大統領室のキム・スンヒ儀典秘書官の子どもの校内暴力事件が、軽い処罰で処理されたという疑惑が持ち上がった。野党「共に民主党」のキム・ヨンホ議員は20日、京畿道教育庁などに対する国政監査で、「3カ月前にキム・スンヒ秘書官の小学校3年生の娘が、放課後に2年生の児童をトイレに連れて行き、リコーダーと拳で頭と顔を殴り、全治9週間の傷を負わせた」と明らかにした。校内暴力審議は2カ月後にようやく開かれ、被害児童の両親は加害児童の強制転校を要求したが、クラスを変更する処分が下されただけだという。この日、疑惑が持ち上がると、キム秘書官はただちに辞表を提出し、大統領室はその場で受理した。事案の深刻さに対してこの程度の軽い処分で終わった理由は、徹底的に明らかにしなければならない。急いで「トカゲのしっぽ切り」の手段で覆い隠す事案ではない。
キム秘書官は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領夫人のキム・ゴンヒ女史の大学院の同窓で、側近として知られた人物であり、資格について議論となった要人だ。にもかかわらず4月には儀典秘書官室の先任行政官から秘書官に昇進し、注目を集めた。キム秘書官の大統領室での権力の背景が校内暴力事件の処理過程に作用したとすれば、典型的な権力型不正となるわけだ。校長が緊急措置として加害児童の出席停止を下した日、キム秘書官の妻はSNSのプロフィール写真に、キム秘書官が尹大統領と一緒にいる写真を投稿したという。こうした行為が、その後の校内暴力審議に影響を及ぼすことになったのではないかという疑問が起こるのは当然だ。全治9週間の傷を負わせたにもかかわらず、キム秘書官夫人は「愛のムチ」と表現したという。並みならぬ威力の見せつけだ。
大統領室はこの日、キム秘書官に対する公職綱紀調査に着手し、21日に始まる中東訪問日程からも外した。しかし、この懸案を事前に認知できていなかったと釈明した。事前に知っていながらも黙認したとすれば論外だが、こうした重大な事案を野党議員が国政監査で提起するまで知らなかったということも、公職綱紀管理の観点で大きな弱点を示したものだ。大統領室は疑惑が提起された当日、辞表受理まですみやかに行われたとして、「厳重に対応しようとした姿勢」だと述べた。急いで辞任させて疑惑を糾明されないよう事案を覆い隠すのであれば、それは「厳重」ではなく「隠蔽」だ。大統領室は、「あの子が怖い」と言った被害を受けた子どもとその両親の心情を、1万分の1でも理解できているのだろうか。
現政権発足後に浮上したチョン・スンシン前国家捜査本部長やイ・ドングァン放送通信委員長などの高位の公職者の子どもの校内暴力は、過去の経歴についての身辺調査のレベルだったが、今回の事件は「権力型」であり、その深刻性は違う。明確に真相を明らかにして、必ず相応の責任を問わなければならない。