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[寄稿]日本の通貨政策、はたして変化するだろうか

登録:2023-02-14 05:39 修正:2023-02-14 08:57
イ・ガングク|立命館大学経済学部教授
昨年12月20日(現地時間)黒田東彦日銀総裁が金融政策決定会合に関する記者会見で質問を受けている=東京/共同・ロイター・聯合ニュース

 政府の借金が非常に多いにもかかわらず、危機に陥ることなく、お金をいくら出しても物価が上昇しないなど、日本は様々な面で理解しがたい。いまや全世界が日本の不思議な通貨政策に注目している。他の先進国とは違い、日本だけが緊縮ではなく拡張的な通貨政策を継続しているためだ。

 現在の日銀の通貨政策は、マイナス金利とイールドカーブ・コントロール(YCC)に代表される。2013年、日銀は国債買入れを通じてマネタリーベースを増加させ、不動産や株式市場に間接投資する量的・質的緩和の通貨政策を実施した。マネタリーベースを2年以内に2倍に増加させ、インフレ率2%を達成することが目標だった。アベノミクスが放った最初の矢だった。

 アベノミクスは、1990年代以降長きにわたり長期不況とデフレに苦しめられた日本経済を再生するための積極的なマクロ経済浮揚策だった。1990年代初めの途方もないバブル崩壊による貸借対照表の不況とデフレによって縮小均衡に陥った日本経済を、金融緩和でふたたび膨張させるという試みだった。

 2016年、日銀はさらに破格の通貨政策を導入した。1月に日銀は、金融機関が中央銀行に預けている過剰な準備預金にマイナス金利を付けた。9月には世界で唯一、長期と短期の金利の両方を中央銀行が統制するYCCを導入した。日銀は、国債の買入れと売却を通じて10年物国債金利を0%に維持することにしたが、これは長期金利を直接統制して投資を促進し、インフレを誘発するための非伝統的な通貨政策だった。だが、そうした努力にもかかわらず経済回復は遅れ、2%のインフレは現れなかった。

 安倍政権は2020年に幕を下ろしたが、今でも日銀の破格の通貨政策は続いている。特にコロナ禍から回復する過程でインフレ率が急騰すると、米国の連邦準備制度理事会(FRB)など他の先進国の中央銀行は金利を引き上げたが、日銀だけは不動の姿勢だ。日本のインフレ率が他の国家に比べて低いこともあるが、何より日銀が緊縮を始めてインフレと景気浮揚に失敗することのほうがより大きな問題だと判断しているためだ。

 だが、米国との金利格差が広がると、日本円の通貨切下げ圧力が非常に強くなった。実際、昨年の日本円の為替レートは円安に向かい、10月には1ドル150円まで下がった。日銀は拡張的な通貨政策の固守と日本円の価値維持の間でジレンマに陥った。昨年下半期以降、ヘッジファンドは日銀が低金利をこれ以上固守できないと予想し、日本国債の金利上昇に賭けている。日銀はついに昨年12月、10年物国債金利の変動幅を0.5%に拡大する予想外の決定を下した。黒田総裁は通貨政策の変化ではないと線引きしたが、実質的には金利引き上げ効果を生み出した。この決定の直後、10年物国債金利は0.5%に急上昇した。

 その後も日本国債の売りが続き、日銀は金利を維持するため、1月の1カ月間に史上最大となる23.7兆円分もの国債を買い入れた。一方、先月にはこれまでの金利変動幅を維持すると同時に、日本の金融機関に国債を担保にした貸出しを拡大し、国債買入れを誘導している。だが、金利というお金の価格を決める金融市場の機能が麻痺しているという批判と、すでに国債の半分を保有する日銀の国債買入れの持続可能性に対する疑問の声が強い。

 黒田総裁が退任する4月以降、日銀ははたして通貨政策の方向を変えるだろうか。岸田首相は次の総裁に経済学者である植田和男氏を任命する計画だが、植田氏はゼロ金利と量的緩和を支持した人物だ。今なおインフレと景気回復が定着していないことを考慮すれば、様々な問題にもかかわらず、現在の緩和的通貨政策は当面は続き、非常にゆっくりと変化するものとみられる。実際、円安で昨年12月に消費者物価の上昇率は4%まで高まったが、日銀は変わることなく、これを一時的な現象と把握している。

 むしろ通貨政策の転換は、賃金引上げからきっかけを作らなければならないだろう。長きにわたり停滞した賃金が上がることで、インフレを持続できるためだ。黒田総裁も、賃金が上がりインフレが定着した後に通貨政策の出口戦略が可能だと述べたことがある。最近では、高まる物価を背景に賃金引上げに関する社会的合意が広がっているため注目される。結局のところ、日本の通貨政策の未来は、物価と賃金の上昇の好循環が現れるかどうかにかかっている。

//ハンギョレ新聞社

イ・ガングク|立命館大学経済学部教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1079534.html韓国語原文入力:2023-02-14 02:40
訳M.S

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