本文に移動

韓国で女性の軍服務論が浮上…「公論化が必要」「男性票獲得のため」など意見分かれる

登録:2021-04-20 04:55 修正:2021-04-20 10:51
「安全保障及び軍事的考慮のないジェンダー対立化を警戒すべき」
海兵隊初の女性ヘリパイロット、チョ・サンア大尉が上陸機動ヘリ「マリンオン」の前でポーズを取っている=海兵隊提供//ハンギョレ新聞社

 来年の大統領選挙への挑戦を宣言した共に民主党のパク・ヨンジン議員が、募兵制への転換や男女平等服務制の導入を内容とする主張を連日展開している。

 パク議員は19日、CBSラジオ「キム・ヒョンジョンのニュースショー」のインタビューで、「大韓民国軍隊の戦闘兵科、あるいは前方部隊の女性幹部が指揮官を務めるケースがすでにある。女性だからといって(軍服務が)不可能だとは思わない」と述べた。パク議員は「40日から100日程度の軍服務で、男女とも十分予備軍としての役割を果たせる。現代化された武器体系を備えた精鋭軍15万、20万程度を持ち、有事の際には2000万人もの人が軍人となる、全国民が共に国防の義務を積極的に負う新たな兵役制度だ」と説明した。

 男女平等服務制がジェンダー間の対立を煽りかねないという指摘に対し、パク議員は「論争を恐れて提案しないこと自体が無責任だ」とし、主務省庁の国防部が募兵制への転換を全く準備していないと批判した。

 女性徴兵制と募兵制を折衷したパク議員の提案をめぐり、政界内外では「これから議論を始めるべきだ」という肯定的な反応や「男性票の獲得を狙ったものではないか」という批判など、様々な意見が出されている。女性の軍服務問題を安全保障や軍事面で綿密に考慮することなく、ジェンダー間の対立の観点で消費することを警戒すべきという声もあがっている。

女性界の一部でも「男女平等のための導入が必要」

 女性徴兵制をはじめ、女性の軍服務問題が本格的に議論され始めたのは、憲法裁判所が1999年、軍加算点制に対して違憲判決を下してからだ。それを受け、同年12月、「大韓民国国民の男性は兵役義務を誠実に遂行しなければならない。女性は志願すれば服務できる」とした兵役法第3条1項が平等権を侵害するという憲法訴願が初めて提起された。以降、同様の憲法訴願が数回あったが、憲法裁は合憲または却下決定を下した。

 民主党のクォン・インスク議員は、2008年に書いた論文(「徴兵制の女性参加:イスラエルとスウェーデンの事例研究を中心に」)で、「軍加算点制度の廃止後、兵役義務者への補償問題が性別論争に発展し、女性徴兵制は男性の不満を表出するはけ口となった」と主張した。

 しかし、女性の軍服務問題をめぐる議論は、単なる「男性が服務するから女性も服務しろ」という男性の不満の表出にとどまったわけではない。一部のフェミニズム研究者と活動家たちもまた、「男女平等のため、女性の軍服務問題を真剣に論議すべきだ」と主張してきた。「フェミニズム・ジャーナルIf」は2003年、女性徴兵制問題を扱った特集記事で、「女性に対する禁断の壁が存在する男性最後の砦が軍隊」だとし、兵役の義務を男女が共に果たすべきという主張を掲載した。

 クォン議員は自身の論文で、女性徴兵制を施行しているイスラエルとスウェーデンの事例を挙げ、「徴兵制を採択するかどうかにかかわらず、軍における女性の数の増加と役割の拡大は当然の傾向であるだけでなく、正しい政策の方向として認められている」と記した。ソウル大学法科大学院のヤン・ヒョナ教授(ジェンダー法)は、本紙の電話インタビューで、「現在の軍徴兵制は、男性が逆差別を主張する根拠になっている一方、女性に与えられた特恵と見るのも難しく、双方に不合理な側面があるため、再設計のための議論が必要だ」と主張した。

共に民主党のパク・ヨンジン議員=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

「軍事安全保障戦略を欠いた女性の軍服務議論は本末転倒」

 パク議員の提案を批判する側は、安全保障戦略を欠いた募兵制と女性の軍服務に関する議論は本末転倒だと指摘する。

 軍人権センターのキム・ヒョンナム事務局長は「兵役制度は安全保障能力を備えるのが第1の目標だ。パク・ヨンジン議員の提案を見ると、部隊統廃合や再配置などの大規模兵力需給政策の変化が伴う募兵制が、安保戦略上なぜ必要なのかに対する議論が抜けている。募兵制に関する議論がたびたび現れては蜃気楼のように消えていくのもそのためだ」と述べた。キム事務局長は男女平等服務制についても「募兵制を実施すると同時に、全国民がすべて軍事訓練を受けなければならない安全保障及び軍事的必要性についての説明がない。安全保障政策を単なるジェンダーイシューに置き換えると、実効性のない政策になるだけでなく、不要な論争で対立が深まるだけだ」と述べた。

 女性徴兵制の議論を始めるべきだと主張する研究者たちも、ノルウェーやスウェーデンなど、女性徴兵制を実施中の北欧諸国の事例を韓国の現実にそのまま当てはめることは難しいと見ている。社会的に性平等のレベルが実現した水準と、軍内の人権および処遇問題においてこれらの国と韓国との格差が明らかであるからだ。

 徳成女子大学のパク・ジンス教授(政治外交学科)は2018年に発表した論文「女性徴兵制の導入をめぐる社会的対立と女性の参画の拡大に向けた国防改革」で、ノルウェーとスウェーデンは2000年代から2010年代まで国防長官の半分以上が女性であるほど軍内の女性の力が強い点を言及している。軍隊服務環境と処遇が良く、男女義務服務制度の施行後、ノルウェー軍に服務した女性の90%が満足したというアンケート調査の結果もある。「軍隊は誰もが羨望する場所であるからこそ、服務の機会が女性に与えられるのが男女平等を高めるものとして受け止められている」というわけだ。

20代男性票の獲得を狙った与党の戦略か

 最近、補欠・再選挙で20代男性の支持を得られなかった党内状況とパク議員の提案を重ねて見る人もいる。民主党のチョン・ヨンギ議員は、22年前に違憲判決が下された軍加算点の再導入まで主張し、ジェンダー間の対立を煽っているという党内外の批判を受けた。

 長きにわたり軍における女性の参加問題を研究してきたキム・エリ平和フェミニズム研究所所長は「女性の軍服務を公論化する必要性はありうる。しかし、この主張が単に20代男性の票を獲得するための手段として、またジェンダー間の対立を利用する手段として使われてきたことに問題がある。女性の軍服務問題は、国防政策や人口問題、国家の安全保障など総合的に関係しているため、票の獲得を狙った公約として軽々しく消費されてはならない」と述べた。

イム・ジェウ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/women/991684.html?_fr=st1韓国語原文入力:2021-04-2002:43
訳H.J

関連記事