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[社説]除隊になったトランスジェンダーの韓国兵士の死、差別と嫌悪の「社会的他殺」

登録:2021-03-05 02:24 修正:2021-03-05 10:31
「軍務を続けたくて性別適合手術を受けたんです。手術後にうつ病がなくなるなど、すべてが正常になったんです」。ピョン・ヒスさんが昨年3月、ソウル麻浦区の京義線森の道公園での本紙とのインタビューで、明るい表情を浮かべている=資料写真//ハンギョレ新聞社

 陸軍服務中に性別適合手術を受け、その後、強制的に除隊させられたピョン・ヒス元下士(下士は軍の階級)が3日に死去した。自殺とみられる。悲痛な声が社会のあちこちで鳴り響いている。ピョン元下士の死が、昨年1月の強制除隊後に直面したひどい苦しみを想起させるためだろう。

 韓国社会の一部からは、ピョン下士に対して、口にするのもはばかられる差別と嫌悪の言行が噴き出した。性的マイノリティーのことを「ありのままの存在とは認めない」という彼らの歪んだ認識が、ピョン下士には越えることのできない巨大な壁と感じられたであろうことは、容易に想像できる。

 強制除隊後に軍が示した態度にも、繰り返し絶望せざるを得なかっただろう。陸軍は「ピョン下士退役審査委員会の開催を延期せよ」(昨年1月)、「ピョン下士の強制退役を取り消せ」(昨年12月)とした国家人権委員会の勧告をすべて無視し、行政訴訟の結果に従うと主張するのみだった。そのような軍が、ピョン下士の死の直後に「民間人死亡のニュースについて、特に軍の立場を表明することはない」と述べたのも驚くことではない。必要な時は「血を分けた戦友」で、必要なければ民間人なのか。

 世論が悪化したことから、国防部は4日、「惜しまれる死に哀悼の意を表する」と述べたが、その一方で「現在、性別適合手術を受けた者の軍務に関する制度の改善について、具体的な議論はない」と述べている。国防部は手をこまねいてばかりいないで、トランスジェンダーの人たちが軍務につく米国と欧州の事例を検討して、軍の人事法関連制度を早急に改善すべきだ。

 済州クィア文化祭共同組織委員長のキム・ギホンさんも先月24日に死去した。ちょうどその頃、ソウル市長補欠選挙候補から、クィア・フェスティバルをめぐって「性的マイノリティーを見ない権利」といった差別発言が起こったりもした。差別と嫌悪を防ぐという責務のある政界の人士が性的マイノリティー嫌悪に便乗した責任は、この上なく重い。

 二人の犠牲を無駄にせぬためには、韓国社会を「誰もがありのままに認められる社会」としなければならない。政府と国会は直ちに差別禁止法の制定に取り組むべきだ。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
http://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/985499.html韓国語原文入力:2021-03-04 19:49
訳D.K

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