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[コラム]韓国で選挙のたびに登場する「女も軍隊に行け」論

登録:2024-02-06 23:37 修正:2024-02-11 07:57
//ハンギョレ新聞社

 韓国社会における軍への服務をめぐる論議は、1999年の憲法裁判所による軍加算点制の違憲判決で本格化した。憲法裁は、除隊軍人が公務員または公企業の試験を受ける際、その除隊軍人に5%以内の加算点を付与するとした「除隊軍人支援に関する法律(除隊軍人法)」8条1、3項と施行令が女性と障害者の平等権、公務担任権(公職で働く権利)を侵害していると判断した。憲法裁は「女性のごく一部だけが除隊軍人である一方、男性のほとんどは除隊軍人に当たるので、軍加算点制度は実質的な性差別」だと判断するとともに、「身体が丈夫な男性とそうでない男性を差別する」と述べた。

 軍加算点制の廃止は兵役法にも影響を及ぼした。「男性は兵役義務を遂行し、女性は志願した場合にのみ軍人として服務」するという兵役法の条項は、2011年、2014年、2020年、2023年の4回にわたり違憲性が問われた。憲法裁はその度に合憲決定を下した。

 軍への服務の有無がジェンダー対立の要因として浮上したことで、「女性の軍服務」は選挙での定番公約となった。20~30代の男性たちの相対的剥奪感を刺激して票を得ようという計算だ。2021年、「国民の力」の大統領候補を選ぶ党内予備選挙で尹錫悦(ユン・ソクヨル)、ユ・スンミンの両候補(当時)は先を争って、軍服務者に対して民間住宅購入申し込み時に5点の加算点を付与するとする公約を打ち出した。「共に民主党」のパク・ヨンジン議員は男女平等服務制を主張しており、国民の力のキム・ギヒョン前代表は昨年1月、女性を民防衛訓練の対象に含めることを内容とする民防衛法改正案を国会に提出している。

 女性の軍服務公約は、今年の総選挙を前にまたしても頭をもたげている。リュ・ホジョン、クム・テソプ両前議員が立ち上げた政党「新しい選択」は、女性の兵役と男性の育児休職の全面化を通じて男女対立を解消すると主張している。イ・ジュンソク代表の立ち上げた「改革新党」は、警察官や消防士などになることを希望する女性には2030年から軍への服務を義務付ける「女性新規公務員兵役義務化」を公約している。

 兵役制度改編論議は国家安保の要だ。少子化時代の兵力補充策と兵力の適正規模を総合的に考慮しなければならない。特に女性の軍服務の義務化は、男女平等な軍の組織文化の形成、服務環境の改善などの事前準備はもちろん、社会的合意形成に向けた公論化の過程が先行しなければならない。このような「ビルドアップ」の過程を飛び越えて、選挙の度に「女も軍隊に行け」という主張を繰り返すのは、差別と対立の助長によって利益を得ようとしているのではないか。それ以外の意味を見出すのは難しい。

チェ・ヘジョン論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1127170.html韓国語原文入力:2024-02-04 14:57
訳D.K

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