復帰した直後、資料を削除した産業部公務員らに対する拘束令状請求を決裁した。これに先立ち、大田(テジョン)地検を訪れ、「大変ご苦労をされているから激励するために来た」と言って脱原発捜査を督励した。

 だが、産業部公務員に対する無罪確定判決は「監査妨害」がでっち上げられたことを暗示する。司法府はむしろ監査院が適法な手続きを守らない「違法監査」を行ったと判決した。原審の高裁は、産業部公務員が無断廃棄したという資料が全て産業部のサーバーに保存されているのに、後任者のためにパソコンにある個人資料を削除したことをどうやって監査妨害で処罰できるのかと咎めた。当の公務員は削除前にすべての資料を産業部のサーバーに登録した。検察は捜査過程でこのような状況をすべて知っていたはずなのに、起訴を強行した。なぜだろうか。政権に打撃を与えようとする意図以外には、まともに説明できない。

 脱原発捜査の不純な意図は、ペク・ウンギュ元長官らの裁判でも如実に表れている。検察は、ペク元長官とチョン・ジェフン前韓国水力原子力社長、チェ・ヒボン元大統領府産業政策秘書官を職権乱用と背任の疑いで起訴した。検察の100ページに及ぶ控訴状は次のような文章で締めくくられている。「(月城1号機の閉鎖により)韓水原に1481億ウォン(約167億7千万円)相当の損害を与え、国にこの損害額相当を補填する義務を免れる財産上の利益を取得させた」。原発を1日でも多く回して金を稼ごうとする公企業の経営陣に、国全体に利益になる決定をするよう圧力をかけたのが犯罪だという趣旨だ。国民の安全より利潤を優先する公企業の逸脱を防ぐのは、公職者の当然の義務ではないか。まだ一審裁判が行われているこの事件は、検察が申請した証人だけで100人を超えており、いつ終わるか分からない。その間に「成功したクーデター」に参加した検事たちは出世し、起訴された人々の苦しみは続く。

//ハンギョレ新聞社
イ・チュンジェ|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1145020.html韓国語原文入力:2024-06-16 18:32
訳H.J

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