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[コラム]悪質クレーマーの保護者の身元さらし…なぜ「私的制裁」にはまるのか=韓国

登録:2023-09-18 07:49 修正:2023-09-18 09:41
//ハンギョレ新聞社

 高麗の5代目の王である景宗(キョンジョン)は、即位初年の975年に「復讐法」を制定した。先代の王である光宗(クァンジョン)の「恐怖政治」下で大々的に粛清された豪族勢力が恨みを晴らしたいと請い、景宗はそれを受け入れた。復讐には制限がないため、道で人を殺しても「恨みがある」なら許された。復讐は復讐を生み、あげくの果てに景宗の叔父たちまでもが復讐を口実として豪族に殺害される事件が起きた。1年あまりで景宗は復讐法を廃止した。

 復讐法のように公的体系を通さず個人が私的に断罪したり処罰したりすることを「私的制裁」という。近代国家では、個人的復讐に代わって国が法律によって罪を犯した者を処罰する。にもかかわらず、私的制裁は根絶されたわけではない。1996年にバス運転手のパク・キソが白凡金九(ペクポム・キム・グ)先生の暗殺犯アン・ドゥヒに、いわゆる「正義の棒」を振り下ろして死に至らしめたことは代表的な私的制裁の例だ。大衆文化の人気素材として用いられることもある。校内暴力の被害者の復讐を描いたドラマ「ザ・グローリー」や、被害者の復讐を代行するという内容の「模範タクシー」などは、すべて公権力に頼らず個人が犯罪者を直に懲らしめる内容で、大衆に人気を博した。

 現実においてよく見られるのは「身元さらし」だ。あるユーチューバーは、通称「釜山回し蹴り事件」の被疑者の顔や名前などを公開し、5日にはロールスロイスに乗って歩道に突進し20代の女性を脳死に至らしめた「狎鴎亭(アプクジョン)ロールスロイス事件」の被疑者の身元も公開した。性犯罪者の身元を公開するユーチューバーもいる。大衆がこのような私的制裁に夢中になるのは、公権力に対する不信が強いことを傍証すると解釈される。

 先日亡くなった大田(テジョン)の小学校教師に悪質なクレームを入れていたとされた保護者たちの身元を暴露するSNSアカウントも作られている。通報によりアカウントが遮断されても、「シーズン2」を経て現在は「シーズン3」アカウントが作られ、暴露が続けられている。加害者とされた人々の顔、実名、職業、職場などがさらされ、その結果2つの事業所が廃業した。アカウントの紹介文には「法には穴が開いている。私がその穴を埋める」と記されている。公的システムに対する不満を表出しているわけだが、正義感を掲げた扇情だとの指摘は避けられない。名誉毀損による処罰はもちろん、罪のない被害者を量産する危険性もある。

チェ・ヘジョン論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1108857.html韓国語原文入力:2023-09-17 14:29
訳D.K

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