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[コラム]韓国でも海外派遣はもはやエリートコースではない

登録:2024-01-26 01:19 修正:2024-01-26 10:51
シン・ヒョンチョル|統一外交チーム記者
クリップアートコリア//ハンギョレ新聞社

 「本当に人事シーズンが来る度に大騒ぎです。自分の望まない国に行かされるなら辞めるという人もいますからね。外国生活そのものに対する拒否感もかつてよりはるかに強くなっていますし」

 ある外交部の関係者は、先日の人事関連の業務が大変だったと言いながら、このように吐露した。子どもの学業、夫婦関係、家族の持病などの様々な理由をつけて、自分の望まない国に送らないでほしいと頼んでくる人が大勢いたという。しかし、すべての人が満足する人事などありえない。結局、誰かが不満を抱かざるを得ない人事を実行しなければならず、その度に人事担当者は心配したという。「本当に辞めたらどうしよう」

 職場生活で半分近くを外国で過ごす人もいる外交官に限った話ではない。社会全体で海外勤務の人気はかつてより大きく落ちた。かつては羨望の的だった欧州と米国も、距離が遠く、物価が高いという理由でそっぽを向かれているという。マスコミ界でも羨望の対象だった特派員の人気は昔ほどではないという。

 1990~2000年代までは、海外派遣勤務は会社で能力が認められているという証票のようなものだった。出世と昇進の近道である「エリートコース」には、組織のエースたちが先を争って志願した。そのうえ、外国生活で享受できる恩恵も多かった。良質の先進国のインフラの中で生活しながら子どもが育てられるため家族の満足度が高く、現地在留手当てなどが支給されるため報酬も多かった。外国でインターナショナルスクールに通った子どもたちは英語などの外国語がたん能なため、在外国民特別選考や英語特技者選考などが利用でき、大学への進学も容易だった。

 ところが、大韓民国が公式に先進国入りしたことで、いつの間にか状況は変化していた。海外勤務はもはや恩恵ではなく奉仕となった。本部を離れて海外で勤務するというのは、むしろ昇進競争から弾き出されてしまったことを意味する。入試制度の変化のせいで、子どもの留学経験も韓国の大学入学にはあまり役立たない。

 海外に派遣されれば配偶者が休職しなければならないということを訴える人も多い。統計庁の「2022年下半期地域別雇用調査」によれば、韓国国内で働いている家庭の共稼ぎ率は46.1%。女性の社会生活への参加は逆らいがたい流れとなっているうえ、並の片働きでは生活費や教育費がまかないきれないという人も多い。配偶者がキャリア管理の重要な大企業の社員または専門職であった場合は、海外派遣勤務はさらに悩まざるを得ない。結局、配偶者のキャリア断絶を甘んじて受け入れたり、本人が単身赴任生活を選んだりするのではなく、むしろ海外勤務を固辞してしまうのだ。

 高齢化問題と同様、海外勤務に対する態度も、日本は一世代前に同じような道を歩んだ。日本のゆとり世代(1987~2003年生まれ)は、日本での生活条件や文化環境の方が外国よりましなため、外国で経験を積むことを拒否するケースが多いという。このような流れが長引いたことで、最近は外国で働く「海外通」が非常に不足しているとの声があちこちからあがっているという。

 韓国も他人事とたかをくくってばかりはいられないだろう。小規模な開放国家である韓国にあって、開放とコミュニケーションは必要不可欠だ。キャリア断絶問題の解消のために膝を突き合わせるか、国外で活躍する条件を整えるかしなければならない。海外勤務は犠牲ではなくキャリア開発だと構成員たちに考えてもらう方法を、膝を突き合わせて探っていくべきだ。

//ハンギョレ新聞社

シン・ヒョンチョル|統一外交チーム記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1125961.html韓国語原文入力:2024-01-25 18:51
訳D.K

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