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「尹錫悦師団」に立ち向かった検事と「ソウルの春」(1)

登録:2023-12-18 02:51 修正:2023-12-18 08:55
[ハンギョレ21]インタビュー 
「サムスンバイオ」やイ・ジェミョン捜査のシン・ソンシク検事が辞表…初のインタビュー 
「師団」生む特捜部の「重箱の隅」別件捜査・企画捜査の実態
法務研修院のシン・ソンシク研究委員(58、司法研修院27期)が2023年12月11日、ソウル孔徳洞のハンギョレ新聞社でインタビューに応じている=キム・ジンス先任記者//ハンギョレ新聞社

 陸軍内の私的組織「ハナ会」が全斗煥(チョン・ドゥファン)氏を先頭にして軍事反乱を起こした過程を描いた映画「ソウルの春」。封切り後、「クーデター」という素材にとどまらず、現実を思い浮かばせる映画だったという評価が相次いだ。「かなり共感できる部分が多くありました。映画を見ると『ハナ会』が出てくるでしょう。検察には『師団』がある。この映画は単に12・12(クーデター)事件だけを扱っているというより、もっと奥深い意味があるように思えました」

 2023年12月6日に辞表を提出して検察を去った法務研修院のシン・ソンシク研究委員(58、司法研修院27期)は、このように共感を示した。同氏は辞表を提出した際にこう言った。「検察は私物化することはできないし、私物化してもならない」

「特捜部」の検事が「○○師団」になるまで

 2001年に蔚山(ウルサン)地検で検事生活を開始したシン・ソンシク委員は、昌原(チャンウォン)地検特捜部長、ソウル中央地検第3次長などを経て、2020年8月に検事長格に昇進し、最高検察庁反腐敗強力部長に赴任。その後、水原(スウォン)地検長を務め、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足後に左遷され、光州(クァンジュ)高等検察庁の次長検事を経て、法務研修院の研究委員となった。同氏は韓国放送(KBS)に虚偽情報を提供した疑いで裁判中だ(下記の『韓国放送虚偽情報提供疑惑事件』参照)。

 法務部は、現行の国家公務員法による「刑事事件で起訴された公務員の退職を認めてはならない」という規定に則り、同氏の辞表を受理していない。2023年12月11日、同氏はソウル孔徳洞(コンドクトン)のハンギョレ新聞社でインタビューに応じた。23年間の在職中に感じた検察の誤った捜査慣行などについて話を聞いた。

 シン委員には、検察内に特定の「師団」が存在するとされる問題から尋ねた。同氏はまず「特捜部」を取り上げて話しはじめた。「政治的事件や社会の注目を集める事件を任されると、良い補職や昇進が保障されるんですよ。だから多くの検事が特捜部に行くことを熱望しているんです」。そうして必死になって入った特捜部は「師団」の始まりとなる。

 「特捜部で働いてみると仕事のできる連中がいます。一緒に働いた時に仕事もできるし頑張る人がいれば連れて行って使うわけです。『師団』と呼ばれるのは、このような駆け引きがより激しいところです」

 シン委員は、検察内の代表的な「特捜通」であるハン・ドンフン法務部長官は最初から他の人とは違ったと記憶している。「最高検察庁中央捜査部(中捜部)に入るためには、少なくとも検事になって5~6年目にならないといけないのですが、(ハン長官は)2年目の時に派遣のかたちですぐに入ったはずです。機会が与えられず、能力も発揮できずに消えていった人も多いんです。最初に機会が与えられたということそのものが、非常に大きな恩恵です」

 シン委員自身もメディアから「チュ・ミエ師団」とみられている。2020年12月にチュ・ミエ法務部長官が(当時の尹錫悦)検察総長の懲戒を提請した際に、懲戒委員会に現職の検事としては唯一委員として参加したのが契機となった。当時のイ・ヨング法務部次官と2人の外部委員の3人がいずれも停職2カ月を議決した時、シン委員は棄権票を投じた。この時シン委員は最高検察庁反腐敗部長で、尹錫悦検察総長(当時)の参謀だった。同氏は、自身が「チュ・ミエ師団」とみなされることと、俗に「尹錫悦師団」と呼ばれる人々はまったく異なると強調した。

 「あの方(チュ・ミエ)の在職中に検事長になりました(その年の夏、ソウル中央地検第3次長だったシン委員は検事長に昇進)。そして、就任した際に初めてお会いしました。連絡先も知らないし、一緒に食事をしたことも一度もありません。すべての検事にとって、検事長に昇進した時の長官が師団長なんですか? そんなことは話になりません。(少なくとも)個人的な親交や何かがなければならないのに、あいさつしたのも一度だけです」

(2に続く)

<韓国放送虚偽情報提供疑惑事件>

 韓国放送(KBS)は2020年7月18日、ハン・ドンフン検事長(現法務部長官)とイ・ドンジェ元チャンネルA記者が同年2月13日に釜山(プサン)高等検察庁で交わした会話を確認したと報じた。その会話で、イ元記者は盧武鉉(ノ・ムヒョン)財団のユ・シミン元理事長についての取材の必要性に言及し、ハン長官は助力を申し出たうえで励ました、という趣旨だった。KBSは翌日、誤報だったとして訂正し、謝罪した。

 検察は2023年1月、シン・ソンシク研究委員を名誉毀損容疑で起訴した。「チャンネルAのイ・ドンジェ記者による取材倫理違反」事件を取材していたKBSの記者たちに虚偽情報を複数回にわたって提供した、という容疑だ。シン委員は起訴時に、「事実関係や法理的に到底納得できない」とし、「ハン元検事長が検察権を私的に乱用したのではないかと非常に疑われる」との立場を表明した。しかし、KBSの謝罪と起訴に至る過程ですでに、シン委員は存在しない事実を作り出しハン長官を売り渡した人物というレッテルを貼られた。

 シン委員はハンギョレ21とのインタビューで、自身にかけられている容疑を強く否定した。同氏は2月13日の(釜山高検での)録音記録について「よく知らないし、見てもいない」と述べた。ただし「チャンネルAの真相報告書の内容を見ると、ハン・ドンフン検事長が積極的に取材を促したとの内容があり、それが公開された」と述べた。別の会話に言及したものであるにもかかわらず、KBSによって釜山録音記録にある話だと強調して報道され、検察もシン委員が釜山録音記録にその内容があるかのように語ったと判断し、起訴したということだ。また、KBS記者に対する別の発言についても「個人的な立場や法理を説明したもの」だと説明した。

リュ・ソグ、キム・ヤンジン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1120678.html韓国語原文入力:2023-12-17 12:00
訳D.K

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