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[コラム]韓国大統領の在職中は公訴時効が停止される

登録:2024-02-22 06:47 修正:2024-02-22 07:43
尹錫悦大統領が16日、大田儒城区のICCホテルで「大韓民国を革新する科学首都大田」をテーマに開かれた12回目の「国民と共にする民生討論会」で、締めくくりの発言をしている=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

 すべての国民は法のもとで平等だ。ところが、大統領には不訴追特権がある。内乱又は外患の罪を犯した場合を除き、在職中に刑事上訴追されない。1948年から憲法に存在する条項だ。

 李承晩(イ・スンマン)大統領は1960年、4・19革命で下野した後、海外に出て5年後にハワイで逝去した。朴正煕(パク・チョンヒ)大統領は1979年10月26日、暗殺によって死去した。

 犯罪を犯した元大統領をどのように処罰するかをめぐり大韓民国が悩み始めたのは、1993年2月に金泳三(キム・ヨンサム)大統領が就任してからだった。1979年の12・12軍事反乱、1980年5・18クーデター(1980年5月17日の非常戒厳の拡大措置とそれに対する抗議として行われた5・18光州民主化運動をクーデターの一連の過程とみる見解に基づいたもの)をめぐり、全斗煥(チョン・ドゥファン)、盧泰愚(ノ・テウ)元大統領に対する告訴・告発が相次いだ。

 検察は12・12軍事反乱の捜査結果を1994年10月29日発表した。公訴時効15年が1994年12月12日に成立するとみたためだ。2007年12月に刑事訴訟法が改正されるまでは、死刑に当たる犯罪の公訴時効は15年だった。

 検察は、全斗煥氏には反乱の首魁、盧泰愚氏など17人は反乱謀議参加および重要任務従事の容疑が認められると発表した。その一方で「起訴した場合、裁判過程で過去の出来事が繰り返し議論され、法的論争が続いた場合、国論分裂と対立の様相を再演されることにより、不要に国力を消耗する恐れがある」として、起訴猶予処分を下した。起訴独占主義と起訴便宜主義を悪用した検察権の乱用だった。

 韓国外国語大学法科大学院のチョン・ハンジュン教授は当時、司法研修院生として弁護士の実務教育を受けていた。ソウル弁護士会のアンケート調査で、チョン教授は「12・12が内乱罪に当たらなければ、憲法規定上在職中に訴追できないため、その期間は公訴時効の計算から除外すべきだ」と匿名で書いた。「大統領在職期間の公訴時効停止」という驚くべき発見だった。

 チョン教授がアンケート調査に回答してから3日後、同じ内容で大韓弁護士協会の声明が発表された。12・12軍事反乱の告訴・告発人たちは検察の不起訴処分取り消しを求める憲法訴願を出した。憲法裁判所は1995年1月20日、憲法訴願を棄却・却下したが、「大統領在職中に公訴時効進行が当然停止されるとみるべきだ」という重要な判例を残した。

 憲法裁判所の決定にもかかわらず、検察は全斗煥氏と盧泰愚氏を起訴するつもりは全くなかった。金泳三大統領が「歴史の審判に任せよう」と述べたからだ。1995年7月18日、検察は「成功したクーデターは処罰できない」という論理で、5・18クーデターに対して「公訴権なし」の決定を下した。批判世論が高まった。

 ところが、全く別の場所で堤防が決壊した。1995年10月19日、パク・ケドン議員が国会で盧泰愚氏の秘密資金事件を暴露した。金泳三大統領は「聖域のない捜査」を指示した。検察は盧泰愚氏を拘束した。12・12と5・18の断罪を求める世論が再び沸騰した。

 金泳三大統領は5・18特別法の制定を指示した。12・12と5・18の公訴時効を盧泰愚大統領在任期間の1993年2月24日まで停止したとみるという内容だった。検察は12・12と5・18に対する全面的な再捜査に着手し、全斗煥氏を拘束した。

 結局、5・18特別法は全斗煥氏と盧泰愚氏の2人と新軍部の一党だけに該当する法律だった。しかし、チョン・ハンジュン教授の発見と憲法裁判所の決定で、すべての大統領の公訴時効が在任期間だけ増えた。李明博(イ・ミョンバク)元大統領と朴槿恵(パク・クネ)元大統領、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領、今後当選するすべての大統領がこれに該当する。

 大統領の犯罪に対する法的責任追及は、3つの経路で行われる。第一に、内乱または外患の罪は在職中も刑事上の訴追が可能だ。

 第二に、職務執行で憲法や法律に違反すれば、まず弾劾で罷免し、その後刑事上の訴追が可能だ。朴槿恵前大統領がこのようなケースだ。

 第三に、大統領になる前の犯罪や、在職中に弾劾に至らない程度の犯罪は、退任後に公訴時効が再び適用され、刑事上の訴追が可能だ。

 2020年3月、最高検察庁は尹錫悦検察総長の義母、チェ・ウンスン氏の犯罪容疑を庇護する文書を作成したという疑惑がある。2020年4月15日の総選挙直前にはソン・ジュンソン最高検察庁捜査情報政策官が告発状を作り、未来統合党(現在の国民の力)に渡した容疑で、最近裁判所で懲役1年を言い渡された。告発状には、尹錫悦検察総長夫妻とハン・ドンフン釜山(プサン)高等検察庁次長検事が名誉毀損の被害者として明示されている。

 もし、この事件に尹錫悦大統領が関与したとすれば、刑事上の訴追を免れないだろう。すべての国民は法のもとで平等であるからだ。

//ハンギョレ新聞社
ソン・ハニョン|政治部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1128915.html韓国語原文入力:2024-02-19 18:34
訳H.J

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